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上を向くと、天井近くの細長い穴からサミュエルがこちらを覗き込んでいた。暗くて互いの顔がよく見えないのは好都合だとシエルは思った。
「ちょっとシスターに頼まれてあんたの所に行ったら、あんたを探している男たちがいたんだ。面白そうだから尾行してやった」
「なら、ここは家からそんなに離れていないのね?てか、見張りとかはいないの?大丈夫」
「大丈夫に決まってんだろ!そんなヘマはしねぇよ。交代で暫くこの辺には見張りが来ないってちゃんと確認したんだぜ!場所は、町外れだと思う。暗くてよく分かんねぇ。それより、助けてやるよ」
「助けるってどうやって?サミュエル、私のことはいいからっ」
「はっ、誰があんたの為って言ったんだ!俺はあんたを助けて金を貰って大人の服を買うんだ。だから、絶対助けてやるよ。牢屋の入り口は大きな屋敷の庭にあるみたいで、見張りがいて入れない。けど、この穴からなら外に出れるはずだ」
「サミュエル、無理よ。高くてそこまで登れない。ロープもないし、それに私寒くて凍えそうなの」
「え、寒い?こんなに暑いのにか??・・・・・・おい、この火起こしの魔道具しょーがないから貸してやるよ!」
ひょいっと投げられた魔道具をキャッチする。見ると、まだ1度も使っていない代物のようだった。
サミュエルがくれたのは、火起こし専用の子供の掌にも収まる小さな魔道具だ。側面に点灯している数だけ使用可能で火をつけることが出来る。
「ありがとね、サミュエル!あと、申し訳ないけど、ナイフとかハンマーとか持ってたら貸してほしいんだけど」
「へへっナイフならあるぞ。オレも見習いになるからナイフくらい持ってないと格好がつかないからな!でもなぁ、これ高かったんだぜ。この高さから落としたら傷が、あっ!糸に括りつけてゆっくり下ろす!から、受け取ってくれ」
サミュエルらしき影が消え、ぽっかり空いた穴から無数の光で煌めいた夜空が見えた。星が幾ばくか遠くに感じた。きっと、シエルが死んでも、今見えている星々のように光り輝くことはないだろう。誰にも見つからない塵のような光しか灯せない。そう思うと、悪あがきする意味が分からなくなった。
「シエル、出来たぞ。今からおろすから、ちょっと下がっててくれ」
「ううん、もう、いいの。サミュエル、ありがとう。見つからないうちに帰ってちょうだい」
「はぁ?どーしたんだよ、いつもの喧しいくらいの元気は」
「あなたには分からないわ」
「なんだよ、それは、俺がガキだからってことか!?何のために来たと思ってんだよ!俺、あんたが俺に勉強を教えてくれて嬉しかったんだ。だから、来たのに、なんで帰れなんて言うんだよ!ふざけんなよ、オレだってもう」
「ううん、違うのサミュエル!子供だからとかそういうんじゃなくて」
「じゃあ、なんだって言うんだ!!!」
「サミュエルッ!」
サミュエルの怒声が牢屋の壁中にまで響き渡った。シエルの鋭い一声に、大声を出していたことに気がついたらしく、息を飲むのが分かった。痛いような沈黙に一瞬包まれた後、
「やべぇ、交代の見張りがこっちに来る!しかも屋敷の方からも灯りがっ。気づかれたか」
「サミュエル、もう行って!私は大丈夫だから、ねぇ、聞いてるの?」
「うるせぇな。ナイフ下ろしたら行くよ。明日また来る!ーーーシスターがあんたを連れて行かないと怒るんだよ」
コツン。音がした方へ近寄ると手を延ばせば届く高さにナイフがぶら下がっていた。シエルは背伸びしてナイフを引っ張る。その瞬間、ぴんと張っていた糸がヘビのようにくねくねと緩んだ。
「ちょっとシスターに頼まれてあんたの所に行ったら、あんたを探している男たちがいたんだ。面白そうだから尾行してやった」
「なら、ここは家からそんなに離れていないのね?てか、見張りとかはいないの?大丈夫」
「大丈夫に決まってんだろ!そんなヘマはしねぇよ。交代で暫くこの辺には見張りが来ないってちゃんと確認したんだぜ!場所は、町外れだと思う。暗くてよく分かんねぇ。それより、助けてやるよ」
「助けるってどうやって?サミュエル、私のことはいいからっ」
「はっ、誰があんたの為って言ったんだ!俺はあんたを助けて金を貰って大人の服を買うんだ。だから、絶対助けてやるよ。牢屋の入り口は大きな屋敷の庭にあるみたいで、見張りがいて入れない。けど、この穴からなら外に出れるはずだ」
「サミュエル、無理よ。高くてそこまで登れない。ロープもないし、それに私寒くて凍えそうなの」
「え、寒い?こんなに暑いのにか??・・・・・・おい、この火起こしの魔道具しょーがないから貸してやるよ!」
ひょいっと投げられた魔道具をキャッチする。見ると、まだ1度も使っていない代物のようだった。
サミュエルがくれたのは、火起こし専用の子供の掌にも収まる小さな魔道具だ。側面に点灯している数だけ使用可能で火をつけることが出来る。
「ありがとね、サミュエル!あと、申し訳ないけど、ナイフとかハンマーとか持ってたら貸してほしいんだけど」
「へへっナイフならあるぞ。オレも見習いになるからナイフくらい持ってないと格好がつかないからな!でもなぁ、これ高かったんだぜ。この高さから落としたら傷が、あっ!糸に括りつけてゆっくり下ろす!から、受け取ってくれ」
サミュエルらしき影が消え、ぽっかり空いた穴から無数の光で煌めいた夜空が見えた。星が幾ばくか遠くに感じた。きっと、シエルが死んでも、今見えている星々のように光り輝くことはないだろう。誰にも見つからない塵のような光しか灯せない。そう思うと、悪あがきする意味が分からなくなった。
「シエル、出来たぞ。今からおろすから、ちょっと下がっててくれ」
「ううん、もう、いいの。サミュエル、ありがとう。見つからないうちに帰ってちょうだい」
「はぁ?どーしたんだよ、いつもの喧しいくらいの元気は」
「あなたには分からないわ」
「なんだよ、それは、俺がガキだからってことか!?何のために来たと思ってんだよ!俺、あんたが俺に勉強を教えてくれて嬉しかったんだ。だから、来たのに、なんで帰れなんて言うんだよ!ふざけんなよ、オレだってもう」
「ううん、違うのサミュエル!子供だからとかそういうんじゃなくて」
「じゃあ、なんだって言うんだ!!!」
「サミュエルッ!」
サミュエルの怒声が牢屋の壁中にまで響き渡った。シエルの鋭い一声に、大声を出していたことに気がついたらしく、息を飲むのが分かった。痛いような沈黙に一瞬包まれた後、
「やべぇ、交代の見張りがこっちに来る!しかも屋敷の方からも灯りがっ。気づかれたか」
「サミュエル、もう行って!私は大丈夫だから、ねぇ、聞いてるの?」
「うるせぇな。ナイフ下ろしたら行くよ。明日また来る!ーーーシスターがあんたを連れて行かないと怒るんだよ」
コツン。音がした方へ近寄ると手を延ばせば届く高さにナイフがぶら下がっていた。シエルは背伸びしてナイフを引っ張る。その瞬間、ぴんと張っていた糸がヘビのようにくねくねと緩んだ。
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