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Princess→Prince
Princess→Prince 2
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「ちょっと待ったぁっ!」
――バァンッ!
乱暴に扉が開かれて飛び込んできたのは可愛い女の子だった。
「いけません、姫様!」
焦ったような従者らしき人の声、成人の儀を迎えるまでは決して王子とは呼ばれない。
即ちそれが誰なのか自ずとわかる。
「そうだ、はしたないよ、ライリー。君はまだ女の子なんだから」
「あ、アレクシスお兄様……」
窘める声にはっとライリーが振り返る。攻略対象が一気に二人来た……わかっていたけど、いざ来ると心臓に悪い。悪すぎる。
まず部屋に踏み込んできた女の子、くるくるの金髪にくりくりの緑の瞳が特徴的な天使の如き第六王子(今は王女だけど)ライリー。
この子はまだ十七歳だから女の子のまま。エンディングではちゃんと男の子になるけど、この子のルートは百合気分を味わえる。キャッキャして可愛い感じの。
ヒロインちゃんとは面識があって、孤児院で定期的に行われるバザーにヒロインちゃんの手作りお菓子目当てによく来ていた。そして、好きと言われるのをヒロインちゃんはお菓子のことだと思っていたっていう鈍感さ。
「やあ、久しぶり。綺麗になったね、エリン」
呆然とする私の側にやってきて極自然に跪き、その手を取って甲に口づける金髪に青い目の正に王子という感じの男性は第一王子アレクシス。
彼だけは王位継承権第一位というのもあって、ずっと城で暮らして務めを果たしてきた。何度か孤児院に査察に来たことがあって、ヒロインちゃんとは顔見知り。とは言っても、女の子の時なんだけど。
その時からアレクシスは身分がどうとか関係なくヒロインちゃんをレディーとして扱っていた。きりりとして、騎士のようで、ヒロインちゃん憧れの人。
手に残る感触に頬が熱くなってく。もう頭が沸騰しそうで、果実水を飲むのが止まらない。じゃないと頭が熱で活動を停止する。熱暴走しちゃう。
「ライリー! 兄上!」
あと少しだったのに! と、アシュレイは悔しげ。
でも、邪魔者が入る前にヒロインちゃんを頷かせてしまおうというアシュレイの企みはゲーム内でも成功しない。
アシュレイが焦るのも無理はない。アレクシスもライリーも攻略対象。即ちアシュレイのライバル。
他にはクールな第二王子ミシェル、後に病んでしまう第三王子シャノン、傲慢で野心家の第四王子ジェシーもいたりする。第二王子に至っては表向きには死んだことになってて、他の全員のハッピーエンドを見ないと攻略できない隠しキャラだったりするけど。
「受け入れることを強要するのは約束に反すると思うが?」
「そうだそうだ!」
アレクシスの指摘にライリーが頷く。
「そもそも、エリンと結婚の約束をしたのは僕ですから」
成人したばかりのアシュレイに対してアレクシスはそれほど歳が離れているわけでもない。確か二十歳くらいの設定だったはず。
でも、第一王子としてずっと城で王子の仕事をしていたアレクシスとでは何だろう……滲み出る物が違う?
それでも、アシュレイは臆さず堂々と言ってのける。
「お前が成人するまで待ってやったことを感謝してほしいものだ」
些か尊大にアレクシスは言い放つ。アレクシスならヒロインちゃんを早い段階で城に呼び寄せることもできたらしい。
でも、権力を使って弟から取り上げるのではなく、ヒロインちゃんに選ばせるために成人を待っていたことになる。この国では結婚可能年齢も十八歳だから。
「それならボクの成人も待って欲しかったです……」
そう嘆くライリーの成人までは待ってくれなかったわけだけど。
王子となるための教育を受ける間、言葉遣いも男言葉に直していくことになり、ライリーはボクっ子になる。それでもレディーらしからぬ所作は注意されるんだから大変だ。
「私が待ってもアシュレイが待たないさ」
「だから、エリンとは十年以上前に結婚を誓い合った仲だとあれほど……」
ちらりと視線を向けられたアシュレイは苛立たしげに口を開く。
思い返せばアシュレイが結婚しようと言ったのは初めてアレクシスと出会った後の事だった。男装をして視察に現れ、レディーとして扱ってくれたアレクシスに心を奪われるのは当然だった。その日からおとぎ話の王子様はアレクシスに変わった。
「エリン、貴女はそれを本気にしていたのか?」
「い、いえ……」
アレクシスに問われて、緊張で声が上手に出せない。
幼少期から共に過ごしたアシュレイと違って、アレクシスは最初から王子様だった。失礼があっちゃいけない。
「だ、だって、女の子同士で、まさか王子様だとは知らず……」
たとえば前世の記憶を持ったまま産まれていたら話は違ったはず。
そうじゃなくても、もっと早くに前世の記憶が戻っていたら、私はどうしていただろう?
ゲームは確かに好きだった。でも、自分が恋愛するとなると話は別。だって、全てのルートを見ることはできないし、やり直しもきかない。
それに、選択肢を間違えれば兄弟で殺し合いが始まるような恐ろしいゲームなんだ、これは。
ゲームの知識とこれまでエリンとして生きてきた記憶を頼りにどうにか平和な未来を築かなければならなくなってしまった……はず。
「そう固くならずとも良い。誰も貴女を咎めたりしない」
そう言われても……超困る。
確かにアレクシスは最初からヒロインちゃんには寛容だった。でも、固くならずにはいられない。見詰められるだけで穴が開きそう。
私、ここで座ってていいの?
――バァンッ!
乱暴に扉が開かれて飛び込んできたのは可愛い女の子だった。
「いけません、姫様!」
焦ったような従者らしき人の声、成人の儀を迎えるまでは決して王子とは呼ばれない。
即ちそれが誰なのか自ずとわかる。
「そうだ、はしたないよ、ライリー。君はまだ女の子なんだから」
「あ、アレクシスお兄様……」
窘める声にはっとライリーが振り返る。攻略対象が一気に二人来た……わかっていたけど、いざ来ると心臓に悪い。悪すぎる。
まず部屋に踏み込んできた女の子、くるくるの金髪にくりくりの緑の瞳が特徴的な天使の如き第六王子(今は王女だけど)ライリー。
この子はまだ十七歳だから女の子のまま。エンディングではちゃんと男の子になるけど、この子のルートは百合気分を味わえる。キャッキャして可愛い感じの。
ヒロインちゃんとは面識があって、孤児院で定期的に行われるバザーにヒロインちゃんの手作りお菓子目当てによく来ていた。そして、好きと言われるのをヒロインちゃんはお菓子のことだと思っていたっていう鈍感さ。
「やあ、久しぶり。綺麗になったね、エリン」
呆然とする私の側にやってきて極自然に跪き、その手を取って甲に口づける金髪に青い目の正に王子という感じの男性は第一王子アレクシス。
彼だけは王位継承権第一位というのもあって、ずっと城で暮らして務めを果たしてきた。何度か孤児院に査察に来たことがあって、ヒロインちゃんとは顔見知り。とは言っても、女の子の時なんだけど。
その時からアレクシスは身分がどうとか関係なくヒロインちゃんをレディーとして扱っていた。きりりとして、騎士のようで、ヒロインちゃん憧れの人。
手に残る感触に頬が熱くなってく。もう頭が沸騰しそうで、果実水を飲むのが止まらない。じゃないと頭が熱で活動を停止する。熱暴走しちゃう。
「ライリー! 兄上!」
あと少しだったのに! と、アシュレイは悔しげ。
でも、邪魔者が入る前にヒロインちゃんを頷かせてしまおうというアシュレイの企みはゲーム内でも成功しない。
アシュレイが焦るのも無理はない。アレクシスもライリーも攻略対象。即ちアシュレイのライバル。
他にはクールな第二王子ミシェル、後に病んでしまう第三王子シャノン、傲慢で野心家の第四王子ジェシーもいたりする。第二王子に至っては表向きには死んだことになってて、他の全員のハッピーエンドを見ないと攻略できない隠しキャラだったりするけど。
「受け入れることを強要するのは約束に反すると思うが?」
「そうだそうだ!」
アレクシスの指摘にライリーが頷く。
「そもそも、エリンと結婚の約束をしたのは僕ですから」
成人したばかりのアシュレイに対してアレクシスはそれほど歳が離れているわけでもない。確か二十歳くらいの設定だったはず。
でも、第一王子としてずっと城で王子の仕事をしていたアレクシスとでは何だろう……滲み出る物が違う?
それでも、アシュレイは臆さず堂々と言ってのける。
「お前が成人するまで待ってやったことを感謝してほしいものだ」
些か尊大にアレクシスは言い放つ。アレクシスならヒロインちゃんを早い段階で城に呼び寄せることもできたらしい。
でも、権力を使って弟から取り上げるのではなく、ヒロインちゃんに選ばせるために成人を待っていたことになる。この国では結婚可能年齢も十八歳だから。
「それならボクの成人も待って欲しかったです……」
そう嘆くライリーの成人までは待ってくれなかったわけだけど。
王子となるための教育を受ける間、言葉遣いも男言葉に直していくことになり、ライリーはボクっ子になる。それでもレディーらしからぬ所作は注意されるんだから大変だ。
「私が待ってもアシュレイが待たないさ」
「だから、エリンとは十年以上前に結婚を誓い合った仲だとあれほど……」
ちらりと視線を向けられたアシュレイは苛立たしげに口を開く。
思い返せばアシュレイが結婚しようと言ったのは初めてアレクシスと出会った後の事だった。男装をして視察に現れ、レディーとして扱ってくれたアレクシスに心を奪われるのは当然だった。その日からおとぎ話の王子様はアレクシスに変わった。
「エリン、貴女はそれを本気にしていたのか?」
「い、いえ……」
アレクシスに問われて、緊張で声が上手に出せない。
幼少期から共に過ごしたアシュレイと違って、アレクシスは最初から王子様だった。失礼があっちゃいけない。
「だ、だって、女の子同士で、まさか王子様だとは知らず……」
たとえば前世の記憶を持ったまま産まれていたら話は違ったはず。
そうじゃなくても、もっと早くに前世の記憶が戻っていたら、私はどうしていただろう?
ゲームは確かに好きだった。でも、自分が恋愛するとなると話は別。だって、全てのルートを見ることはできないし、やり直しもきかない。
それに、選択肢を間違えれば兄弟で殺し合いが始まるような恐ろしいゲームなんだ、これは。
ゲームの知識とこれまでエリンとして生きてきた記憶を頼りにどうにか平和な未来を築かなければならなくなってしまった……はず。
「そう固くならずとも良い。誰も貴女を咎めたりしない」
そう言われても……超困る。
確かにアレクシスは最初からヒロインちゃんには寛容だった。でも、固くならずにはいられない。見詰められるだけで穴が開きそう。
私、ここで座ってていいの?
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