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遠ざけて近付いて
遠ざけて近付いて 4
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名残惜しい気持ちで大倫は小春の中から出て行く。反射なのだろう、小さく声を漏らした彼女は放心しているようだ。彼女にとって初めての行為を強要したのだから無理もない。
大切にしたかったはずだった。彼女だけは守りたいと思っていたのに、自分が一番傷つけてしまった。
避妊具こそ付けたが、何の隔たりもなく繋がって吐き出したかったと思っている自分に嫌悪して大倫は溜息を吐く。彼女を貫いた凶器はまたすぐにでもその凶悪さを取り戻すだろう。痛々しい姿にさえ抱く劣情を否定できない。
そんな自分の中の凶暴な獣を抑え込みながら大倫が彼女の身なりも整え終えた時、怯えた目と合った。
「ゃ……」
力の入らない身体で後退ろうとする姿があまりに憐れだ。頭から冷水をかけられたように、ようやく大倫は己の罪の重さを思い知らされた気がした。つい先ほどまで大倫の中にあった欲が一瞬にして消えていく。
彼女の泣き顔にか細い声になぜあれほど興奮したかわからない。赤く滲んでいた秘部に突き入れたいとは思えなかった。
「もうしねぇ」
まずは安心させようとしたつもりだった大倫だが、小春はビクリと大げさなほど身体を跳ねさせる。
「……落ち着いたら送ってく」
こんな状態の小春を放ってはおくことなど大倫にはできない。自分がしたことだが、罪滅ぼしというよりも何よりも小春が心配だったのだ。
それでもふるふると首を横に振る小春に大倫はどうしたものかと頭を掻く。弱った獲物を自分と同じ猛獣達が放っておくだろうか。優しい人間さえ狩人に変えてしまいそうな愛らしい少女だ。家まで送り届けなければ安心できるとは思えなかった。
「そんな状態で他の男に犯されたらどうすんだ」
何と言ったら良いのかわからないまま、口をついて出た言葉に再び小春が震える。身体を小さく丸めて自分を守ろうとしているかのようだ。その反応に配慮に欠けていたと気付いても大倫はどうすれば良いのかわからなかった。
「近付くなって言ったくせに……」
ぽつりと小春が吐き出した言葉は消え入りそうでありながら確かに大倫の耳に届いた。その声が震えてるのは恐怖か怒りか他の感情かは彼にはわからない。
小春を遠ざけようとした結果が現在なのだ。恨み言を言いたくなるのも尤もだと大倫は思う。
「……お前が俺に笑いかけてくる度、気がおかしくなりそうだった」
大倫が隠し通すつもりだった想いを吐露すれば、はっと息を飲む音がやけに大きく響いた気がした。
「そんな、嫌われてるって、思わなかった……ごめんなさい……ごめん、なさっ……!」
小春はやっと答えを与えられた気がした。言葉と共に涙が頬を伝う。不快な思いをさせていたとは考えもしなかった。泣いたところでより彼を嫌な気分にさせるのかもしれないが、止めることはできなかった。
「違う!」
泣きじゃくり始めた小春に慌てた大倫は思わず声を荒らげるが、それもまた彼女を怯えさせるものでしかなかった。
「……逆だ」
「ぎゃく……?」
「惚れた女が近くにいて平然としてられるかよ……! すげー突っかかってくるやついるし」
顔の熱さを感じながら大倫が白状すれば、すっかり涙も止まってきょとんとした顔で小春に見られていることに気付く。ころころと表情を変えて忙しいものだが、そういうところに大倫は惹かれたのだ。
「助けた時から惚れてた。正直、下心もあったが……俺と仲良いと思われたら危ない目に遭うかもしれねぇから」
大倫は言いがかりをつけられることもしばしばだ。校内だけでなく他校の生徒に絡まれることさえある。同じクラスになった男子の中にもやたらと大倫を敵視している男がいた。もし、小春に飛び火したらと思うと大倫は冷静ではいられなくなる。
「最初は俺が守ってやりたいと思った……けど、俺が壊しちまいそうだったから」
近くにいればほしくなるのは間違いない。か弱い小春をその腕に抱けば折れてしまいそうで、彼女を想像の中で抱く時さえ乱暴にはできなかった。それなのに、結局は信じられないほど強引に抱いてしまった。
「壊れてないでしょ?」
意外な言葉に今度は大倫が目を見張る。気丈に振る舞う小春から目が離せなかった。
「…………だな」
「大丈夫だよ……大丈夫」
まるで自分に言い聞かせるような言葉に今度は大倫が息を飲む番だった。本当は大丈夫ではないのだ。
彼女は優しい。悪い噂が付き纏う自分に普通に接してくれる。それを思い出して大倫はやるせない気持ちを堪える。
「嫌われるのが簡単だと思った。嫌われちまえば変に期待しなくて済むのに……まさか、あんな熱烈な告白されるとはな」
「あ、あれは……!」
小春は慌てて否定しようとして大倫に「わかってる」と制される。けれども、違わないのかもしれない。
「売り言葉に買い言葉みたいなもんだろ」
そう言われればそうなのかもしれないと思ってしまった小春は言葉を選ぶのに慎重になってしまう。納得できなかったから意地になってしまったのだ。
大切にしたかったはずだった。彼女だけは守りたいと思っていたのに、自分が一番傷つけてしまった。
避妊具こそ付けたが、何の隔たりもなく繋がって吐き出したかったと思っている自分に嫌悪して大倫は溜息を吐く。彼女を貫いた凶器はまたすぐにでもその凶悪さを取り戻すだろう。痛々しい姿にさえ抱く劣情を否定できない。
そんな自分の中の凶暴な獣を抑え込みながら大倫が彼女の身なりも整え終えた時、怯えた目と合った。
「ゃ……」
力の入らない身体で後退ろうとする姿があまりに憐れだ。頭から冷水をかけられたように、ようやく大倫は己の罪の重さを思い知らされた気がした。つい先ほどまで大倫の中にあった欲が一瞬にして消えていく。
彼女の泣き顔にか細い声になぜあれほど興奮したかわからない。赤く滲んでいた秘部に突き入れたいとは思えなかった。
「もうしねぇ」
まずは安心させようとしたつもりだった大倫だが、小春はビクリと大げさなほど身体を跳ねさせる。
「……落ち着いたら送ってく」
こんな状態の小春を放ってはおくことなど大倫にはできない。自分がしたことだが、罪滅ぼしというよりも何よりも小春が心配だったのだ。
それでもふるふると首を横に振る小春に大倫はどうしたものかと頭を掻く。弱った獲物を自分と同じ猛獣達が放っておくだろうか。優しい人間さえ狩人に変えてしまいそうな愛らしい少女だ。家まで送り届けなければ安心できるとは思えなかった。
「そんな状態で他の男に犯されたらどうすんだ」
何と言ったら良いのかわからないまま、口をついて出た言葉に再び小春が震える。身体を小さく丸めて自分を守ろうとしているかのようだ。その反応に配慮に欠けていたと気付いても大倫はどうすれば良いのかわからなかった。
「近付くなって言ったくせに……」
ぽつりと小春が吐き出した言葉は消え入りそうでありながら確かに大倫の耳に届いた。その声が震えてるのは恐怖か怒りか他の感情かは彼にはわからない。
小春を遠ざけようとした結果が現在なのだ。恨み言を言いたくなるのも尤もだと大倫は思う。
「……お前が俺に笑いかけてくる度、気がおかしくなりそうだった」
大倫が隠し通すつもりだった想いを吐露すれば、はっと息を飲む音がやけに大きく響いた気がした。
「そんな、嫌われてるって、思わなかった……ごめんなさい……ごめん、なさっ……!」
小春はやっと答えを与えられた気がした。言葉と共に涙が頬を伝う。不快な思いをさせていたとは考えもしなかった。泣いたところでより彼を嫌な気分にさせるのかもしれないが、止めることはできなかった。
「違う!」
泣きじゃくり始めた小春に慌てた大倫は思わず声を荒らげるが、それもまた彼女を怯えさせるものでしかなかった。
「……逆だ」
「ぎゃく……?」
「惚れた女が近くにいて平然としてられるかよ……! すげー突っかかってくるやついるし」
顔の熱さを感じながら大倫が白状すれば、すっかり涙も止まってきょとんとした顔で小春に見られていることに気付く。ころころと表情を変えて忙しいものだが、そういうところに大倫は惹かれたのだ。
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大倫は言いがかりをつけられることもしばしばだ。校内だけでなく他校の生徒に絡まれることさえある。同じクラスになった男子の中にもやたらと大倫を敵視している男がいた。もし、小春に飛び火したらと思うと大倫は冷静ではいられなくなる。
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近くにいればほしくなるのは間違いない。か弱い小春をその腕に抱けば折れてしまいそうで、彼女を想像の中で抱く時さえ乱暴にはできなかった。それなのに、結局は信じられないほど強引に抱いてしまった。
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意外な言葉に今度は大倫が目を見張る。気丈に振る舞う小春から目が離せなかった。
「…………だな」
「大丈夫だよ……大丈夫」
まるで自分に言い聞かせるような言葉に今度は大倫が息を飲む番だった。本当は大丈夫ではないのだ。
彼女は優しい。悪い噂が付き纏う自分に普通に接してくれる。それを思い出して大倫はやるせない気持ちを堪える。
「嫌われるのが簡単だと思った。嫌われちまえば変に期待しなくて済むのに……まさか、あんな熱烈な告白されるとはな」
「あ、あれは……!」
小春は慌てて否定しようとして大倫に「わかってる」と制される。けれども、違わないのかもしれない。
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