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遠ざけて近付いて
遠ざけて近付いて 5
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「お前が決めてくれ」
「何を?」
真剣な眼差しを向けられて小春は首を傾げる。
「ひどいことしちまったからな……許してもらえるなんて思っちゃいねぇ。お前が言うことなら退学でも何でも受け入れる。だから、お前が裁いてくれ」
罰を与えてくれと懇願されているようで小春は困惑する。今も彼と話していて恐怖はないが、不思議な気分だった。
あれほど自分を遠ざけようとした彼に好意を持たれていたことに驚き、自分の感情がわからなくなっている。彼が打ち明けてくれたなら、ここまでこじれることはなかっただろうが、憎めずにいる。
折角同じクラスになれたのだから小春はもっと仲良くなりたかったのだ。それが恋心かは今もわからない。
しかしながら、好きだから許せるわけでもない。簡単に許されることを彼は望んでいないだろうし、彼のためにならないことだ。
そして、小春が決めなければ大倫は償いとして消えようとするかもしれない。それは当初の小春の目的と相反する。
「許さない……」
ぽつりとこぼれた小春の言葉は大倫の胸に突き刺さった。許されないとわかっていても、彼女が好きだからこそその口から聞くことが痛い。こうして会話をしていることで、どこか許されているような気になって期待してしまっていたのかもしれない。
「こ、このまま退学とか許さないから!」
「はっ……?」
予想外の言葉に大倫は絶句した。高校をやめて働くかとまで一瞬の内に脳裏をよぎったというのに、それが許されないとならば小春の真意がわからなくなる。
「もう授業はサボったらダメだからね……?」
「お前がそう言うなら……」
授業に出るまで付きまとうと言った小春はその意地を貫き通すつもりなのか。裁きを委ねた以上文句を言うつもりはないが、大倫にとっては紛れもない拷問である。
「こんなこと他の女の子に絶対しちゃだめ……!」
レイプの噂を本当にすると言ったが、見境なく女を襲うつもりなどない。小春にそういう男だと思われるのは大倫には耐え難いことだ。
けれども、必死に裁きを考えているらしい様子が可愛いと思ってしまうことなど言えるはずもない。
「しねぇよ。俺が惚れた女はお前だけだ。他の女なんて抱きたくもねぇ」
「うっ……」
大倫にとっては紛れもない本気だったのだが、小春はわかりやすく動揺した。
都合良く解釈すれば照れているようである。やはり可愛いと思ったことは口が裂けても言えるはずがなかったが。
「それで? そんなことでいいのか?」
犯罪行為をしたという意識があるからこそ大倫は促す。警察に突き出すと言われても仕方のないことである。
彼女は優しすぎるのかもしれない。あるいは、彼女の奥深くに刻みつけてしまった恐怖がそうさせるのかもしれない。
「み、みんなと仲良くする……?」
「努力はするが……」
これに関しては自分だけの努力ではどうにもならないと思うからこそ、大倫は歯切れの悪い返事しかできなかった。
「教室で話しかけても怒らない?」
「が、頑張る……」
そう答えた瞬間、小春が悲しげな表情を浮かべたことに大倫は気付いて内心では焦っていた。あまりに可愛らしい問いに爆発しそうな気分だった。
「怒るの……?」
「い、いや、怒るとかじゃなくてな……」
大倫はどう言えば良いのかわからずにいた。彼がどれほど格好付けていたかを彼女は知らないのだ。犯して傷付けた後でありながら彼女にとっては格好良い自分でありたいと思い続けている。
「頑張りを見てから決めるから」
「地獄かよ……」
大倫は思わず頭を抱える。彼にとっては生殺しである。その後の裁きが怖いのではない。試されることが問題なのだ。
「地獄くらいで丁度いいでしょ? 罰なんだから」
「そ、そうだな……」
優しすぎる彼女なりに心を鬼にしているのか、気持ちをわかっていて弄ぶ小悪魔でもあるまい。大倫は彼女と教室で接することが不安なのだとは言えそうになかった。
それから大倫に睨まれたと騒がれた理由とその原因が自分に関係していたと小春が知るのはすぐのことで、二人が付き合うことになるのはそう遠くない未来のことだ。
「何を?」
真剣な眼差しを向けられて小春は首を傾げる。
「ひどいことしちまったからな……許してもらえるなんて思っちゃいねぇ。お前が言うことなら退学でも何でも受け入れる。だから、お前が裁いてくれ」
罰を与えてくれと懇願されているようで小春は困惑する。今も彼と話していて恐怖はないが、不思議な気分だった。
あれほど自分を遠ざけようとした彼に好意を持たれていたことに驚き、自分の感情がわからなくなっている。彼が打ち明けてくれたなら、ここまでこじれることはなかっただろうが、憎めずにいる。
折角同じクラスになれたのだから小春はもっと仲良くなりたかったのだ。それが恋心かは今もわからない。
しかしながら、好きだから許せるわけでもない。簡単に許されることを彼は望んでいないだろうし、彼のためにならないことだ。
そして、小春が決めなければ大倫は償いとして消えようとするかもしれない。それは当初の小春の目的と相反する。
「許さない……」
ぽつりとこぼれた小春の言葉は大倫の胸に突き刺さった。許されないとわかっていても、彼女が好きだからこそその口から聞くことが痛い。こうして会話をしていることで、どこか許されているような気になって期待してしまっていたのかもしれない。
「こ、このまま退学とか許さないから!」
「はっ……?」
予想外の言葉に大倫は絶句した。高校をやめて働くかとまで一瞬の内に脳裏をよぎったというのに、それが許されないとならば小春の真意がわからなくなる。
「もう授業はサボったらダメだからね……?」
「お前がそう言うなら……」
授業に出るまで付きまとうと言った小春はその意地を貫き通すつもりなのか。裁きを委ねた以上文句を言うつもりはないが、大倫にとっては紛れもない拷問である。
「こんなこと他の女の子に絶対しちゃだめ……!」
レイプの噂を本当にすると言ったが、見境なく女を襲うつもりなどない。小春にそういう男だと思われるのは大倫には耐え難いことだ。
けれども、必死に裁きを考えているらしい様子が可愛いと思ってしまうことなど言えるはずもない。
「しねぇよ。俺が惚れた女はお前だけだ。他の女なんて抱きたくもねぇ」
「うっ……」
大倫にとっては紛れもない本気だったのだが、小春はわかりやすく動揺した。
都合良く解釈すれば照れているようである。やはり可愛いと思ったことは口が裂けても言えるはずがなかったが。
「それで? そんなことでいいのか?」
犯罪行為をしたという意識があるからこそ大倫は促す。警察に突き出すと言われても仕方のないことである。
彼女は優しすぎるのかもしれない。あるいは、彼女の奥深くに刻みつけてしまった恐怖がそうさせるのかもしれない。
「み、みんなと仲良くする……?」
「努力はするが……」
これに関しては自分だけの努力ではどうにもならないと思うからこそ、大倫は歯切れの悪い返事しかできなかった。
「教室で話しかけても怒らない?」
「が、頑張る……」
そう答えた瞬間、小春が悲しげな表情を浮かべたことに大倫は気付いて内心では焦っていた。あまりに可愛らしい問いに爆発しそうな気分だった。
「怒るの……?」
「い、いや、怒るとかじゃなくてな……」
大倫はどう言えば良いのかわからずにいた。彼がどれほど格好付けていたかを彼女は知らないのだ。犯して傷付けた後でありながら彼女にとっては格好良い自分でありたいと思い続けている。
「頑張りを見てから決めるから」
「地獄かよ……」
大倫は思わず頭を抱える。彼にとっては生殺しである。その後の裁きが怖いのではない。試されることが問題なのだ。
「地獄くらいで丁度いいでしょ? 罰なんだから」
「そ、そうだな……」
優しすぎる彼女なりに心を鬼にしているのか、気持ちをわかっていて弄ぶ小悪魔でもあるまい。大倫は彼女と教室で接することが不安なのだとは言えそうになかった。
それから大倫に睨まれたと騒がれた理由とその原因が自分に関係していたと小春が知るのはすぐのことで、二人が付き合うことになるのはそう遠くない未来のことだ。
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