【R18】Fragment

Nuit Blanche

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遠ざけて近付いて

遠ざけて近付いて おまけ:前日談

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「無理……!」

 顔を覆う大倫の姿に飯山いいやま耕司こうじは言葉を失った。
 近頃、なぜか悪い評判を多く耳にするようになった親友に何かあったのかと訪ねた結果がこれである。
 入学当初はその見た目から悪い噂が多数囁かれていたが、一年ですっかり落ち着いたはずだった。悪く見られがちだが、根は良い奴だと彼もよく知っている。クラス替えで離れて、多少は心配していたが、これほど問題になるとは思いもしなかった。

「いやいや、無理ってなんだよ?」

 確かに積極的でもなければ社交的でもないが、新しいクラスにも何人かは見知った顔がいるはずで、上手くやれないはずがないと耕司は思っていたのだが……

「惚れた女と同じクラスとか無理! 同じ教室にいるだけで幸せなのに、笑顔で話しかけてくるとかマジで無理!」
「あー……お前の天使ちゃんな」

 大倫が密かに想いを寄せている女子の話ならば以前から聞いていた。小さくて天使のように可愛いと大倫が言うから耕司は『天使ちゃん』と呼んでいた。

「向こうから寄ってくるなら、告ったら案外いけんじゃね?」
「俺なんかが天使と付き合えるかよ! マジで天使なんだぞ? 尊すぎて油断すると顔が緩んじまうし……何だよ、このご褒美! 逆に試練すぎる!」
「それでお前、顔面に力入れて人を殺せるような顔してたのか?」
「知らねぇけど、全く視界に入ってなかった野郎にガン飛ばすなって絡まれた」

 大倫の話と噂を重ね、耕司は納得した。物騒な話だと思っていたが、嘘だとは言い切れない。今、大倫が百面相しているのは自分の前だからであるとわかっている。

「で、今は逃げてるわけか?」
「もう無理……心臓がもたない……」

 図体がでかい大倫にしてはあまりに可愛らしい弱音である。しかし、そんな彼の背中を押してやることが親友の務めだと耕司は感じていた。

「当たって砕けろ」
「無理……断られたら心が死ぬ……」
「乙女かよ」

 激励が全く通用しない大倫に呆れながらも耕司から見る限り小春も満更でなさそうであるのだから近い内に上手く行くだろう。そう彼は暢気に考えていた。後に大倫が事件を起こすとも知らず、二人が結ばれた暁には小春に友人を紹介してもらおうと邪な考えを抱きながら。
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