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第二章

侵食される日常 11

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「怖いんですか?」

 答えなど決まりきっているというのに紗菜は頷くことすらできずに固まった。怖いと言ったところで晃はやめてくれる男ではない。本当に優しい男ならば怯える紗菜の処女を奪うようなことはしなかっただろう。見せかけの優しさに騙されたからこんなことになってしまったのだ。

「一回入れちゃったら平気かな? って思ったんですけど、やっぱり先輩にはおっきかったですかね?」
「ぁ、うぅっ……!」

 そんなことを問いかけられても紗菜が答えられるはずもなかった。今もその腕の中から逃れたくて攻防は続いている。グリグリと押し当てられる陰茎の存在感は確かに大きいが、他と比較できるわけでもなく、紗菜は標準を知らない。

「嫌なら、今日は挿入なしでいいですよ? その分触らせてくれるならですけど」
「すぐ嘘吐くくせに……」

 今だって勝手に触っているのだから信じられるはずがない。彼の甘言に騙されて痛い目に遭ったことを忘れたわけではない。忘れられるはずがないが、今日ここにいるのは穏やかながらも彼に逆らえないからだ。

「俺を嘘吐きにさせるのは先輩の魅力じゃないですかね? 可愛すぎるんですよ」
「そんなこと言われても……」

 紗菜としては困惑しかなかった。そんな魅力などいらないのだ。結局、彼は全てを紗菜のせいにして自分が思うように事を成したいだけに違いない。

「でも、その可愛い先輩が俺のチンポのせいでトラウマにしちゃったら可哀想なので怖くなくなるまで待ちますよ。彼女ですし」

 既にトラウマになっているとは思わないのか。彼女だからという理由で紗菜の意思を無視して押し切ってきたというのに。
 それでも紗菜は彼の言葉に縋らずにはいられない。反論などできるはずもなかった。

「本当に本当……?」
「本当です。先輩が欲しいって言うまでは入れるのは我慢します」

 言うはずがないというのに本当に我慢できるのか、やはり疑わしいところではある。
 また何か理由をつけてくるのではないか。そうは思いながらも口車に乗らなければ進まないことは紗菜も理解していた。

「ただ、先輩のせいで毎日ムラムラしてるんで協力はしてもらいますよ」
「また口でするの……?」

 協力は紗菜にとっては強要されることだ。何をさせられたか生々しく覚えているからこそ、体は強ばっていく。刺激が足りないと言い出して、体を求められたことも忘れていない。

「あー、先輩のフェラじゃイケる気がしないんですよね。かと言って無理矢理口に突っ込んで俺の好きに動かすのも可哀想で萎えますし……だから、ここ、使わせてください」
「やっ! 入れないって……!」

 不意に服越しに秘部を撫でられて紗菜は慌てる。やはり彼は今日もそのつもりでしかなかったのだろう。

「ええ、入れませんよ? 約束したじゃないですか。ここでチンポを擦るだけですよ。素股って知りません?」

 晃は時折紗菜には理解できない言葉を口にする。彼は常識かのように言い放つが、紗菜にとってはまるで宇宙や異世界の文化のような想像を絶することだ。

「でも、さすがに濡れてなかったらやめますよ? 気持ち良くないんで」
「ぬ、濡れてなんか……あっ!」

 咄嗟に否定しようとした紗菜が危機感を覚えたのは晃の手がスカートを捲り上げたからだった。

「先輩も嘘吐きですよね。おっぱい触られただけでここ、濡らしちゃってるくせに」
「ひっ、ぁあっ……」

 下着越しに触れられることを止められないまま、その刺激に紗菜は体を震わせた。それはまるで嘘を吐いた罰だとでも言うかのようだった。既に紗菜の弱点を把握した晃の指はひどく的確に攻めて翻弄してくるのだ。

「ぁっ……んぅっ!」
「立ってるの辛いですよね? 向こうでしましょう?」

 ソファーの方を示されて紗菜はただ彼に操られるように軽く背を押されるがまま歩き出す。彼は答えなど求めていない。紗菜が素直に従うことだけを望んでいるのだ。
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