【R18】お世話した覚えのない後輩に迫られました

Nuit Blanche

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第二章

侵食される日常 25

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 行為の余韻は紗菜に重くのしかかってくるようだった。ベッドの上でただぼんやりと天井を見上げている。服を着ているのもほとんど晃に手伝ってもらったものだ。
 全く疲れが見えなかった晃が恨めしくもなる。そもそも全て彼のせいであると言えるのだが。


「んっ……」

 不意に頬が撫でられ、紗菜はその手から逃れようと身をよじる。
 しかし、隣に寄り添った晃の腕に引き寄せられ、その胸に顔を埋める形になってしまった。
 今日はもう何もしないからと言われて素直に信じたわけではない。それでも少し休みたいという気持ちが勝ってベッドを借りることになったのだ。
 そうして落ちそうになる瞼と戦っている内に晃がベッドに上がってきても構う気力も残っていなかった。彼にとってはたった一度のセックスでも紗菜にとっては違う。心身共にひどく消耗するのだ。もう次は絶対にしたくないと思うほどに。

「来週はどうです?」
「あ……」

 やっと終わったというのに、紗菜は気が重くなる。まだ彼との関係は終わらない。薄々感じていても、いざ思い知らされるとその落胆は大きかった。来週のことなど考えたくもなかった。

「デートできますか?」

 答えなかった紗菜に晃が更に問いかけてくる。
 すぐにできないと言えれば良かっただろうか。予定があると嘘をつければ良かったのか。彼に見抜かれないはずがないというのに。

「食器も買いたいですけど、手料理も食べたいし……でも、そのためにはやっぱり食器ですかね?」

 晃は真剣に悩んでいるのだろうか。しかし、紗菜に決定を委ねているようでそうではない。これは誘導でしかないと紗菜もわかっていた。

「どうせ、また変なことする気なんでしょ……?」

 今日だって紗菜を追い込んだ晃のことだ。食器を買うだけで済むはずがない。紗菜は恐る恐る晃の顔を見た。

「俺はイチャイチャしたいのに、先輩が協力してくれないから」

 頬を撫でながら非協力的であることを責められて紗菜はそっと視線を外す。呼び方が元に戻っていても安心できない。
 こんな風に恋人らしさを強要されるならばいっそ割り切ってセックスフレンドにでもなった方が良かったのかもしれない。最終的に求められることは同じならば、もっとドライな関係の方が気が楽だったはずだ。今更考えても遅いことだったが。

「そういうのは、他の子として……」
「俺の彼女はひどいことを言うんですね。さっきも言いましたけど、紗菜先輩と付き合ってるのに、他の女の子となんかしませんって」

 こんなことを紗菜は望んではいない。ぐっと晃の胸を押せばその手が彼の指に絡め取られてしまう。その手の熱さに先程までのことを思い出さずにはいられなかった。

「それに、俺、今、先輩相手じゃなきゃ勃たないんですよ?」

 恋人同士がするように指を絡ませながら言われて紗菜はどうすれば良いのかわからなくなってしまった。
 目を逸らすこともできないまま晃の目に妖しい輝きが宿った気がした。

「だから、本当は、本当に監禁しちゃいたいくらいなんです」
「ひっ……」

 咄嗟に手を引こうとすれば晃が「そんなに怖がらなくても」と笑う。笑顔であろうと物騒なことを言われれば怖くもなるのだ。そんなことをするはずがないとは言えない。彼がしていることは既に犯罪である。

「紗菜先輩可愛いからずっと一緒にいて好きな時にエッチできたら幸せかなって思ってるだけです。ひどいことなんかしませんよ? 愛でてるだけです」

 結局のところ、晃には何を言っても無駄なのだろう。彼の善悪は紗菜のそれとは違う。彼は全て自分の思い通りにしてしまう。

「映画でも観に行きますか? 先輩が観たい物選んでいいですよ」

 ふるふると紗菜は首を横に振る。観たい映画があるわけでもない。あったとして、彼と一緒に楽しめるとは思えない。

「じゃあ、やっぱり先輩の撮影会しましょうか。服も下着も可愛い物いっぱい買っておきます」

 彼はなぜ撮影にこだわるのか。それをしないために紗菜は今日体を差し出したはずなのだ。何の約束も意味もなさない。

「食器でいい……!」
「はい、ペア食器買いましょう」

 にっこりと笑む晃を見て紗菜は結局誘導されてしまったことに気付く。また彼の術中にはまって、ほしくもない物を自ら望んでしまったのだ。

「調理器具も必要なものを考えておいてくださいね」

 いらないとは言えなかった。料理をすることでセックスをしなくて済むのなら紗菜は喜んで作っただろう。だが、晃は何かと理由をつけて約束を守らない。体の芯まで嘘吐きなのだ。

「それとも家で映画観ます?」

 押し黙った紗菜に晃は意地悪く問いかけてくる。紗菜が拒否することはわかっていただろう。
 それこそ何をされるかわからない。この家に足を踏み入れてしまったらセックスをするまで出られないと思った方が良いだろう。

「ゆっくりお買い物しましょう? ね?」

 微笑まれて額に口づけられて、紗菜は何も言うことができなかった。来週が憂鬱で、ただそれだけだった。
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みんなの感想(1件)

待鳥園子
2021.12.16 待鳥園子

なんか、久しぶりに読みたくなって読んだおそのだよ( ๑⃙⃘꒪⃙⃚᷄ω꒪⃚⃙᷅๑⃙⃘)

いつも読む度思うけど、最高だな。。( ᵒ̴̶̷᷄௰ᵒ̴̶̷᷅ )

2021.12.17 Nuit Blanche

わーい!おそのさん、ありがとうございますー!(ㅅ´ ˘ `)♡
そう言ってもらえて、とっても嬉しいです((o(。>ω<。)o))

解除

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