4 / 7
小説化したもの(する予定) または本編で出せなかった話
砂漠の国で伝えた大丈夫の意味
しおりを挟む昔見た夢を元に書き、完結させた『砂漠の女王が愛した星』
何故小姓は女王に、互いが死ぬと分かっていて、最期自分の気持ちではなく「大丈夫」と声をかけたのか、私自身ずっと謎であった。
夢を参考に書いた小説だから、自分でも、最期なら女王みたく「愛してる」の一言や二言の方がロマンチックなのにな~だなんてずっと内心思っていた。
小姓の最期の言葉が「大丈夫」であるせいで、小姓が果たして本当に女王を愛していたのか、その描写を書いてもいいのか悩んだ時期もあり、この言葉にはだいぶ苦労させられた。
夢を見た当時はまだ10代。
小説を書き、完結させた時期も22歳頃だ。
好きなら好きと、愛してるなら愛してるとはっきり言うべきだと。
言葉にしていないことは真実ではない……とまではいかないが、私にはまだその最期の言葉「大丈夫」の意味が分からなかった。
恐らく女王も分かっていないまま息絶えたことだろう。
どうしてこの状況でそんな事が言えるのだろうか、誰がどこからどう見ても大丈夫な場面などひとつもなかったのにと。
最近になって、逆の立場とも言える夢を見た。
街中で私が突如撃たれ、連れだった男性がパニックに陥り、私を抱き締めながらおいおい泣いているのだ。
その時私は咄嗟に「大丈夫」と声をかけた。
愛しているという気持ちはもちろんある。
でも不安と恐怖に駆られ慟哭する彼を前に、どうして愛を囁けるだろうかと思ったのだ。
大丈夫だと、私は大丈夫だから、安心してと、私は死を悟りながら彼の心を案じていた。
自分の彼に対する想いを伝えようなど微塵も思わなかった。
ただただ、心配だった。
目覚めた時、なるほどなと思わず口にした。
すぐに小姓のことが思い浮かんだのだ。
別に夢だから本当だろうが偽物だろうがどちらでも構わないが、どんな形であれ納得はしたい。
長年謎だったその言葉の真意が何となく分かった気がしたのだ。
自分の想いを押し付けるよりも、絶望を前に泣く彼女が心配だった。
そして、少しでも安心させてあげたかった故に出た言葉がそれだったのだと。
ただ、夢の中の私は彼に未来があると思ったから「大丈夫」だと伝えた。
私は死に、彼は生きるのであれば、今の彼を優先したかった。
しかし恐らく小姓は自分が滅多刺しにされた後、女王が殺されることも分かっていただろう。
ここに状況の違いはあるものの、似た感覚から小姓は同じ言葉を口にしたのだと思う。
今まで共に過ごしてきた仲間たちが、自分の選択のせいで目の前で抗うことなく殺され、かつて愛した人までもがこれから殺されようとしている。
今まで威厳を放っていた顔は涙に汚れ、気丈に立っていた足は崩れ落ちていた。
愛する人(だと仮定したい)のそんな姿を見て、小姓は何を感じたのだろう。
絶望の中で彼女を死なせたくは無かったのだろうか。少しでも安心して欲しかったのか。
それとも自分の想いを伝える事によって、後世の女王の名に傷がつくことを恐れたのか。
小説を書く上では大それた言葉の方が有難かったが、有り触れた「大丈夫」という言葉を私は敢えて、ほぼ変える事無くそのまま使った。
その選択は彼の性格を表す上では正解だったなと、今なら思う。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる