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しおりを挟む「っ、ふぅ……ひ、っく」
「…………」
特別に可愛いというわけではないと思う。ただこの子の声や雰囲気や匂いなどの全てが男にそう思わせているんだ。
薄汚れた邪な感情を抱かれずに、ただ単純に愛でてくれる相手と巡り会うのは苦労するだろう。この子にとって、この世界は生き難いことこの上ないはずだ。
「……やったことに、」
「……?」
「SEXしたことにして帰れよ」
……もし。もし俺がこの職に就いていなかったらどうしただろうか。常識や法律など何も考えず据え膳とばかりに、誘われるままにこの子の隅々まで貪っただろうか。その柔らかそうな頬や、胸や、腹や、太腿に噛み付いて、俺の物だとマーキングするように痕を残しただろうか。
……だが、そんなことを今更考えたところで答えなどでないだろう。なぜなら、逃がすと決めてしまった今では、俺自身でもその答えは分かりはしないのだ。
「だ、だめです」
「……は?」
…………しかし、この女から予想外の言葉が返ってきて、俺は思わず低い声を出してしまった。
「……お前は、自分で何を言ってるのか分かってるか?」
「そ、その……だめ、なんです」
「なんでだ?」
「……外であの子たち見張ってて、……そ、その……」
「なんだよ?」
言いにくそうにどもる女に俺はその先を催促する。
「……その……あ、あの、」
「…………」
「な、中に男の人の、せ…いえき、入れてもらったところを、写メで送れって……」
「…………」
なぜこの子が『駄目』だと言ったのか。その理由が分かったのと同時に、俺は反吐が出そうになるくらい気分を害した。……とてつもなく、不快で、不愉快だ。
「どこの高校だ?」
「……え?」
「お前はどこの高校に通ってる?」
「……?あ、いえ、私大学に通っていて……」
「……まじかよ」
「ま、まじです」
「何歳だ?」
「19……、あ、先日誕生日を迎えたから20歳です」
随分と幼く見えたから、てっきり高校生くらいだと思っていた。
しかし、こいつが大学生ということにも驚いたけれど。それよりもその年齢になってでも、そのようなことをやらそうとするこの子の“友達だった存在”にも酷く驚かされた。そいつらがあまりにも幼稚で残酷なのか、それとも女社会というものが俺が思っているよりも怖いのか……。
もう子供も産める年齢だ。選挙権だって持っている年齢だ。酒も飲めるし煙草も吸える年齢だ。大人の仲間入りしている年齢のはずなのに、常識やまともな善悪を持ち合わせていないのだ。
……他者はもう大人だと認識するはずなのに、いつまで経ってもそいつらは子供なのだ。クソ餓鬼なんだ。
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