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しおりを挟む身なりを整えて外に出れば、室内との温度差が激しくて思わず身を捩らせてしまう。
此処がホテル街だからなのか、それとも夜中の一時を過ぎたところだからなのか、この辺りには誰一人とて居ない。もしかしたら有美を苛めていた奴等も、有美から直接報告を聞くのも焦れて帰ったのかもしれない。これだけ待たされたのならそれも当たり前だろう。俺としては直接話をしたかったのだが、それとは正反対に有美は辺りを見回して誰も居ないことに安堵している。たとえ一時的なものだとしても、何も干渉されずに済んだことが余程嬉しいのだろう。
「大丈夫か?一人で歩けるか?」
「……は、はい。大丈夫、だと思います」
俺は今にも転んでしまいそうなほど安定感のない歩きをしている有美に問いかける。あれほど何時間も激しいセックスをしたのだから当然といえば当然なのだろう。口では大丈夫だと言っているが、無理していることは見ればすぐ分かる。俺に心配を掛けたくないのか、それを隠そうとしてゆっくり歩く有美の姿を見て、無茶をし過ぎたことに申し訳なく思った。
苛めていた奴らも他の通行人も居ないのだから、少しくらい密着しても大丈夫だろう。そう判断をした俺は有美の腰を支えてあげようとしたのだが……、
「あー!有美、居るじゃん!行き違いになったかと思ってたぁ」
「おっそーい。どれだけ盛ってるだっつーの。待ちくたびれたしー」
……それよりも先に甲高い女の馬鹿でかい声が聞こえてきて、俺はその手を引っ込めた。隣に居る有美の顔を覗き見れば、あからさまに怯えた表情を浮かべていた。
「…………あ……」
「つーかあんたさぁ、ちゃんと連絡しろって言ったよねぇ?なーに無視してくれてんの?私たちを無視するなんて随分と偉くなったものよねぇ」
「中に出してもらった写メも送ってないし……もしかして私たちに逆らう気?」
「ご、ごめんなさい。……でも、私そんなつもりはなくて……」
「後で謝罪するくらいなら最初から無視すんなしー」
頭の悪そうな喋り方で有美に悪態を吐く女達は、一通り文句を言って少しは満足したのか、隣に居る俺に視線を寄越した。
「…………もしかして、この人が有美のお相手?」
「はぁ!?まじー?ホテルに入って行く時は遠くてよく分かんなかったけど、ちょーイケメンじゃーん!」
「あんたもしかして顔の良さで厳選した?」
「そ、そんなことっ、私は言われた通りに十番目に通った人に声を掛けただけで……」
「……まじかよ。あんたむかつくほど運がいいのね」
二人の声を聞いているだけで虫唾が走る。これだけ人を不快にさせる会話ができるのだからすごいことだ。
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