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4章婚約者12歳、王子15歳
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また夢を見た。だけど次はあの平民の女が何故か俺の腕に絡み付き、その目の前には血だらけの女性の姿。
何故か今すぐ目の前の女性を助けたい気持ちに駆られているのに動かない身体。血だらけの女性は虚ろな目で涙を流していて今にも息が途絶えそうだった。
『目を、覚まして……フィセー………』
その一言を最後に倒れる女性。顔は知らない。だけど声は聞いたことのあるものだった。
そう、あの声は………
「すふぃ………」
「殿下、起きてください」
「うわっ」
そうして目が覚めた先には包帯で顔が巻かれた姿。スフィアの仮の姿である守護騎士スアンがそこにはいた。
「驚かせてすみません。魘されておいでだったため勝手に失礼いたしました」
「魘されて………俺が?」
「はい」
確かにいい夢見じゃなかった。スフィアが死ぬ夢なんだから………いや、俺は何故スフィアと断定した?こいつの顔を俺は見た記憶はないというのに。確かに声は似ていたが………いや、所詮は夢………夢だから想像上のスフィアでしかない……。
「スフィア……聞きたいんだが」
「? なんでしょうか」
「お前の瞳の色はオッドアイなのか」
「!」
驚くようにスフィアの肩が動いたのを確認する。動揺したのだろうか………包帯で相変わらず顔が見えないものの、何故知っているのだという雰囲気が滲み出した。
「赤と緑……それが瞳の色か?」
「だれ、から」
珍しく声が震えている。合っているのだろう。髪の色こそ夢では茶髪だったが、やはりあれはスフィアだったのではと思う。何故確信めいているのかは自分でもわからないが、どことなく既視感がある夢だった。
あの平民少女は牢屋の中で、スフィアは生きているというのに。
「夢で見たと言えば信じるか?」
「ああ……ついに記憶が……」
「スフィア……?」
何故かスフィアの苦しそうな声が紡がれる。記憶とは一体何を言っているのか。スフィアはふらふらとし始めて俺からゆっくりと離れていく。
「殿下……どうか自分を見失わないでください………どうか………」
「何を言っているんだ?スフィア何か夢について知ってるのか?」
俺の夢は俺しか知らないはずなのに何を言っているのか?でも思わずそんなことを言っていた。スフィアが夢の内容を知っているんじゃないかとそう思ったから。
「そのうち………わかる日が来ます。私からは話せないのです……。申し訳ありません……」
「スフィアっ」
そう言ってスアン姿のスフィアは断りもなく部屋から出ていく。何があのスフィアをあそこまで弱々しくさせるのかわからないが、また夢を見ればスフィアの言うようにわかるのだろうか?全ての謎が………
スフィアを呼び止めようとはしたものの追いかける気まではならないし、どうせ本気で逃げられれば追い付けないと判断してため息をひとつ。
一体俺の知らないところで何があるというのか、疑問は増えていくばかり。
何故か今すぐ目の前の女性を助けたい気持ちに駆られているのに動かない身体。血だらけの女性は虚ろな目で涙を流していて今にも息が途絶えそうだった。
『目を、覚まして……フィセー………』
その一言を最後に倒れる女性。顔は知らない。だけど声は聞いたことのあるものだった。
そう、あの声は………
「すふぃ………」
「殿下、起きてください」
「うわっ」
そうして目が覚めた先には包帯で顔が巻かれた姿。スフィアの仮の姿である守護騎士スアンがそこにはいた。
「驚かせてすみません。魘されておいでだったため勝手に失礼いたしました」
「魘されて………俺が?」
「はい」
確かにいい夢見じゃなかった。スフィアが死ぬ夢なんだから………いや、俺は何故スフィアと断定した?こいつの顔を俺は見た記憶はないというのに。確かに声は似ていたが………いや、所詮は夢………夢だから想像上のスフィアでしかない……。
「スフィア……聞きたいんだが」
「? なんでしょうか」
「お前の瞳の色はオッドアイなのか」
「!」
驚くようにスフィアの肩が動いたのを確認する。動揺したのだろうか………包帯で相変わらず顔が見えないものの、何故知っているのだという雰囲気が滲み出した。
「赤と緑……それが瞳の色か?」
「だれ、から」
珍しく声が震えている。合っているのだろう。髪の色こそ夢では茶髪だったが、やはりあれはスフィアだったのではと思う。何故確信めいているのかは自分でもわからないが、どことなく既視感がある夢だった。
あの平民少女は牢屋の中で、スフィアは生きているというのに。
「夢で見たと言えば信じるか?」
「ああ……ついに記憶が……」
「スフィア……?」
何故かスフィアの苦しそうな声が紡がれる。記憶とは一体何を言っているのか。スフィアはふらふらとし始めて俺からゆっくりと離れていく。
「殿下……どうか自分を見失わないでください………どうか………」
「何を言っているんだ?スフィア何か夢について知ってるのか?」
俺の夢は俺しか知らないはずなのに何を言っているのか?でも思わずそんなことを言っていた。スフィアが夢の内容を知っているんじゃないかとそう思ったから。
「そのうち………わかる日が来ます。私からは話せないのです……。申し訳ありません……」
「スフィアっ」
そう言ってスアン姿のスフィアは断りもなく部屋から出ていく。何があのスフィアをあそこまで弱々しくさせるのかわからないが、また夢を見ればスフィアの言うようにわかるのだろうか?全ての謎が………
スフィアを呼び止めようとはしたものの追いかける気まではならないし、どうせ本気で逃げられれば追い付けないと判断してため息をひとつ。
一体俺の知らないところで何があるというのか、疑問は増えていくばかり。
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改稿版から読み始めたので続きが気になります
ありがとうございます!完結したいのに中々やる気が出ずすみません
退会済ユーザのコメントです
コピー作品で削除される可能性があるため難しいので頑張って更新します💦
ひっさしぶりの更新きた〜w
嬉しいっすね。昔投稿されてたの読んで好きになったのに内容忘れちゃったから読みたいのに、また忘れそうだよ!(笑)
なんて書きましたが、のんびりお待ちします。書きたい時にで良いのでよろしくお願いします\(//∇//)\
私も名前度忘れしたりしちゃってます汗
大変待たせてしまいすみません(ToT)
お気遣いありがとうございます!