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4章婚約者12歳、王子15歳

5~ユラナ視点~

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おかしいな、おかしいよ、おかしいな………私は何故牢屋から出られないの?何故、鎖で繋がれているの?私の王子様は何故私を助けてくれないの?

『気持ちが悪い笑みを向けるな。気色悪い声で俺の名を呼ぶな。行くぞ、スフィア』

なんで、なんでそんな言葉を私に吐いたの?その言葉はあの女に言うことでしょう?

ああ、わかったわ。あの女が顔を隠す卑怯者だからね。きっと貴女の顔を見れば私の王子様の目は覚めるに違いない。だって貴方は言ったもの。

私を愛してるって。あんな女は死んでくれたらいいって。

「ふふ、ふふふ、ははは」

「また笑い出したぞ……報告するか?」

「不気味なやつだな……まあ、こんなとこに何日も閉じ込められて拘束されたんじゃ仕方ないだろ。汚物すら片付けられないわけだしな」

「せめてあれはなんとかならんか?臭くてしょうがない」

「近づくなという命令だから仕方ないだろう」

ああ、外の見張りはうるさいばかり。楽しい気持ちも萎えるというもの。貴方たちだって本来なら私の家来でしょうに。。でも不思議なのは私がってこと。

十分幸せだったのに何故こんなにも巻き戻っているのか、記憶を取り戻したあの日に私はこの場所に閉じ込められた。

そして巻き戻った原因を考えなかった訳じゃない。未来で最後に誰かに会った気がしている。その人に会ってからの未来が途切れているから原因はその人じゃないかと思ってはいるが、誰だかさっぱりなのだ。

それさえわかれば私は幸せな未来へ戻れるかもしれないのに。私の王子様フィセード様だって目を覚ましてくれるに違いない。

ああ、てっとり早くあの女を殺した方が早いだろうけど、中々にしぶといの。私はあの女の殺し方を知ってる。どこにいようと通用する方法を。だからこそまだこの場所で正気を保てるのだ。

私を閉じ込めたら終わりだなんて思わないでほしいものね。でもやっぱり近くに来てくれた方が早く殺せるのに最近は近づくことがない。

あれに未来の記憶があるのかはわからないけれど恐れているのかもしれないわね。

『目を、覚まして……フィセー………』

最後までフィセード様にすがる哀れな子。その一途さだけは褒めてもいいけれど。今は立場が逆転しているけれど、それも今だけ。

だってね、私は幸せになって貴女は不幸になる存在だって決まっているから………。

決まって………そう、決まってる……。おかしいわね、何故、胸が痛いのかしら?
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