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「きゃああああああっ」
エミィが見つかったのは誰かの悲鳴によってだった。
「何事だ!」
「へ、陛下!あ、あの者が!」
悲鳴をあげたのは城のメイドだったようで、指差す先にはすでに片付けていたはずの女が、エミィの首を締め付けていた。
「何をしている!?」
「貴女が……!貴女のせいで………っ!」
「………っ………」
周りの声など聞こえないとばかりにその薄汚れた女はエミィを責め立て首を絞める手を止めない。エミィは抵抗できないのかしないのか、されるがまま。
「やめろ!」
「きゃあっ」
ならば力付くでと女をエミィから引き離す。今は何故これが生きているか考えるよりエミィの無事を確かめなければならない。
「エミィ………っ大丈夫か?」
「…………?」
しかし、心配する声も姿も俺が俺である限りエミィには届かず、エミィは何故急にあの女が離れ、尻餅をついているのかと不思議そうにしていた。殺されることに恐怖心などまるでないその姿は俺が見えなくなってもまだ死ぬことを諦めていないように見え、早くエミィを何もない監視のある部屋に閉じ込めたくなる。
「陛下………っ!私は利用されたんです!」
「誰かこの者をエミィの見えないところで殺せ!」
「陛下!信じてください!そいつは!その女は……………!」
わめく女の名前などもはや思い出す気もしない。何故生きているのかは後程カーンに確認しなければならないが、どちらにしろ今始末すれば同じこと。
しかし、エミィをその女呼ばわりしたことで怒りが沸いたその瞬間。
「黙れ」
「へ………」
気がつけば剣を抜き、その女の首を斬り落としていた。飛び散る血しぶきに辺りは騒然とするのも無視して剣を鞘に戻し、エミィの手を握って歩き出す。
「片付けておけ」
そう一言だけ残して、何に引っ張られているかよくわかっていない様子のエミィを次は逃がさないようにと俺の部屋へと連れていく。一階ではないが、ずっと俺が傍で見張っていれば部屋からも、この世からも逃がすことなどありえないのだから。
「手錠をつけようか……俺と君の」
「…………」
「見えずともそうすれば俺の存在を理解はできるだろうから。ああ、まるで手錠が赤い糸みたいだな」
「…………」
ベッドへ連れていき、彼女を抱き締めながら少しでも声が届けばと願いながらひとり話す。その間もエミィは何故動けないのだろうとばかりに少し抵抗する素振りが見られたが、俺が逃がすはずもない。
「ごめん……ごめんな、エミィ。俺はどうしてもお前を諦めきれない」
どうせ届かない声と姿。俺はエミィが目の前にいるというのに情けなくも涙が溢れ出して止まらなくなる。
まるでひとりで泣いているのと同じ。
なんて最低で身勝手なことをしたんだろうか……後悔しても過去はもう戻らないとわかりながらもどこまでも身勝手な俺は願ってしまう。あの日、エミィと笑い合っていた日に戻りたいと。
なんて、愚かな願いを………なんて自分を罵りながら。
エミィが見つかったのは誰かの悲鳴によってだった。
「何事だ!」
「へ、陛下!あ、あの者が!」
悲鳴をあげたのは城のメイドだったようで、指差す先にはすでに片付けていたはずの女が、エミィの首を締め付けていた。
「何をしている!?」
「貴女が……!貴女のせいで………っ!」
「………っ………」
周りの声など聞こえないとばかりにその薄汚れた女はエミィを責め立て首を絞める手を止めない。エミィは抵抗できないのかしないのか、されるがまま。
「やめろ!」
「きゃあっ」
ならば力付くでと女をエミィから引き離す。今は何故これが生きているか考えるよりエミィの無事を確かめなければならない。
「エミィ………っ大丈夫か?」
「…………?」
しかし、心配する声も姿も俺が俺である限りエミィには届かず、エミィは何故急にあの女が離れ、尻餅をついているのかと不思議そうにしていた。殺されることに恐怖心などまるでないその姿は俺が見えなくなってもまだ死ぬことを諦めていないように見え、早くエミィを何もない監視のある部屋に閉じ込めたくなる。
「陛下………っ!私は利用されたんです!」
「誰かこの者をエミィの見えないところで殺せ!」
「陛下!信じてください!そいつは!その女は……………!」
わめく女の名前などもはや思い出す気もしない。何故生きているのかは後程カーンに確認しなければならないが、どちらにしろ今始末すれば同じこと。
しかし、エミィをその女呼ばわりしたことで怒りが沸いたその瞬間。
「黙れ」
「へ………」
気がつけば剣を抜き、その女の首を斬り落としていた。飛び散る血しぶきに辺りは騒然とするのも無視して剣を鞘に戻し、エミィの手を握って歩き出す。
「片付けておけ」
そう一言だけ残して、何に引っ張られているかよくわかっていない様子のエミィを次は逃がさないようにと俺の部屋へと連れていく。一階ではないが、ずっと俺が傍で見張っていれば部屋からも、この世からも逃がすことなどありえないのだから。
「手錠をつけようか……俺と君の」
「…………」
「見えずともそうすれば俺の存在を理解はできるだろうから。ああ、まるで手錠が赤い糸みたいだな」
「…………」
ベッドへ連れていき、彼女を抱き締めながら少しでも声が届けばと願いながらひとり話す。その間もエミィは何故動けないのだろうとばかりに少し抵抗する素振りが見られたが、俺が逃がすはずもない。
「ごめん……ごめんな、エミィ。俺はどうしてもお前を諦めきれない」
どうせ届かない声と姿。俺はエミィが目の前にいるというのに情けなくも涙が溢れ出して止まらなくなる。
まるでひとりで泣いているのと同じ。
なんて最低で身勝手なことをしたんだろうか……後悔しても過去はもう戻らないとわかりながらもどこまでも身勝手な俺は願ってしまう。あの日、エミィと笑い合っていた日に戻りたいと。
なんて、愚かな願いを………なんて自分を罵りながら。
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