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番外編

後日談~静と未来編~

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時は流れ、愛情を帝王から毎日与えられ見事大人にまで成長できた皇子。9割以上帝王と過ごしてきたが、ヤクザの一員として生き抜くためたくさんのことを学び、舎弟や静たちとはもちろん、外の世界にも一般の人と変わりなく慣れた。

何より帝王に愛される度、学ぶことが増える度、自分に自信がついていった皇子は心も身体も成長し、栄養不足だった頃があったようには思えないくらいの健康体となっていた。

そんな皇子にも悩みがある。

「静~!てーくんはぼくに魅力を感じないのかな?」

「えー・・・感じまくってると思うけど」

思わぬ質問に普段からの帝王を思い浮かべ苦笑する静。成長してからの静と皇子は兄と弟のような間柄であると同時に呼び捨てで呼び合い気軽に話す親友のようになっていた。友人と言える立場の人と出会う場のない皇子にとって誰よりも相談相手としてふさわしく、今日もおやつを食べながら椅子に座り、帝王についての悩みを言葉にする。

「ぼく、てーくんとせっくすしたい」

「は、え、はい?」

いきなりのそれに思わず静は食べていたおやつを落としそうになりながら皇子をぽかんとした表情で見る。

「せっくす?っていうの、舎弟さんたちが話してたからね、それ何?って聞いたら好きな人同士がするんだって聞いたんだー。僕もてーくん大好きだからしたい!で、どうすればしてもらえるかなって聞いたら色気?が必要みたいで、魅力的みたいな意味だって聞いたから」

「あー・・・あいつら・・・」

成長したとはいえ、純粋なまま育ってほしいと願ったのは帝王であり、いつまでも子供のように見てしまい性教育までは教えなかったのは静である。なんと言っても体の元々の小柄さは抜けないも立派な大人である皇子の幼さ残る一人称を指摘して来なかったのも可愛いからという理由であり、この二人、特に帝王の気持ちによるものだ。

さらに外に慣れたとは言っても必要以上出ることもなく、テレビや新聞のメディアは過去をぶり返すようなことがあるかもしれないと見せず、携帯は今だにキッズケータイであり、成長する過程で知る帝王たちだったが、皇子は機械類がだめらしく、電話くらいしかできない。

これでは今まで知らなくても無理はない。いつかは教えざる終えないとは思っていた静だが・・・。

「皇子、本来セックスの類義語として共寝ってのがあるんだ。共寝の意味は一緒に同じ寝床で寝ること!これは好きな人とじゃなきゃできないことなんだよ?」

「寝ることが?」

「うーん、皇子はさ、若が好きだから一緒に寝るし、若も皇子が好きだから許すわけだ!もし俺ちゃんと寝る?って聞かれても若がいいよね?」

「うん、てーくんがいい・・・。」

「そうだよね!だから既に皇子の魅力に負けて若はメロメロ!それで一緒に寝てるわけだ!セックスできてるできてる!」

「そっか!なら、みんなもそう言ってくれればいいのにね」

「そうだねー・・・皇子ちょっと用事できたから、またね!」

「うん?」

余計な混乱を招かないため、全員に説明する集会が開かれたのはこの数分後。余計な知識を与えた舎弟に躾をするのも忘れない。そんなことを静がしている間に仕事から戻る帝王。

「皇子、ただいま」

「おかえり、てーくん!今日は稽古する?」

「稽古より勉強だ」

「えー」

色々と知ることで体を動かすことが好きと知った皇子は帝王との稽古を気に入っている。そのおかげか、幹部クラスになれるほどの実力者。特に皇子に甘い帝王が、皇子自身に死なれては困るため、自ら守れる力を教え込むべきだと稽古だけはスパルタであるためだった。

自分のためとわかるその稽古は厳しくとも皇子にとっては普段大事にされている以上の愛が感じられ、稽古はきつくとも至福の時間。けれど、勉強は苦手。大人になっても知るべきことは多くあるが、どうしても頭で覚えることにはとことん向いておらず、知識として入るのは興味を得たものだけ。学ぶことは好きだが、あくまで体で覚えることができるものに対してだけだった。

どこまでできるのか、外に慣れた頃から習いものに通わせたりした帝王。仕事の時間に被らなければ付きっきりで習わせていたものはピアノ、水泳、ダンスなど。ヤクザの一員らしくはなくとも興味を持ったもの全てをやらせてやりたいのは帝王の愛ゆえと興味。覚え尽くしてからはすぐ辞める始末だが。

ピアノは楽譜の見方は覚えられなかったし、耳コピができるわけでもないが、人の指の動きを一度見せてもらい、それを真似するだけで弾けるようになるという変わった覚え方をした。

水泳は泳ぎ方を真似するだけで50mも楽々。考えずにただ真似る行為はピアノと同じ。一時的に一度に物を覚えるのは得意なようで、それを真似さえすれば体が自然に覚えできるようになっている。

ダンスも以下同様。用は持続的に頭に知識を入れることが苦手なのが皇子。一時的ならば教科書丸暗記も得意な皇子だが、翌日には忘れている。ただし、体で覚えたことは忘れないようでピアノは弾いたことのある曲のメロディーがわかれば自然と弾けるし、なくても何か弾けと言われれば普通に弾けるが、曲名や楽譜を見せられてもそれのメロディーがわからなければ、何かわからないので弾けない。メロディーは頭で覚えなくとも音の振動を体が感じるからわかるらしい。直接とCDなどで振動に多少違いがあってもだいたいの振動は同じだからわかるのだ。曲名などは頭に入れなきゃいけない。その違いのようだ。よくわからない。

「ぼく、大人になったからもう勉強いいでしょ」

「大人でも勉強の日々だ」

「どうせ忘れちゃうのに」

「やることに意味がある。知識はあって困らないだろ」

「そうだけど・・・」

「大人なのは体だけか?」

「そんなことない!ぼくは大人だよ!」

「随分こだわるな」

「だってぼくが大人ならてーくんの仕事ついていけるよね?ぼく、強くなってきてるでしょ?」

「お前は俺の帰りを待てばいい。帰る場所があるから
生きようと思うんだからな。一緒にいてぇのは山々だが」

必死な様子の皇子を抱き締め、正直な言葉を伝う帝王に皇子はしがみつくように抱き締め返す。

「そっか、帰る場所にぼくがならなくちゃいけないんだね」

「ああ、お前は変わらずここにいろ。」

「うん」

「じゃあ、勉強だ」

「うわー!てーくんの鬼ー!」

大人になっても二人の愛に変わりはない。体の成長はしても、心は純粋。変わらない心に安心を覚える帝王。

その後セックスについて皇子から聞き、余計なことを言った舎弟たちに、さらなる躾がほどこされたとか。
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