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1章選ばれたのは令嬢らしからぬ令嬢でした
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「殿下、この度は申し訳ございません!」
「はは、私は構わないよ」
ルーベルトが意識を失い、ルーベルトが城に泊まる際使われる部屋に運ばれてからしばらくして婚活パーティーも幕を閉じての翌日。ネムリンとその父、ユールシーテ・トワーニ伯爵は第一王子直々にお呼ばれし、慌てて向かった。
ルーベルトを気絶させてしまったことはもちろん、ルドルクが開いた婚活パーティーでルドルクの友人並び側近でもある何の非もないルーベルトに暴力を奮い、婚活パーティーをめちゃくちゃにしてしまったことに対する謝罪がルドルクを目の前にしたとたん、発言の許可をすぐさまとりユールシーテが深々とはっきりした口調で謝罪したのは言うまでもない。
思わぬ出来事に驚き軽く混乱はしたルドルクであったが、まさかルーベルトが人前で令嬢の拳により気絶する日が来るなんてと、昨晩ひとりになってから思わず笑ってしまったルドルクは別にトワーニ伯爵たちを責める気は全くない。
寧ろ笑わしてくれてありがとうとお礼を言いたいくらいには思わぬ面白い出来事が好きなルドルク。さすがに言葉には出さないが。それでも笑顔で自分は気にしてないという言葉を与えるルドルクに、ユールシーテは少しばかり安堵した。
「そ、それで、ラヴィン公爵様はどちらに………」
「それがね、まだ起きてないんだ」
「そ、そんな、わわ、私、つ、ついに人を………!」
「ネムリン、あれほど人に触れる際には気を付けろと言ったのに!殿下、娘はわざとではないんです!どうか、処刑だけは!」
「………っ大丈夫、生きてるから落ち着いて」
ユールシーテの問いにまだルーベルトが目覚めてないと知るやいなや、ネムリンは口許を抑えてまるで人ひとり殺してしまったとばかりに青ざめる。釣られるように青ざめて、改めて許しを乞うユールシーテはルーベルトを既に殺したことが確定したかの様子で今にも倒れてしまいそうだ。
トワーニ伯爵たちの中で護衛は飾りでしかないとされるルーベルトがどれだけ非力に写っているのか、拳ひとつで死ぬはずがないだろうと思わず噴き出しそうになったルドルクだが、体面を保つために抑えて殺人は犯してないことを伝える。
とたんに青ざめた顔に生気が宿る。本気で拳ひとつで殺人が発生したと勘違いしていたのかとまた噴き出しそうになって抑えたルドルクだが、その様子に気づくものはいない辺り、ルドルクは王子としてのポーカーフェイスは中々のものだ。
「少しばかり頬は赤く腫れているけど、彼は丈夫だからね。身体に異常はないし、今は寝ているだけだよ」
「歯は折れていなかったのでしょうか?」
「歯が折れていたという言葉は、医師から聞いていないけど」
ルーベルトの状態を伝えてはまるで確信めいた問い方をするユールシーテに首を傾げながら答えるルドルク。その答えにぱあぁとユールシーテの雰囲気が明るくなってネムリンを見た。
「なんと!ネムリン、手加減ができるように!?」
「い、いえ、そそそんな高度なこと、ま、まだできません!あ、でも、最近ドアノブは、こ、壊しませんわ」
「確かに最近ドアノブの修理代請求書がない。無意識に手加減ができるようになったのでは?」
「そ、そうなのでしょうか……」
「話を邪魔するようで悪いのだけれど、ネムリン嬢は以前にもルーベルトみたく気絶させたお相手がいるのかな?」
正直何の話を?となんとなくわかりそうでありえない話に突っ込みたいルドルクではあるが、歯が折らした経験があるかのような言葉の素振りについて聞くことにしたルドルク。ユールシーテは少し恐縮しながらも答えた。
「じ、実は、以前、娘をバカにした子息がいまして、娘は相手にしなかったのですが、それにキレた子息が娘に話を聞けとばかりに腕を掴んだことがあったのです。人見知りの激しい娘は思わず驚いて自分の腕を掴む手を振り払い手を出してしまいました。殴られた子息は歯が折れ、吹っ飛んだ際に、振り払われた手の方の腕が思わぬ曲がり方をして複雑骨折という大怪我を負わせまして。さらに言えば一ヶ月の意識不明の重体というおまけつきです」
「それは………すごいね」
ルーベルトを気絶させた時点で只者ではないとは思っていたルドルクだが、現状は違えどルーベルトと同じ殴られ経験者で、自業自得とはいえルーベルト以上に悲惨となった子息の話にその言葉以外は返せなかった。
「もしかしたら規格外の彼だから頬が腫れるくらいで済んだのかもね。意識不明とまでは聞いてないからその内起きるだろうし………。彼ってたまに人間じゃないんじゃないかと思うときがあるからね」
友人とは思えない言葉だ。だが、その言葉は本心そのもの。防具を着た騎士相手に防具なしに剣を振るい、時に剣なしで武術ひとつで防具を着た騎士相手でも勝負に打ち勝てるルーベルトは確かに普通の人間ではないと言えるだろう。
そんなルーベルトだからより恐ろしい存在という噂が広まる。自重をしないのもまたルーベルトなので、ルドルクが言い渋ることはない。
「はは、私は構わないよ」
ルーベルトが意識を失い、ルーベルトが城に泊まる際使われる部屋に運ばれてからしばらくして婚活パーティーも幕を閉じての翌日。ネムリンとその父、ユールシーテ・トワーニ伯爵は第一王子直々にお呼ばれし、慌てて向かった。
ルーベルトを気絶させてしまったことはもちろん、ルドルクが開いた婚活パーティーでルドルクの友人並び側近でもある何の非もないルーベルトに暴力を奮い、婚活パーティーをめちゃくちゃにしてしまったことに対する謝罪がルドルクを目の前にしたとたん、発言の許可をすぐさまとりユールシーテが深々とはっきりした口調で謝罪したのは言うまでもない。
思わぬ出来事に驚き軽く混乱はしたルドルクであったが、まさかルーベルトが人前で令嬢の拳により気絶する日が来るなんてと、昨晩ひとりになってから思わず笑ってしまったルドルクは別にトワーニ伯爵たちを責める気は全くない。
寧ろ笑わしてくれてありがとうとお礼を言いたいくらいには思わぬ面白い出来事が好きなルドルク。さすがに言葉には出さないが。それでも笑顔で自分は気にしてないという言葉を与えるルドルクに、ユールシーテは少しばかり安堵した。
「そ、それで、ラヴィン公爵様はどちらに………」
「それがね、まだ起きてないんだ」
「そ、そんな、わわ、私、つ、ついに人を………!」
「ネムリン、あれほど人に触れる際には気を付けろと言ったのに!殿下、娘はわざとではないんです!どうか、処刑だけは!」
「………っ大丈夫、生きてるから落ち着いて」
ユールシーテの問いにまだルーベルトが目覚めてないと知るやいなや、ネムリンは口許を抑えてまるで人ひとり殺してしまったとばかりに青ざめる。釣られるように青ざめて、改めて許しを乞うユールシーテはルーベルトを既に殺したことが確定したかの様子で今にも倒れてしまいそうだ。
トワーニ伯爵たちの中で護衛は飾りでしかないとされるルーベルトがどれだけ非力に写っているのか、拳ひとつで死ぬはずがないだろうと思わず噴き出しそうになったルドルクだが、体面を保つために抑えて殺人は犯してないことを伝える。
とたんに青ざめた顔に生気が宿る。本気で拳ひとつで殺人が発生したと勘違いしていたのかとまた噴き出しそうになって抑えたルドルクだが、その様子に気づくものはいない辺り、ルドルクは王子としてのポーカーフェイスは中々のものだ。
「少しばかり頬は赤く腫れているけど、彼は丈夫だからね。身体に異常はないし、今は寝ているだけだよ」
「歯は折れていなかったのでしょうか?」
「歯が折れていたという言葉は、医師から聞いていないけど」
ルーベルトの状態を伝えてはまるで確信めいた問い方をするユールシーテに首を傾げながら答えるルドルク。その答えにぱあぁとユールシーテの雰囲気が明るくなってネムリンを見た。
「なんと!ネムリン、手加減ができるように!?」
「い、いえ、そそそんな高度なこと、ま、まだできません!あ、でも、最近ドアノブは、こ、壊しませんわ」
「確かに最近ドアノブの修理代請求書がない。無意識に手加減ができるようになったのでは?」
「そ、そうなのでしょうか……」
「話を邪魔するようで悪いのだけれど、ネムリン嬢は以前にもルーベルトみたく気絶させたお相手がいるのかな?」
正直何の話を?となんとなくわかりそうでありえない話に突っ込みたいルドルクではあるが、歯が折らした経験があるかのような言葉の素振りについて聞くことにしたルドルク。ユールシーテは少し恐縮しながらも答えた。
「じ、実は、以前、娘をバカにした子息がいまして、娘は相手にしなかったのですが、それにキレた子息が娘に話を聞けとばかりに腕を掴んだことがあったのです。人見知りの激しい娘は思わず驚いて自分の腕を掴む手を振り払い手を出してしまいました。殴られた子息は歯が折れ、吹っ飛んだ際に、振り払われた手の方の腕が思わぬ曲がり方をして複雑骨折という大怪我を負わせまして。さらに言えば一ヶ月の意識不明の重体というおまけつきです」
「それは………すごいね」
ルーベルトを気絶させた時点で只者ではないとは思っていたルドルクだが、現状は違えどルーベルトと同じ殴られ経験者で、自業自得とはいえルーベルト以上に悲惨となった子息の話にその言葉以外は返せなかった。
「もしかしたら規格外の彼だから頬が腫れるくらいで済んだのかもね。意識不明とまでは聞いてないからその内起きるだろうし………。彼ってたまに人間じゃないんじゃないかと思うときがあるからね」
友人とは思えない言葉だ。だが、その言葉は本心そのもの。防具を着た騎士相手に防具なしに剣を振るい、時に剣なしで武術ひとつで防具を着た騎士相手でも勝負に打ち勝てるルーベルトは確かに普通の人間ではないと言えるだろう。
そんなルーベルトだからより恐ろしい存在という噂が広まる。自重をしないのもまたルーベルトなので、ルドルクが言い渋ることはない。
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