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5章恋を成就させるのはどっちですか?食べられるクッキーvs食べられないクッキー
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ルドルクが倒れに倒れ、ようやくルーベルトの強制感は取り止められルドルクが落ち着いてきた今日この頃。今ルーベルトは幸福の絶頂だ。
「る、ルト様」
「なんだ?」
「ち、近くはありませんか?」
「そうだろうか?」
「い、息がその、耳に………っ」
ネムリンを背から抱くように覆い被さるルーベルト。あまりの近さにネムリンは耳まで真っ赤である。ルーベルトは表情にこそ出ないが、胸は激しく高鳴りそれ以上に幸せな気分である。
想い人の可愛い姿を見られ、温もりを感じられるのだから。ちなみにこの二人は廊下の壁の角付近でいちゃついていた。
何故か?
二人はルドルクとアクニーの行く末を見守っているのだ。
ついでに言おう。アクニーもルドルクも二人に気づいているし、寧ろ気づかない方がおかしい。そんな二人は無言だったが…………。
「陛下、お話は違うところでいたしませんか」
さすがにこのままいればアクニーはルーベルトに突撃してしまいそうだった。だが、さすがに色々やらかしている手前ルドルクを無視して行くわけにはいけないことをアクニーは理解している。
何故陛下が私をとアクニーなりに不安が実はある。何せアクニーはクッキーでルドルクを気絶させているのだ。一度ならず二度までも。
「そ、そうだね」
「あの………大丈夫ですか?凄く真っ青ですけれど」
しかし、そんな不安とは別にルドルクの様子がおかしくアクニーはそちらも気になっていた。
「し、仕事が、その、忙しくてね」
「身体も震えています。体調が悪いのですか?」
「そそ、そんなことは」
不安を余所に心配そうに見てしまうほどルドルクはガクブルと震えていた。ルドルク自身も何故身体がここまで震えているのだろうと疑問に感じるほどに震えていた。
しかもアクニーと目が合わせられない。
(これが恋による緊張、だろうか)
なんて思う今のルドルクは正常じゃない。実はまだサギーシのことを引きずっている。あくまでショックな出来事としてだが。
彼は恐怖を恋とルーベルトに言われ、トラウマの怖さから来る震えを緊張と勘違いしている。普段通りの彼なら冷静になればわかるだろうに、今のルドルクは可哀想なことにルーベルトを信じてしまっていた。
今のルドルクを支えるのは自分がこんな状態なのに後ろでいちゃつく様子のわかる二人への怒りである。特にルーベルト。
明らかにちらっと勇気を持ってアクニーを見たとき目線はルドルクに向いていなかった。その後ろへ目線が行っているのがちらっと見ただけでわかった。
何より声が丸聞こえである。気配を消して尾行など得意なはずのルーベルトがネムリンがいるだけで寧ろ存在感は増し、見えていなくてもなんとなく何をしているのか想像できてしまうものだ。
(なんで、アクニー嬢の見える位置なのかな!?)
違うことを考えることで震えを抑えようとルドルクは必死である。何故ネムリンがいるのかもルドルクには疑問だが、ルーベルトがただネムリンを愛でたかっただけに過ぎないなと考え付くのに頭を使う必要はなかった。
「へい………」
「うわあっ」
「陛下!?」
ルドルクはアクニーの前で落ち着こうと必死すぎていつの間にかアクニーがかなり近くにいたことに驚いて尻餅をついた。なんと情けないことだろうか。
慌てたのはアクニーであり、助け起こそうと手を伸ばしたが…………。
「ひぃっ」
パシンとアクニーの手を思わずルドルクは払ってしまった。わざとではなく、完全に無意識に。
「あ………」
アクニーはそれに驚いて、すぐに泣きそうな表情になった。振り払われた手をもうひとつの手で押さえて。
「あ、これは………」
はっとしたルドルクはさすがに助け起こそうとしてくれる令嬢に対する態度ではなかったと慌てる。何故こんなことをしてしまったのかルドルクは混乱もした。
けど、アクニーからすれば明らかだった。
(陛下は私を怖がっていた………)
そうルドルクは無意識にアクニーを恐怖で顔がひきつった表情を見せていたのだ。例えネムリンほどでなくも身体能力が高いアクニーだとしても中身は女の子。
精神まで強靭ではいられない。だからこそ男性に怖がられる自分が悲しくなった。
(私はネムリン嬢みたいに人を助けられる力がほしかっただけなのに)
怖がられても人を助けようとするネムリンの精神にアクニーは憧れていたのだとネムリンに何故執着するのかわかったあの日。そのからというもののネムリンの真似をしてきたが、アクニーは元々不器用な部分があり人を怪我させてしまったりして理想とは真逆になっていた。
その被害者のひとりにルドルクも含まれている。
兵たちの中には笑って許してくれる人もいれば、許しの言葉を出しながら引くように遠ざかる人もいた。ネムリンは感情的にならなければ人を傷つけるようなことはないのだ。
アクニーは人を傷つけてしかいない。それが最近の悩みだった。そしてついに怯えさせてしまった。しかも国の頂点に立つ王を。
「ごめ、なさい」
その事実にまるで子供のようにアクニーの目からは涙が溢れ出した。
「る、ルト様」
「なんだ?」
「ち、近くはありませんか?」
「そうだろうか?」
「い、息がその、耳に………っ」
ネムリンを背から抱くように覆い被さるルーベルト。あまりの近さにネムリンは耳まで真っ赤である。ルーベルトは表情にこそ出ないが、胸は激しく高鳴りそれ以上に幸せな気分である。
想い人の可愛い姿を見られ、温もりを感じられるのだから。ちなみにこの二人は廊下の壁の角付近でいちゃついていた。
何故か?
二人はルドルクとアクニーの行く末を見守っているのだ。
ついでに言おう。アクニーもルドルクも二人に気づいているし、寧ろ気づかない方がおかしい。そんな二人は無言だったが…………。
「陛下、お話は違うところでいたしませんか」
さすがにこのままいればアクニーはルーベルトに突撃してしまいそうだった。だが、さすがに色々やらかしている手前ルドルクを無視して行くわけにはいけないことをアクニーは理解している。
何故陛下が私をとアクニーなりに不安が実はある。何せアクニーはクッキーでルドルクを気絶させているのだ。一度ならず二度までも。
「そ、そうだね」
「あの………大丈夫ですか?凄く真っ青ですけれど」
しかし、そんな不安とは別にルドルクの様子がおかしくアクニーはそちらも気になっていた。
「し、仕事が、その、忙しくてね」
「身体も震えています。体調が悪いのですか?」
「そそ、そんなことは」
不安を余所に心配そうに見てしまうほどルドルクはガクブルと震えていた。ルドルク自身も何故身体がここまで震えているのだろうと疑問に感じるほどに震えていた。
しかもアクニーと目が合わせられない。
(これが恋による緊張、だろうか)
なんて思う今のルドルクは正常じゃない。実はまだサギーシのことを引きずっている。あくまでショックな出来事としてだが。
彼は恐怖を恋とルーベルトに言われ、トラウマの怖さから来る震えを緊張と勘違いしている。普段通りの彼なら冷静になればわかるだろうに、今のルドルクは可哀想なことにルーベルトを信じてしまっていた。
今のルドルクを支えるのは自分がこんな状態なのに後ろでいちゃつく様子のわかる二人への怒りである。特にルーベルト。
明らかにちらっと勇気を持ってアクニーを見たとき目線はルドルクに向いていなかった。その後ろへ目線が行っているのがちらっと見ただけでわかった。
何より声が丸聞こえである。気配を消して尾行など得意なはずのルーベルトがネムリンがいるだけで寧ろ存在感は増し、見えていなくてもなんとなく何をしているのか想像できてしまうものだ。
(なんで、アクニー嬢の見える位置なのかな!?)
違うことを考えることで震えを抑えようとルドルクは必死である。何故ネムリンがいるのかもルドルクには疑問だが、ルーベルトがただネムリンを愛でたかっただけに過ぎないなと考え付くのに頭を使う必要はなかった。
「へい………」
「うわあっ」
「陛下!?」
ルドルクはアクニーの前で落ち着こうと必死すぎていつの間にかアクニーがかなり近くにいたことに驚いて尻餅をついた。なんと情けないことだろうか。
慌てたのはアクニーであり、助け起こそうと手を伸ばしたが…………。
「ひぃっ」
パシンとアクニーの手を思わずルドルクは払ってしまった。わざとではなく、完全に無意識に。
「あ………」
アクニーはそれに驚いて、すぐに泣きそうな表情になった。振り払われた手をもうひとつの手で押さえて。
「あ、これは………」
はっとしたルドルクはさすがに助け起こそうとしてくれる令嬢に対する態度ではなかったと慌てる。何故こんなことをしてしまったのかルドルクは混乱もした。
けど、アクニーからすれば明らかだった。
(陛下は私を怖がっていた………)
そうルドルクは無意識にアクニーを恐怖で顔がひきつった表情を見せていたのだ。例えネムリンほどでなくも身体能力が高いアクニーだとしても中身は女の子。
精神まで強靭ではいられない。だからこそ男性に怖がられる自分が悲しくなった。
(私はネムリン嬢みたいに人を助けられる力がほしかっただけなのに)
怖がられても人を助けようとするネムリンの精神にアクニーは憧れていたのだとネムリンに何故執着するのかわかったあの日。そのからというもののネムリンの真似をしてきたが、アクニーは元々不器用な部分があり人を怪我させてしまったりして理想とは真逆になっていた。
その被害者のひとりにルドルクも含まれている。
兵たちの中には笑って許してくれる人もいれば、許しの言葉を出しながら引くように遠ざかる人もいた。ネムリンは感情的にならなければ人を傷つけるようなことはないのだ。
アクニーは人を傷つけてしかいない。それが最近の悩みだった。そしてついに怯えさせてしまった。しかも国の頂点に立つ王を。
「ごめ、なさい」
その事実にまるで子供のようにアクニーの目からは涙が溢れ出した。
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