(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

2章(真面目版･名前変更に伴い話修正もあり)悪役令嬢の転生先

2～？？？視点～

「今日の訓練はここまでだ」

「はい、ありがとうございます」

痛む身体に鞭打って礼を言えば私を鍛えてくれている師匠は怪訝そうに私を見る。

「まだ成人すらしてない癖によく礼ができるな。成人したやつでも立つことがままならないメニューのはずだが」

確かに立つだけでも足は震えるし、今にも崩れそうだ。そう思うならさっさと去ってほしいものだけど。

「守るものがいるかいないかの違いかと。私は誰よりも守りたい人がいます」

「守りたい人ね………だが、今はいないんだろう？」

含むように言う師匠に対して下手な反応を見せることなく師匠にしっかり視線を合わせて言う。

「はい、見つかっておりません」

そう、私の守りたい人はいるがまだ見つかっていない。

「いるかもわからない存在を守るために頑張るとは難儀なものだ。お前なら国のために騎士を勤めれば出世も夢じゃないだろう」

「いますよ、絶対に。出世も興味ありません」

決めつけるように言う師匠をここで初めて睨む。絶対にいるはずなのだ。私の記憶がそう叫んでいるのだから。

「惜しいことだ」

師匠はやれやれと言った表情だが本気でそうとは思っていないだろう。この世界に生まれてから14年、まだ成人まで後1年、私の探し人は見つかっていない。来年からはまた新学期が始まり学園に戻ることとなる。

探し人は今は亡きレヴェリー･ホープ。決して死んだ人を探している訳じゃない。私は5歳の時頭を打って前世の記憶を思い出した。混乱したし、次々と思い出す記憶に泣き叫んだ。

そして落ち着いた時に思ったのは転生したという事実。私が転生したというならば他の人も転生した人がいるのではと考えた。

きっと私のように姿形が違うだろう。探し出せるかわからないが、必ずいると前世の記憶が私に訴えるのだ。貴族か平民か、もしかしたらこの国にはいない異国人かもしれない。

考えたくはないが奴隷の可能性だってある。どれにしろ私は現世で誰よりも幸せにしたい人物がレヴェリーだ。どんな人物だろうとどんな立場でもいいから傍にいたい。

どんな立場でもいられる可能性を考えて闘う術を学んだ。それ以外にも執事として使用人の仕事を教えてもらうなどできることは全て。

勉学や貴族マナーに関しては前世の記憶をうまく使いながらできるだけ時間をとらないようにしたかったけれど、同じ世界で時代もわからないため一から勉強し直した。どんな立場かわからないからこそたくさんの可能性を考えて。

もちろん一番は医学を学んだ。次こそどんな状況でも助けられるように。あの時の私は何もできなかった………いや、しなかったのだから。次こそ誰よりもレヴェリーに頼られるように努力を惜しむことなどしない。

師匠に人生捨てる気かと怪訝な目で見られたとしても。私の人生はレヴェリーのためにあるのだ。

そんな私はまだレヴェリーに会える日が近いことを知らない。