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4章(真面目版)悪役令嬢の知らない想いと記憶~アムール(ロイエ)編~
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「そう、か………それは辛いな」
どうレヴェリーについて探ろうかと考えて数日経ったある日のこと。自分の部屋へ向かう途中父の声が聞こえてきた。とても悲痛といった普段の父から聞いたこともないような声に気がつけば僕は周囲に誰もいないのを確認して聞き耳を立てた。
「私は何もしてやれないっ!」
悔しげにどこか涙ぐもった大声にびくりとしてしまう。しかし、この声は明らかにホープ侯爵。侯爵家の馬車は見当たらなかったが、侯爵ひとりで来たのだろうか。
「落ち着け、グリーフ。お前の気持ちはわかるが………」
「わかるわけがない!健康な息子を持つお前が、未来が決まった娘を持つ私の気持ちなど!何もしてやれないどころか余命はだんだん縮まるばかり!これじゃあ結婚もできずにレヴェリーは死んでしまう!」
レヴェリーが死ぬ?侯爵は何を言っているのか、あの日聞いた言葉以上に意味がわからなかった。いや、理解したくないと僕の心が叫んでいる。
「すまない、無神経だった。落ち着け、誰かに聞かれたい訳じゃないだろう」
「………っああ、すまない。公爵たる上の身分に無礼にも程があるな」
レヴェリーについて話してほしいというのに、落ち着きを取り戻した侯爵からそれ以上続きの言葉は出ず、父に気安い感じで謝っている。二人が友人だとは聞いてはいたが、思った以上に二人は親しいようだ。
今はそんなことより早く聞き耳を立てるのを人に見られる前にレヴェリーの話をしてほしいとは思う。
「身分を軽んじろとは言わないが、グリーフ、お前は私のことを身分で見ないでほしい。お前が辛いと私も辛いのだ。レヴェリー嬢のことは私も協力する。例えロイエの婚約者だからではない。お前の血の繋がった大切な娘だからこそだ」
父は随分と友人想いだったらしい。珍しい一面だ。レヴェリー嬢をよく気にしていたのは友人の娘だからなのか。まあ、父に知り合いや仕事上の関係者は多くとも友人は立場上できづらかったと言っていたし、大事にしたいのかもしれない。
「ありがとう………感謝する。私は君の友人という関係に甘えすぎだな」
「甘えているのは私の方だ。グリーフは私の気持ちを知った上で友人としてくれているのだから」
「それは………」
気のせいだろうか、父から怪しい気配がしなくもない。頼むから先にレヴェリーのことを話してほしい。頼むから。
「こんな立場でなければ私は君を選んでいただろう。決して妻や息子を愛していないわけではないが、どうしても私は君を優先してしまう」
どうしようか、聞いてはいけないものを聞いた気がする。普段優しくも厳しい父からあんな甘い声…………知りたくなかった。
「わ、私が愛しているのは妻と娘だけだ!貴方を嫌いとまでは言わないが………」
「わかっているよ。ロイエを通じて私は君の娘の義父になれるのを存外楽しみにしている。だからレヴェリー嬢の余命などなくしてしまえるよう努力しよう。まだ未来はわからないのだから。きっとロイエもレヴェリー嬢を支えてくれる」
余命………?レヴェリーの?父の思わぬ告白以上にその言葉は僕の頭を埋め尽くした。
「そう、だな。だが、どうしようもないこともある。そのときロイエ様を悲しませる結果にもなるだろう。それがトラウマにでもなってロイエ様の人生まで壊してしまったらと思うと私はロイエ様にレヴェリーだけを愛してほしいとは言えない」
「最近個人的に会わせないのはそれが理由か」
「ああ………レヴェリーに幸せになってほしい。だが、果たしてレヴェリーだけの幸せのために君たち家族を巻き込んでしまっていいのかと私は………!」
「グリーフ………」
これ以上は知る必要なしと判断して元々向かっていた部屋へ戻る。混乱した僕はその日それ以上考えたくないと現実逃避し、ベッドに埋もれて眠りにつく。眠る前に頭に思い浮かんだのは少し痩せたレヴェリーの姿だった。
どうレヴェリーについて探ろうかと考えて数日経ったある日のこと。自分の部屋へ向かう途中父の声が聞こえてきた。とても悲痛といった普段の父から聞いたこともないような声に気がつけば僕は周囲に誰もいないのを確認して聞き耳を立てた。
「私は何もしてやれないっ!」
悔しげにどこか涙ぐもった大声にびくりとしてしまう。しかし、この声は明らかにホープ侯爵。侯爵家の馬車は見当たらなかったが、侯爵ひとりで来たのだろうか。
「落ち着け、グリーフ。お前の気持ちはわかるが………」
「わかるわけがない!健康な息子を持つお前が、未来が決まった娘を持つ私の気持ちなど!何もしてやれないどころか余命はだんだん縮まるばかり!これじゃあ結婚もできずにレヴェリーは死んでしまう!」
レヴェリーが死ぬ?侯爵は何を言っているのか、あの日聞いた言葉以上に意味がわからなかった。いや、理解したくないと僕の心が叫んでいる。
「すまない、無神経だった。落ち着け、誰かに聞かれたい訳じゃないだろう」
「………っああ、すまない。公爵たる上の身分に無礼にも程があるな」
レヴェリーについて話してほしいというのに、落ち着きを取り戻した侯爵からそれ以上続きの言葉は出ず、父に気安い感じで謝っている。二人が友人だとは聞いてはいたが、思った以上に二人は親しいようだ。
今はそんなことより早く聞き耳を立てるのを人に見られる前にレヴェリーの話をしてほしいとは思う。
「身分を軽んじろとは言わないが、グリーフ、お前は私のことを身分で見ないでほしい。お前が辛いと私も辛いのだ。レヴェリー嬢のことは私も協力する。例えロイエの婚約者だからではない。お前の血の繋がった大切な娘だからこそだ」
父は随分と友人想いだったらしい。珍しい一面だ。レヴェリー嬢をよく気にしていたのは友人の娘だからなのか。まあ、父に知り合いや仕事上の関係者は多くとも友人は立場上できづらかったと言っていたし、大事にしたいのかもしれない。
「ありがとう………感謝する。私は君の友人という関係に甘えすぎだな」
「甘えているのは私の方だ。グリーフは私の気持ちを知った上で友人としてくれているのだから」
「それは………」
気のせいだろうか、父から怪しい気配がしなくもない。頼むから先にレヴェリーのことを話してほしい。頼むから。
「こんな立場でなければ私は君を選んでいただろう。決して妻や息子を愛していないわけではないが、どうしても私は君を優先してしまう」
どうしようか、聞いてはいけないものを聞いた気がする。普段優しくも厳しい父からあんな甘い声…………知りたくなかった。
「わ、私が愛しているのは妻と娘だけだ!貴方を嫌いとまでは言わないが………」
「わかっているよ。ロイエを通じて私は君の娘の義父になれるのを存外楽しみにしている。だからレヴェリー嬢の余命などなくしてしまえるよう努力しよう。まだ未来はわからないのだから。きっとロイエもレヴェリー嬢を支えてくれる」
余命………?レヴェリーの?父の思わぬ告白以上にその言葉は僕の頭を埋め尽くした。
「そう、だな。だが、どうしようもないこともある。そのときロイエ様を悲しませる結果にもなるだろう。それがトラウマにでもなってロイエ様の人生まで壊してしまったらと思うと私はロイエ様にレヴェリーだけを愛してほしいとは言えない」
「最近個人的に会わせないのはそれが理由か」
「ああ………レヴェリーに幸せになってほしい。だが、果たしてレヴェリーだけの幸せのために君たち家族を巻き込んでしまっていいのかと私は………!」
「グリーフ………」
これ以上は知る必要なしと判断して元々向かっていた部屋へ戻る。混乱した僕はその日それ以上考えたくないと現実逃避し、ベッドに埋もれて眠りにつく。眠る前に頭に思い浮かんだのは少し痩せたレヴェリーの姿だった。
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