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6章(真面目版)もうひとつの悪役令嬢~メモーリア・タナカ編~

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メモーリア・シンフーは生まれながらに弱くて人と比べると髪も肌も白い。それでも異質と思われるというのに目は赤く、親に似ないその姿を気味悪く思うものもいた。

それでもメモーリアは幸せそのものだった。………。

「おぉ、リアが立ったぞ!」

「幼いとはいえ人ですから、立つのは当たり前です」

「かぁたま?」

「そ、そんな目で見られても………っべ、別に褒めないとは言ってないでしょう!」

立っただけで大袈裟に喜ぶ父ときつい態度をとりながらも頭を優しく撫でてくれる母。それを見守る父と母が私の傍にいることを認めた使用人。

の転生は、小さな世界でメモーリアに生まれたその時から優しい幸せというものを教えてくれた。

そんな幸せな日々を過ごしてついに学園に行くことになり私はそこでタナカと出会った。

「大丈夫ですか?」

「え?」

それは入学式のこと。学園に来るまでに日に当たり過ぎたせいか、あまり家から出てないために出た疲れのせいか、日陰で休んでいた時にタナカが声をかけてくれたのだ。

帽子を被りサングラスをして口許まで隠し、異質とも言える私は視線こそ集まるもののまさか声をかけられるとは思わず驚きの声をあげる。

「気分が優れないようなら保健室行きますか?」

同じくらいの背でまだ幼いというのにすらすらとした言葉遣いと令嬢を気遣えるそれは、まだ幼い私にとって大人のように頼もしく思えた。

結局その日はどうしても入学式に出たいと保健室には行かず、出たわけだけど。その間タナカが教師に何か言ったのか、私の隣に座ることになったと笑って言って何かあれば言ってほしいと最後まで気遣ってくれた。

その話をすれば父は嬉しそうに笑い、知らぬ間にタナカとコンタクトをとり、私をタナカの婚約者にしていたことには驚いたものだわ。

何よりタナカは私より身分が高いことを自己紹介の際に知ったからこそ、そんな人が何故私を選んでくれたの?と思うのは仕方ない。タナカへの令嬢の視線は、タナカが歩くだけで蕩けるような幼いながらに女の顔をしていたのだから。

婚約者にするための打診をする人が多くてもなんら不思議ではない人。

でも選ばれたことは素直に嬉しかった。婚約者になったと報告された時にはタナカへの好意は学園内では一番だったから。それが恋であったかはともかく。

婚約者になる前、なった時もタナカは毎日というほど傍にいてくれて学園で友達ひとりできない私には心強かった。

「メリア、好きだよ」

「ありがとうございます」

でもそれ以上に婚約者になってから伝えられる好意の言葉を好意を表す言葉で返せないことに私は気がついてタナカに対して申し訳なさが積み重なる日々。

私も好きだと素直に伝えようと何度もした。だが、その度に酷く喉がつっかえたように、その言葉を言わせまいと邪魔するように頭が痛む。

そしてついにそれでもと諦めずタナカへの好意を伝えようとして私は10の年に原因不明で倒れ意識を失い、1ヶ月経つその日まで目を覚ますことはなかった。
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