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1章泣く子には頭を撫でてあげましょう
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「なんで・・・っあぐやぐなのぉ・・・っ」
ぼろぼろとひとり、暗い部屋で泣くのは幼い少女。少女の名はミーア・ルシアーノ。つい昨日まで熱に魘されていた。
そして不幸か幸か、少女は前世の記憶を思い出してしまったのだ。結果、少女は自分の未来を知り、熱が下がって起きた今、自分の姿を見て泣くしかない。元々前世で泣き虫だったのが、影響した結果だ。
ここはRPGも兼ねた乙女ゲーム、戦って恋愛もする世界。少女こと、ミーアは、この世界の悪役令嬢であり、この乙女ゲームのラスボス魔王を召喚できてしまう存在だ。
話としては、幼くありながらも賢い悪役令嬢ミーアは、『悪魔召喚』を知って魔王を召喚してしまう。悪魔召喚は悪魔によって3つの願いが叶えられる。ミーアはひとつ目の願いを言い、その魔王はミーアの世話役となった。
『わたしをひとりにしないで』
そんな幼い子供の願い事。悪役令嬢になったミーアには物凄く気持ちが今ならわかる。家でも外でも黒髪を持つミーアは疎まれる存在で、周囲は冷たいからこそ、ミーアに最低限の生活はさせてもらえても、優しくしてくれる人物はいないからだ。
前世から寂しがり屋な前世持ちのミーアは、前世の記憶を持った今、周囲が向ける視線を直に浴びることを考え、余計涙した。
しばらくはそれで満足したミーアだったが、次第に何もしてない自分が何故疎まれると考え始め、ならば疎まれる存在になってやろうと復讐を考えた。
『誰にも負けない力がほしい』
結果怪我人や心を病むものが続出した。そんな悲惨な状況で現れたのがヒロイン。彼女はミーアと違い、大天使と契約しており無条件で癒しの力を持っていた。おかげで怪我人も心を病ませていた人たちも元気になり、一気に人気者へ。
全く自分と正反対のヒロインにミーアは嫉妬した。しかも魔王と互角とも言える大天使に魔王の願いの力は弱まる。それでも嫌がらせには使えたため、それでミーアも我慢できていた。魔王から悪魔の囁きを聞くまでは。
『俺もあいつに乗り換えようかな』
ミーアにとってたったひとりの味方であり、身内。なんなら、ミーアは魔王に惚れていた。それさえも奪うのかとミーアが恨んだ先はヒロインで、最後の願いを口にした。
『あいつに痛い目を見せて!』
魔王は願いを叶えた。ヒロインを怪我させることで。すぐ癒しの力で癒えたとはいえ。結果願いを叶えきった魔王は自由になり、世界を支配しようと動き出す。それをヒロインやヒロインの攻略者たちが力を合わせて倒し、ミーアは禁術とされていた悪魔召喚をし、魔王を生み出したことで世界を危機にしたという大罪人とされ処刑された。
ヒロインは好感度の高いキャラと婚約、最後は結婚しめでたしという話である。
魔王を召喚したら例え魔王を自由にしなかったにしても、禁術を使った時点で罪人。しかし、ゲーム仕様かミーアに天使は召喚できない。
何故わかるか、試したからだ。ゲームでのミーアと同じく、今のミーアも未来を知っていたとしても周囲の冷たさに耐えられる気はせず、鏡を見た後、ミーアの知識を頼りにやってはみたが無理だった。ちなみに今わかる通り、現在ミーアの状況は悪魔召喚前の時期であり、既にミーアは悪魔召喚の知識がある。
天使召喚の知識もあるだけに、ゲームのミーアも試しはしたのかと改めて知った瞬間だった。最初から禁術に染まる気はなかったのに、それぐらいにひとりが耐えきれなかったことにやはりミーアの涙は止まらない。
ミーアの気持ちがダイレクトに感じてしまっているのが一番の理由だろう。
今ある寂しさ解消か未来の死をとるか。二つにひとつ。だが、記憶のミーアに向けられた冷たい視線だけで止まりかけた涙が枯れるのを知らぬとばかりに、またどぱーっと流れ出す。とりあえず、今はひとりじゃなくなる方法を選ぼうと悪魔召喚をしちゃったミーア。
「まおうしょうかんしちゃったあぁぁっうわあぁぁんっ」
出てきた威厳ある姿の頭の両端に角の生えた青年姿の魔王に、ミーアの涙は止まらない。先ほどから一度も止まってないが。
「人間、願いを・・・って泣くのをやめろ」
「うわあぁぁん」
ミーアは泣く。
「おい」
「まおうがあぁっ」
まだ泣く。
「何故、知っている」
「ふえぇぇんっ」
さらに泣く。
「・・・ほーら、怖くないぞー・・・」
「うう・・・っえぐっ」
ついに態度を改め、目線を合わせて泣き止ませようと笑顔を見せる魔王に、ついにミーアは少し泣き止んだ。
「魔王は怖くない、怖くない」
魔王、話にならないため必死だ。召喚されたからには魔王といえど逃げられないため、話を進めるためには仕方ない。
「まおうは・・・こわい。うらぎる、から」
「じゃあ、何故召喚した」
「おごっだあぁぁっ」
「だあああっ!怒ってない!怒ってない!」
ついいらっとして素に戻った魔王、振り出しに戻ったことを後悔した瞬間だった。
ぼろぼろとひとり、暗い部屋で泣くのは幼い少女。少女の名はミーア・ルシアーノ。つい昨日まで熱に魘されていた。
そして不幸か幸か、少女は前世の記憶を思い出してしまったのだ。結果、少女は自分の未来を知り、熱が下がって起きた今、自分の姿を見て泣くしかない。元々前世で泣き虫だったのが、影響した結果だ。
ここはRPGも兼ねた乙女ゲーム、戦って恋愛もする世界。少女こと、ミーアは、この世界の悪役令嬢であり、この乙女ゲームのラスボス魔王を召喚できてしまう存在だ。
話としては、幼くありながらも賢い悪役令嬢ミーアは、『悪魔召喚』を知って魔王を召喚してしまう。悪魔召喚は悪魔によって3つの願いが叶えられる。ミーアはひとつ目の願いを言い、その魔王はミーアの世話役となった。
『わたしをひとりにしないで』
そんな幼い子供の願い事。悪役令嬢になったミーアには物凄く気持ちが今ならわかる。家でも外でも黒髪を持つミーアは疎まれる存在で、周囲は冷たいからこそ、ミーアに最低限の生活はさせてもらえても、優しくしてくれる人物はいないからだ。
前世から寂しがり屋な前世持ちのミーアは、前世の記憶を持った今、周囲が向ける視線を直に浴びることを考え、余計涙した。
しばらくはそれで満足したミーアだったが、次第に何もしてない自分が何故疎まれると考え始め、ならば疎まれる存在になってやろうと復讐を考えた。
『誰にも負けない力がほしい』
結果怪我人や心を病むものが続出した。そんな悲惨な状況で現れたのがヒロイン。彼女はミーアと違い、大天使と契約しており無条件で癒しの力を持っていた。おかげで怪我人も心を病ませていた人たちも元気になり、一気に人気者へ。
全く自分と正反対のヒロインにミーアは嫉妬した。しかも魔王と互角とも言える大天使に魔王の願いの力は弱まる。それでも嫌がらせには使えたため、それでミーアも我慢できていた。魔王から悪魔の囁きを聞くまでは。
『俺もあいつに乗り換えようかな』
ミーアにとってたったひとりの味方であり、身内。なんなら、ミーアは魔王に惚れていた。それさえも奪うのかとミーアが恨んだ先はヒロインで、最後の願いを口にした。
『あいつに痛い目を見せて!』
魔王は願いを叶えた。ヒロインを怪我させることで。すぐ癒しの力で癒えたとはいえ。結果願いを叶えきった魔王は自由になり、世界を支配しようと動き出す。それをヒロインやヒロインの攻略者たちが力を合わせて倒し、ミーアは禁術とされていた悪魔召喚をし、魔王を生み出したことで世界を危機にしたという大罪人とされ処刑された。
ヒロインは好感度の高いキャラと婚約、最後は結婚しめでたしという話である。
魔王を召喚したら例え魔王を自由にしなかったにしても、禁術を使った時点で罪人。しかし、ゲーム仕様かミーアに天使は召喚できない。
何故わかるか、試したからだ。ゲームでのミーアと同じく、今のミーアも未来を知っていたとしても周囲の冷たさに耐えられる気はせず、鏡を見た後、ミーアの知識を頼りにやってはみたが無理だった。ちなみに今わかる通り、現在ミーアの状況は悪魔召喚前の時期であり、既にミーアは悪魔召喚の知識がある。
天使召喚の知識もあるだけに、ゲームのミーアも試しはしたのかと改めて知った瞬間だった。最初から禁術に染まる気はなかったのに、それぐらいにひとりが耐えきれなかったことにやはりミーアの涙は止まらない。
ミーアの気持ちがダイレクトに感じてしまっているのが一番の理由だろう。
今ある寂しさ解消か未来の死をとるか。二つにひとつ。だが、記憶のミーアに向けられた冷たい視線だけで止まりかけた涙が枯れるのを知らぬとばかりに、またどぱーっと流れ出す。とりあえず、今はひとりじゃなくなる方法を選ぼうと悪魔召喚をしちゃったミーア。
「まおうしょうかんしちゃったあぁぁっうわあぁぁんっ」
出てきた威厳ある姿の頭の両端に角の生えた青年姿の魔王に、ミーアの涙は止まらない。先ほどから一度も止まってないが。
「人間、願いを・・・って泣くのをやめろ」
「うわあぁぁん」
ミーアは泣く。
「おい」
「まおうがあぁっ」
まだ泣く。
「何故、知っている」
「ふえぇぇんっ」
さらに泣く。
「・・・ほーら、怖くないぞー・・・」
「うう・・・っえぐっ」
ついに態度を改め、目線を合わせて泣き止ませようと笑顔を見せる魔王に、ついにミーアは少し泣き止んだ。
「魔王は怖くない、怖くない」
魔王、話にならないため必死だ。召喚されたからには魔王といえど逃げられないため、話を進めるためには仕方ない。
「まおうは・・・こわい。うらぎる、から」
「じゃあ、何故召喚した」
「おごっだあぁぁっ」
「だあああっ!怒ってない!怒ってない!」
ついいらっとして素に戻った魔王、振り出しに戻ったことを後悔した瞬間だった。
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