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4章予想外の出来事もいいように使いましょう
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「その教育はいるのか」
「学ぶことに無駄はありませんので」
あの日からミーアの一日に教育が加わった。学園に行くまでに時間は1年とないだけに出遅れ気味。とはいえ、ミーア本来は、ミーアの前世の知識から思った通り、覚えがいいため使用人たちにやる気を注いでしまったようだ。元々やる気に満ち溢れてはいたのだが。
最初こそ一般的な教育だと魔王は傍で見ていたが、やる気をさらに出してからは、ルシアーノ家の使用人は随分と変わり者が多いと、ミーア、魔王は実感した。
魔王もある程度なら教育に参加できるが、所詮は悪魔の身。ミーアに召喚されるまでは久しく人間界にはいなかったため、人間の教育で知らぬ知識があってもおかしくない。よって、償いも兼ねて任せていた。
しかし、やる気を上昇させてから一般的と思われる教育以外にも追加された教育に、さすがの魔王も疑問を覚えたのが先ほどの質問に戻る。
「それはそうだが、ミーアは令嬢だ。男性側の礼儀、ダンスレッスンまで覚える必要はないだろう」
もちろん令嬢ならではのマナーやダンスなども教育に入れられているが、男性側まで教える意味がわからない。躍り相手は侍女だが、ミーアを指導するのは侍従である。
「ルキ様、お言葉ですがミーア様は狙われやすい立場でございます。時に男装が役立つ時もあるでしょう」
「ないとおもうけど・・・」
「どんな時だ」
ミーアの前世の知識でも、ミーアが男装していたなんてこと、ゲームにはなかった。魔王は魔王でどういう自体を想定しているのかと呆れた。
「どちらにしろ、ミーア様は覚えがいいのでついでですよ」
「ミーアが嫌がらないならいい」
「いやではない、かな。でも、ま・・・るきはちかくにいてね・・・?」
「ああ」
一度任せたことにそれ以上文句を言う気はなく、魔王はミーアの気持ち次第とすることに。そんなミーアは嫌ではないようだが、使用人と泣かずに接することができるのは見える位置に魔王がいるこそ。
魔王と呼び掛けて直しつつ傍にいるように言えば、魔王の返事が聞こえ、ほっとするミーア。
ちなみに令嬢の教育と思えない教育はまだまだある。特に魔王がいつでも動けるようハラハラとしたのは護身術の教育。
まだ5歳なため大したことはしないが、あまりに本格的に教え始めているのがわかり、魔王は気が気でない。そんな中ミーアは、思ったより身体を動かすことが好きなことに気づき、護身術を編み込んだ剣術に近いものを習っている自覚なくその訓練に打ち込んだ。
ミーア本人が楽しんでいるどころか、やる気に満ちた一番の授業でもあるため、魔王は何も言えなかったが怪我ひとつないよう毎回目を光らせてスタンバっていることを、ミーアの教育者となった使用人たちは全員知っている。
またある日は薬物教育なんてものが追加された。
「これとこれを組み合わせると簡易な傷薬になります。どこにでも生えているような薬草の組み合わせなので覚えとくといいですよ」
「まず怪我をさせる気はないが」
「転ぶことなどして怪我することもありますでしょう。いつまで移動する度ミーア様を抱っこするおつもりですか?学園では大人は着いていけませんよ」
「ミーアから傍を離れる気はない」
「そう、ですか」
これに関して使用人が呆れた。しかし、使用人はルキが魔王であることを知らないし、魔法が使えるとも思っていないため、隠れてでもついていく気かと考えているから他ならない。
実際の魔王の考えは自ら魔法で姿を偽り、ミーアと同じ年として学園に入学するつもりでいる。姿を消してついていく方法もあるが、ミーアが魔王が見えず泣くかもしれないと考えてそうするつもりでいるだけにどこまでもミーアに対する配慮を怠らない。
これはこれで真実を知ったとしても使用人は呆れたことだろう。だが、なんだかんだミーアには呪い子という偏見で、酷いことをしてきた自覚が芽生えた使用人たちは、寧ろそれぐらい過保護な方がいいのかと思っている節もある。
「あ、ミーア様、もし襲われるようなことがあった時の投げ道具として麻痺薬の玉を常に作っておくといいですよ!作り方はですね・・・」
「お前たちは揃いも揃って何を教える気だ」
「死にはしない毒ですからミーア様が人殺しになることはありませんし、安全のためです。後は暗殺部隊が始末するだけですから」
「ただの使用人にしては物騒が過ぎないか?」
「一応です。解毒剤なんかや毒の症状についても勉強しましょうね」
「う、うん」
「・・・最近の人間はそんなことを覚える必要まであるのか?」
ミーアは貴族ってこんなことまで習うのかと思っていた教育とは違うなという戸惑いを見せる。しかし、ミーアの頭は気持ちいいくらいに知識を吸収していくだけにやりたくないとまでは思わない。
一方魔王は魔王で、知識を蓄えるのは悪いことではないとは思いながらも、ミーアにとっていい教育になっているのか疑問を抱くと同時に、何故使用人ごときがそれぞれ違う分野でそんな知識を持っているのかと、最近の人の進化にこそ疑問を覚える魔王だった。
「学ぶことに無駄はありませんので」
あの日からミーアの一日に教育が加わった。学園に行くまでに時間は1年とないだけに出遅れ気味。とはいえ、ミーア本来は、ミーアの前世の知識から思った通り、覚えがいいため使用人たちにやる気を注いでしまったようだ。元々やる気に満ち溢れてはいたのだが。
最初こそ一般的な教育だと魔王は傍で見ていたが、やる気をさらに出してからは、ルシアーノ家の使用人は随分と変わり者が多いと、ミーア、魔王は実感した。
魔王もある程度なら教育に参加できるが、所詮は悪魔の身。ミーアに召喚されるまでは久しく人間界にはいなかったため、人間の教育で知らぬ知識があってもおかしくない。よって、償いも兼ねて任せていた。
しかし、やる気を上昇させてから一般的と思われる教育以外にも追加された教育に、さすがの魔王も疑問を覚えたのが先ほどの質問に戻る。
「それはそうだが、ミーアは令嬢だ。男性側の礼儀、ダンスレッスンまで覚える必要はないだろう」
もちろん令嬢ならではのマナーやダンスなども教育に入れられているが、男性側まで教える意味がわからない。躍り相手は侍女だが、ミーアを指導するのは侍従である。
「ルキ様、お言葉ですがミーア様は狙われやすい立場でございます。時に男装が役立つ時もあるでしょう」
「ないとおもうけど・・・」
「どんな時だ」
ミーアの前世の知識でも、ミーアが男装していたなんてこと、ゲームにはなかった。魔王は魔王でどういう自体を想定しているのかと呆れた。
「どちらにしろ、ミーア様は覚えがいいのでついでですよ」
「ミーアが嫌がらないならいい」
「いやではない、かな。でも、ま・・・るきはちかくにいてね・・・?」
「ああ」
一度任せたことにそれ以上文句を言う気はなく、魔王はミーアの気持ち次第とすることに。そんなミーアは嫌ではないようだが、使用人と泣かずに接することができるのは見える位置に魔王がいるこそ。
魔王と呼び掛けて直しつつ傍にいるように言えば、魔王の返事が聞こえ、ほっとするミーア。
ちなみに令嬢の教育と思えない教育はまだまだある。特に魔王がいつでも動けるようハラハラとしたのは護身術の教育。
まだ5歳なため大したことはしないが、あまりに本格的に教え始めているのがわかり、魔王は気が気でない。そんな中ミーアは、思ったより身体を動かすことが好きなことに気づき、護身術を編み込んだ剣術に近いものを習っている自覚なくその訓練に打ち込んだ。
ミーア本人が楽しんでいるどころか、やる気に満ちた一番の授業でもあるため、魔王は何も言えなかったが怪我ひとつないよう毎回目を光らせてスタンバっていることを、ミーアの教育者となった使用人たちは全員知っている。
またある日は薬物教育なんてものが追加された。
「これとこれを組み合わせると簡易な傷薬になります。どこにでも生えているような薬草の組み合わせなので覚えとくといいですよ」
「まず怪我をさせる気はないが」
「転ぶことなどして怪我することもありますでしょう。いつまで移動する度ミーア様を抱っこするおつもりですか?学園では大人は着いていけませんよ」
「ミーアから傍を離れる気はない」
「そう、ですか」
これに関して使用人が呆れた。しかし、使用人はルキが魔王であることを知らないし、魔法が使えるとも思っていないため、隠れてでもついていく気かと考えているから他ならない。
実際の魔王の考えは自ら魔法で姿を偽り、ミーアと同じ年として学園に入学するつもりでいる。姿を消してついていく方法もあるが、ミーアが魔王が見えず泣くかもしれないと考えてそうするつもりでいるだけにどこまでもミーアに対する配慮を怠らない。
これはこれで真実を知ったとしても使用人は呆れたことだろう。だが、なんだかんだミーアには呪い子という偏見で、酷いことをしてきた自覚が芽生えた使用人たちは、寧ろそれぐらい過保護な方がいいのかと思っている節もある。
「あ、ミーア様、もし襲われるようなことがあった時の投げ道具として麻痺薬の玉を常に作っておくといいですよ!作り方はですね・・・」
「お前たちは揃いも揃って何を教える気だ」
「死にはしない毒ですからミーア様が人殺しになることはありませんし、安全のためです。後は暗殺部隊が始末するだけですから」
「ただの使用人にしては物騒が過ぎないか?」
「一応です。解毒剤なんかや毒の症状についても勉強しましょうね」
「う、うん」
「・・・最近の人間はそんなことを覚える必要まであるのか?」
ミーアは貴族ってこんなことまで習うのかと思っていた教育とは違うなという戸惑いを見せる。しかし、ミーアの頭は気持ちいいくらいに知識を吸収していくだけにやりたくないとまでは思わない。
一方魔王は魔王で、知識を蓄えるのは悪いことではないとは思いながらも、ミーアにとっていい教育になっているのか疑問を抱くと同時に、何故使用人ごときがそれぞれ違う分野でそんな知識を持っているのかと、最近の人の進化にこそ疑問を覚える魔王だった。
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