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スープを飲んだ後、程よいタイミングで卵粥をウランとは別のメイドが持ってきてくれて、同じようにウランが食べさせてくれたものの半分以上残してしまった。

「…………」

はくはくと食べれないことに対して謝る素振りをすれば、いいえとウランが首を横に振る。

「お嬢様はしばらく眠っておりましたから、食が細くなっていてもおかしくはありません」

「………?」

そういえば私はどれだけ眠っていたのだろう?ふと疑問に感じれば、ウランはその疑問を悟ってくれたようだ。

「お嬢様が眠ってた期間はちょうど1ヶ月です」

「!?」

身体に痛みが残っているからそこまで長くはないと思っていたが、思った以上に眠っていたことに驚きを隠せない。

「一時期は危なかったものの、お医者様が全力を尽くしてくださった結果です。ただ……お嬢様には脊髄の損傷がありまして、それにより不完全麻痺が下半身に……。恐らく今も両足にしびれや痛みなどがあるかと思います。薬で抑えてはあるでしょうが、それでも痛みはすぐにはなくならないでしょう。それも治療を続ければよくはなるでしょうが、一生両足で歩くことは叶わないそうです。私が、私が代わって差し上げられたら………っ」

そんな悔しそうに言うウランを横目に、全身の痛みで足が動かないことに今言われて気がついた。そうか、私は歩けないのか。意外とそれに関しては悲しくはなかった。寧ろ都合よく感じたのだ。

「………」

だってこれを理由に王太子との関係を切れると思ったから。そもそも自殺するような王妃など誰も望まないだろう。しかも後遺症まで残した花嫁など、王命が撤回されてもおかしくはない。

「お嬢様……?」

だから、とんとんと悔しがるウランがこちらに気づくように指先で布団を軽く叩く。大した音ではないけれど、静かな空間のおかげで聞こえたのかウランがようやくこちらを向く。

「………ぁ……」

私は大丈夫。これなら婚約解消されるよね?と、寧ろ怪我の功名だと言いたい。なのに出るのは掠れた声だけ。そんな都合よく、出なくなった声がまた急に出るようになるなんてことはないようだ。

「お嬢様………今はおやすみください。無理して話さなくとも大丈夫ですから」

「………」

気を遣わせてしまった………。だけど、話せないのだからどうしようもない。ならば、今はウランの言う通り休むべきなのだろう。自分で思うより疲れているのかもしれない。休めば、また話せるようになる可能性だってある。

そう信じて私はウランの言うように休むことにした。散々眠っただろうに、瞼が落ちればすぐに眠れた。次起きたときには兄クラートも目が覚めるだろうか?

なんて、ふと兄のことを頭に過らせながら私は意識を暗闇の底に落とした。まさか翌日その兄クラートがとんでもないことになっているとは思いもせずに。
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