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「あからさまな罠だったけど、随分あっさりかかるもんだな」

罠……?スディはいつの間にか新聞をくしゃくしゃにしてポケットに入れていたのか、にやりと笑ってそのくしゃくしゃにした新聞をユリアに見せる。

「スディ」

「怒ってるか?だが、お前はやりすぎた。闇の存在ならこの教会に不利な状況で、姿を現すと思ったんだ。闇の存在の天敵は教会…」

「よくやったわ!まさか、まさか聖王に会えるなんて!隠しキャラならイケメン間違いなし!ヒロインである私は聖女なのよね?これ以上の権力は存在しないってネットじゃ書かれてたから、これでようやく私の世界が完全になるわ!」

「………は?聖女………?」

ユリアの言動はやはり聖王の話に関して曖昧なようだ。記憶が曖昧なだけか、最後までの話を本当に知らないか。ネタバレを読んでいたとして結末まで書いてあるものかどうかは私にはわからない。

一番謎なのは闇の存在を認めながらも自分が聖女と疑わない言動だろうか。

とにかく、今ユリアの言動をなんとなくでも理解できるのは私だけだろう。スディはユリアの思わぬ反応にぽかーんとしているし。

オネエ様もユリアの頭大丈夫か?みたいな引いた様子だ。

聖王は……ただじっとしてユリアを観察するようにして見ている。もしかして聖王だけに気づく何かがあったりするのだろうか?

「でも思ったよりイケメンじゃないわ……それなら、ヘイヘイやバント、テックスの方がイケメンじゃない。聖女認定されるのはいいけど………期待したのに!期待したのに!期待したのにぃぃ!」

ユリアの情緒不安定さはやはりホラーでしかない。聖女認定は現時点でされていないし、勝手に期待して失望したとか聖王に失礼すぎる。聖王も綺麗な顔立ちなのに。少しばかりウランに似てるなぁって思っちゃうけど、女性に見えるわけではないし。

ちなみにバント、テックスは残りの攻略対象の名前だろう。バントはそこらでは有名な、医学を極める保健室の先生で、王太子が学園に入るということで期間限定で保健の先生として派遣された攻略対象だ。

テックスは騎士団長の息子だけど、それ故に色々期待され過ぎて、逆にそれに応えられる自信をなくしたという秘めたる心のうちを隠して、実は期待されないようにと女好きとして自ら有名になった攻略対象。

ユリアがたまに姿を消していたのはこの二人を攻略していたのかもしれない。スディともすでに知り合っているようだけど、イケメンの中に攻略対象のひとりでもあるスディの名前が入ってない辺り、攻略してたのかな……?と少し疑問はある。

でも、顔は好みじゃなくても、表面上だけは攻略しようとしていた可能性があるか。聖王の存在を待ち望んではいたようだし……。

「まさか闇の存在と一体化できる魂が存在するなんて……聖女の魂が追い出されるわけだ」

なんて考えていればスディが姿を現してから、ユリアを傍観していた聖王がようやく口を開いた。
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