私の夫はストーカー~私は恋も愛も知りません~

荷居人(にいと)

文字の大きさ
10 / 51
2章

夫婦生活の報告2

しおりを挟む
「瑠璃からすれば信用できないかもしれないけど、彼は私の幸せを第一に考えてくれてるみたいだから大丈夫よ」

「もう!美世ちゃんは危機感が足りないよ!」

真剣さは失われ、ぷんぷんと音が出そうな怒り方。やっぱりこちらの方が瑠璃らしいわね。瑠璃に真剣な顔も、真面目な顔も似合わない。

「なんか失礼なこと考えてない?」

「何のことかしら?」

時々鋭いから瑠璃は油断できない。まあしらばっくれるのは得意だけれど。

「もう、初日からそれだと2日目以降を聞くのも怖いんだけど」

「2日目以降は時雨が仕事で一日中一緒ってわけではなかったのよ?」

「そうなの?」

「ええ、いくらストーカーな夫でも仕事はあるものでしょ?じゃなきゃ、1億をゴミになんてできるほどお金があるはずもないわ」

「そ、それはそうだけど、仕事場に連れていくとかありそうだったから。今日も会えると思わなかったし・・・」

「言ったでしょう?彼は私の幸せが第一なの。束縛するような行動は私が嫌なことも理解してるわ。あくまで自分本位に動きたいから私」

「美世ちゃんマイペースだもんね・・・。」

自分がしたいように動いて何が悪い。自分の人生だからやりたいことがあれば人の意見を聞かずにするのが私だ。

流されるままに行くこともあれど、嫌だと思えば方向転換。だからこそ、時雨が私に文句を言わさず行動を移せることに感心せざる終えない。

人に任せといて、文句を言い、私のしたいようにする。瑠璃にすらそのマイペースを崩さない私なのだから、時雨がどれだけ私を理解し、私基準で動いてくれているかがわかるというものだ。

「ただ監視はされているようね。ひとりで近場に買い物に行ってみれば、その時いなかったはずの時雨が、帰ってきてから何かほしいものでもあったのか聞かれたりしたもの」

「え、怖い」

「そうかしら?中々面白いわよ?どこから監視されているかはわからないけれど、これがほしいと呟いてみて買わずに帰った日があるの。その日仕事から帰った時雨が、当たり前のようにこれ欲しかったんだよねと、買って帰ってきたわ」

「面白くないよ!ってか今も監視されてるってこと!?」

キョロキョロと慌てたように周りを見渡す瑠璃。この1ヶ月、時雨が仕事の間、色々試して見つけられなかったのだから、それでわかるはずもないだろうに。

空になったカップを見て、近くの店員を捕まえ、別の飲み物を注文する。あまりに冷静な私を見て少し落ち着いたのか、瑠璃も同じく店員に頼むことで挙動不審な姿はなくなった。

「危害は加えられないし、何かあっても監視のおかげで大きな危機にはならないだろうから、護衛がいるとでも思っていればいいのよ。」

「ストーカー行為を護衛って・・・」

焦るほどではなくても、そわそわと落ち着きは完全になくなってはいないようだ。どうやら余計なことを言ってしまったみたいね。

「護衛があれなら、便利なものと考えるのもいいわ」

「べ、便利なもの?」

「ねぇ、瑠璃。ピザが食べたくない?」

「へ?突然何を?ここのカフェ、ピザないよ?」

「そうね、気にしないで」

「う、うん?」

にこりと笑って、とりあえず話を逸らす。頼んだ飲み物が来たことで、それを飲み、瑠璃はほっと息を吐いてそわそわも落ち着く。

「で、他の報告だけど、ひとりを満喫したり、時雨といるときはカジノに連れていってもらったり、遊園地や水族館なんかも貸し切りで行ったわ。」

「か、貸し切り・・・?」

「人がいなければ行きたいって言ってみたら時雨の休日には、ね。水族館もよかったけれど、貸し切りの遊園地は待ち時間なしの乗り放題だったから少しはしゃいでしまったわ。今度瑠璃も行きましょうね」

「え、いいの?」

「私が頼めば彼はやってくれるわ」

「そ、そっか・・・なんか美世ちゃん、随分表情が・・・」

「ピザの宅配に来ました。奥様、こちらを」

「あら、ありがとう。」

「では、私は仕事がありますので」

「ええ、ごめんなさいね」

「え、いや、誰!?」

瑠璃の言葉を遮って来たのは時雨の秘書だ。仕事上一番関わりのある人だけ時雨に紹介され、恐らく彼が一番時雨に使われているのが簡単に予測できる。ピザを届けさせたのも時雨だろう。

開けて見ればやはり私の好みにあったピザ。

「さっきの彼は時雨の秘書らしいわ。さっき監視を便利なものだと言ったでしょ?こう呟けば届くこともあるの。急ぐものでなければ時雨が買って帰って来るんだけれど」

「便利ってか普通に怖いよ!場所気にせず食べたいもの届くの怖すぎだよ!」

「でも便利でしょう?転けて怪我でもすれば、消毒液や絆創膏が言わずとも届けられるわ。なんなら、近場の買い物ばかりつまらないと言って外で立ち止まっていれば、車が目の前に停まって、運転手にどちらまで行かれますかって聞かれて、後部座席のドアを開けられるわ。間違えて誘拐されないよう車が目の前に停められた時点で時雨から電話が来て、手配した車だと伝えられるの」

「至れり尽くせりすぎないかな!?」

「まあただ監視されるよりはいいでしょ?」

やることなすこと邪魔さえされなければ私はなんでもいいのだけど。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

処理中です...