私の夫はストーカー~私は恋も愛も知りません~

荷居人(にいと)

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3章

夫婦生活の想い1~夫視点~

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お風呂場へ逃げて、脱衣場で口許を押さえて閉めたドアを背にずるずると座り込む。隠された僕の口はにやけている。

「ふ、ふふ・・・はは・・・っ」

あれは、気のせいじゃない。誰よりも美世を理解しようと一日中飽きずに見てきた僕だ。見逃すはずがない。

『冗談よ』

あの前を向く一瞬、美世の頬が赤らんでいた。最後の返事はそれで動揺したものだと美世は気づいただろうか?いや、気づいてないだろう。

なんなら、頬の熱に気づきはしても、理由がわからないのが美世だ。嫌われたくないと思われるくらいの好意にできたことはあのカフェでの出来事で確信した。

美世の友人二人の返事の意味は、僕が理解した通りだろう。その上で僕の言葉に反応して赤らんだ頬。確実に僕を男として意識している。ただ夫になった人、恋や生活の安定に必要な人ではなく、男として。

こんなに嬉しいことがあるだろうか?にやけが止まらない。こんな姿見られたら美世に幻滅されかねないじゃないか。

今日は美世以外の女の近くにいなければいけない最悪な日かと思えば、後半は、初めて美世の泣き顔は見られたし、美世から嫌われたくないくらいの好意に気づけた上、男と意識される瞬間を目にして最高の日だった。

美世が僕に恋してくれる日は近いかもしれない。恋した日が愛を育む日となって、いつかは僕と同じくらいの愛で僕を愛してくれたならどれだけ幸せだろうか。

無理かもしれないけど、夢見るくらいはいいよね?僕は僕が美世に抱く愛が異常であることを理解しているのだから。

「お風呂入れなきゃ・・・」

そんな思考の中でなんとか、落ち着きを取り戻して、本来の目的を達成する。ただ、浴槽の蛇口を捻ってお湯はりするだけだけど。

美世のいたソファまでいけば見えない美世の姿。ソファを覗き込めば、ソファで横になって眠る美世がそこにいた。

「・・・ごめ、なさ・・・」

「美世・・・」

一筋の涙を溢して寝言を呟く美世。今日のことを夢にでも見ているのだろう。その姿に頬を赤らめた証拠はない。

今回の美世の強要した浮気もどきで、嫌な気持ちにはなったし、美世の傍にいられないことで、美世の友人にすら嫉妬してしまうくらいには苛立っていた。結局、美世の傍にいくことで落ち着きはしたけど。

それでも美世を責める気にもならないし、美世は気にしたようだけど、嫌いになんかなるはずもない。美世が人の気持ちもわからず、自分勝手に振る舞うような子であることなんて、わかっていて僕は今だに惚れているのだから。

自分勝手で最低と理解しながらも、自分がやりたいことを突き通すのは、何も人をどれだけ傷つけるものかというのがわかっていないからできること。

これくらい明日には忘れるだろう。そんな感覚で美世は時にやり過ぎる子なのを僕は理解しているし、一目惚れした日から見ることが何度とあった。

理解さえすれば謝れる子だし、何がどうなってそう思うのかを理解しなくても、悪いことだというのがわかれば、その人を傷つけたことだけを理解して反省のできるのが美世。

決して美世は悪いだけの子ではない。今回はそれをわかっていながら理解させようと努力しなかった僕も悪いんだ。美世のお願いを聞く、聞かないじゃなく、何で嫌なのか、それをすることで僕がどう思うのかを言い聞かせるべきだった。

きっと美世の傍に居続けた友人はそれができる人だから、美世が泣くほどに反省できた。そう思うと男と意識された程度で喜ぶ僕がバカらしくなる。

惚れた弱みもあるとはいえ、美世のお願いを聞くばかりじゃ、今回みたいに美世を泣かせる結果にしならない。でも僕はどうしても自分を貫く美世に惚れたから頼まれ続ければ折れてしまう。

「情けないね、僕は」

君は知らないだろうね、人の気持ちがわからないからこそできる自分を貫く行為に、僕が救われたことに。

その日のことを思い出しながら、そっと美世の頭を撫でてやれば、美世の表情が和らいだ気がした。
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