私の夫はストーカー~私は恋も愛も知りません~

荷居人(にいと)

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3章

夫婦生活の想い2~夫視点~

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これは美世が16歳の時。実は一度会っていたなんてこともなく、ただ彼女は他と異様な存在で思わず釘付けになったというだけの話。その時、彼女に視線を向けたのは僕だけではなかったけれど。

その話の前に僕の話を少ししよう。僕はお金のある家に生まれ、それでいて優しい両親に恵まれ、容姿もよければ、何でもそつなくこなし、なんならできないことはない、まさに神に愛された子と周囲に言われてきた。

だが、僕にはそう思えない。女性は幼き頃は僕の容姿を見て、成長すると共に有り余るお金にも目をつけ関係を持とうとし、男性は幼き頃は女に囲まれる僕に嫉妬する目で見ていたにも関わらず、成長すると共に、僕の将来の権威にあやかろうと媚びを売り始めた。

これで両親や家の者のような人たちがいなければ、僕は人間不信になっていただろう。何より、自らに自信のある女性は、それで僕が喜ぶとでも思うのか接触を試みるような者も多く、気がつけば嫌悪対象になっていた。

両親が将来を心配して婚約者ができてから囲む女性は減ったが、それでも婚約者がひっついてくるのでそれが薄まることはなく、両親に心配をかけたいわけでもなかったため、無下にもできずただただ嫌悪が募るばかり。

まあ、両親の意を汲む以上に、英才教育と共に人間関係の大切さも学んでいたから、自分が嫌な思いを我慢してでも、関係性を大事にしなければと考えてしまい、近寄る相手を近寄るなと真っ正面から言えるはずもなかった。

もしかするとそれで相手を傷つけてしまうことだってあるのだから。結局神に愛された子と言われようが、所詮は人間。こんな嫌悪の対象でも、嫌われて孤独になるのが怖かったのだ、僕は。

両親、家の者が全てじゃない。会社を継ぐ僕は、この周囲の全員とは言わないが、関わる人たちも出てくる。それを理解しているからこそ、嫌われるような行動ができなかった。

それが美世を見る前までの僕だ。

あの日、美世に視線を向けた運命の日。人の気持ちを理解できない美世は、自分の気持ちにも疎く、人目を気にしない。

それを知らない僕はその日も、男女に囲まれていた。運転手の使用人が貧血で倒れて迎えに来れないため、今日いた会社は家からも近く、たまには歩いて帰ると言ってしまったのが運の尽き、歩道のど真ん中で、迷惑を顧みずわんさかと、それをどこぞで知った者たちとそれにあやかるような女性も交えて囲まれたのだ。

下手に冷たく感じさせないように優しくやんわりと言っているせいか、周囲は聞いてくれない。婚約者がいるのを知ってか知らずか、ひっついてくる女性に嫌悪を抱きながら、自分のアピールばかりで、肝心の僕の話を聞かずに囲む男女に苛立ちすら感じていたときだった。

「こんな歩道のど真ん中で邪魔です」

凛とした、大きくも小さくもない女性の声が響いた。僕を囲んでいた者たちはしんと静まりそちらへ目を向ける。囲まれ過ぎて見辛かったが、わずかに見えたその女性は、着飾るようなこともないただの制服を着た学生。

そのついでに辺りを見渡せば、迷惑そうにしていたおばさんやご老人は目を見開くようにその子へ視線を注いでいる。ただひとりで集団に立ち向かう姿勢に驚いていたのだろう。

そうそうできることではない。この時の僕はただ美世が、正義感の強い勇気のある子だと思っていた。でも今ならあの時、ただ自分にとって邪魔だから言っただけで、勇気も何も、周囲のためでもなく、美世にとっては集団だろうとただ自分がそこを通りたいと、自分が思うように行動しただけでしかなかったとわかる。

「避けて通ればいいじゃない」

誰かがそう言った。避けてとは言うが、さっきから少し歩道を外れて通る人々に、僕を囲むこいつらは気づいていないのだろうか、気づいていて言っているのかと疑問にも感じたし、僕の言葉は全然届いてないなと、驚きでひそんでいた苛立ちが戻ってきた。

「何故ですか?あなた方のために何故私が歩道を出て避けなければいけないんですか?」

言いたいことはわかる。でも、言い方が随分と上からだななんて戻った苛立ちがまた中へ潜み、ぽかんとして、周囲の隙間から見える彼女に視線がいく。

「あ、あんたねぇ!」

「おばさん」

「お、おば・・・っ!」

「厚化粧は加齢を隠すためと瑠璃が言っていました。おばさん厚化粧ですよね?何歳ですか?私の母はあまり化粧をしないので、加齢を隠す厚化粧の人が何歳か知りたかったんです」

上から目線に腹が立った女性がいたのだろう。甲高い声で怒ろうとすれば、学生の発した言葉に動揺した様子だ。しかもその後に続く失礼な言葉の数々。

歩道のど真ん中にいることについての話とは全く関係ないところへいく。随分マイペースというか、よくわからない子だなと思った。

「22歳よ!厚化粧なんて・・・!」

「随分老けてるんですね。」

「なんなのよ!あんた!」

答えるのかと思えば、さらりと言われた言葉に、厚化粧をしているかは背を向けられて見えない女性だが、声からしてかなり激怒なのがわかる。学生に怯える姿はない。

このやりとりに他の周囲は釘付けで、その二人以外一切会話をしない。つい僕も隙間からとはいえ、眺めてしまう。もはや歩道の話で何故こうなったのか訳がわからない状況だ。

私にひっついていた女性もいつの間にか離れて、男女の隙間からかそちらに視線を向けていた。
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