私の夫はストーカー~私は恋も愛も知りません~

荷居人(にいと)

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3章

夫婦生活の想い3~夫視点~

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「榎本美世です」

「名前聞いた訳じゃないわよ!」

「? 私がなんなのか言われたので・・・あ、人間です」

「見たらわかるわよ!バカにしてんの!?」

正直姿が見れないのが残念なくらいにいい性格をしているなと思った。榎本美世、姿こそ全体は見えないものの名前だけでもと記憶する。

終わりはいつ来るのかと思えばあっけなくそれは終わりを告げた。

「美世ちゃん!?何してるの!」

「瑠璃」

「もう!次は誰よ!」

どうやら学生の知り合い、今でこそわかるが、美世の友人が来たようで一気に雰囲気が変わる。

「すみません!すみません!美世ちゃんちょっと人付き合いが苦手で怒らせちゃったりしたかもですけど、悪い子じゃないんです!許してください!」

「瑠璃、なんで謝るのかしら」

「どう見てもこのお姉さん怒らせたの美世ちゃんでしょ!」

「おばさん怒ってたの?」

「こら!自分より年上に見えたらみんなおばさんって言うのだめだって言ったでしょ!どう見てもお姉さんだから!まさか老けてるなんて言ってない?老けてるは大人っぽいと意味全然違うからね!言い方大事だから!」

まるでお母さんみたいな子だ。学生のことをよく知っているのだろう。それを聞いてか、ため息がひとつ聞こえた。

「なんとなくわかったからいいわよ、もう」

どうやら学生と言い合っていた女性のため息であったようだ。呆れた声にもう怒りを含んではいない。

「なんか、すみません。この子悪気はないんです」

「いえ、私も大人気なかったわ」

それにより、ようやく和解したようだ。というより、美世の友人の言葉に、美世に突っかかるだけ無駄なのを理解できたに違いない。

話も終わりかと周囲がざわめき出すそんな中、やはり空気を読めないのは美世であった。

「そうだわ、瑠璃。この人だかりが邪魔なのよ」

この状況で、最初の話に戻してきた。

「そういえば・・・この人だかりは?」

「え?ああ、私はイケメンがいるみたいだから一目見たくて」

落ち着きを取り戻し、素直に答える女性は、どうやら人だかりを見て、僕の容姿を聞き、一目見たいがために近寄った人物だったようだ。俳優かモデルか勘違いされた可能性も高い。

「同じ人間を見て楽しいんですか?」

「同じってこの人はすごい方なんだぞ!」

「すごい?」

恐らく、口出しした男性は僕が何者か知る者だろう。説明するだけ無駄な気がしたけれど、それ以前に男は、随分頭の回らない人だったようだ。

「お金持ちだ!」

「お金なら私も母からお小遣いがあります」

「そんなのと一緒にするな!家が何軒も建てられるんだぞ!」

「家なんて1軒で十分です。」

「ほしいものが買える!」

「さっき、トランプがほしくて買いました」

「と、トランプ?そうじゃない!もっと高価な宝石とか!」

「宝石あっても見るだけじゃ楽しめません」

「豪華なものが食べられる!」

「ハンバーグに目玉焼きを乗せる感じですか?」

「それのどこが豪華なんだ!?」

「ご飯もあります」

「だからなんなんだ!」

「とりあえず食べれたらなんでもいいです。私は好きに生きれたらそれで」

随分欲がない子だ。と今まで見てきた女性と違うのを改めて認識する。

「か、顔もイケメンだ!」

今更だからなんだと思う。顔がよくなきゃ、こうも女性に嫌悪を抱くこともなく、いられただろうか?

「そうですか。でも見るだけしかできないなら私はどうでもいいです。」

「は?」

「お金があってイケメンでも、私のものでないならそれを知っているだけの存在にしかならないわ。それに、今その人を貴方たちは囲んでいて私の歩く道を邪魔してるのよね?私にとってはただの邪魔な人でしかないわ。貴方たちもね。」

邪魔な人・・・。そんな風に思われたのは初めてだった。でも不思議と嫌な気分にならない。

「僕は帰るよ。邪魔なのは事実だからね」

この時の声が美世に届いたかはわからない。
でもその言葉に周囲を囲んでいた者たちは素直に聞き入れてくれた。その日とても心が軽く、人の隙間から見た美世と最後面倒になったのか丁寧口調も消えた言葉と誰もが注目した声、知れた名前が忘れられることはなく、今まで出会わなかった女性に興味が沸き上がった。

そこから始まったストーカー行為。調べるのは簡単だった。個人情報を知れば、私生活も気になり、私生活が気になれば、何が好きで、嫌いでと何もかもが気になって、髪の毛一本を手に入れた時はあの子に触れられた気がして興奮した自分に驚いた。

そんな自分に気づけば、もっと触れたい、もっと見たい、彼女を理解したい。そんな気持ちばかりが膨れ上がる。

嫌悪対象だった女性に興味を持つ日が来るとは思わなかったけど、美世を見る度、知る度、人に嫌われることに動じず、ただただ自分を貫く姿は僕に勇気をも与えた。結果、周囲に強く言えば、囲むだけの人は離れていったし、これからの付き合いのあるものは、適度な距離をとるようになった。

人は簡単に人を嫌いにはならないし、嫌いになったところで、これからの付き合いある者が僕を避けるなんてことはできない。何も嫌な思いを我慢してまで人に合わせることがなかったことに気づかされた。

「最近楽しそうね」

「うん、そうだね」

そう母に言われてすんなりと答えた時には、常に美世の行動が録画されるカメラがあるくらいにストーカー行為は発展していた。

美世のおかげで嫌な日常を打破でき、嫌悪を抱かない女性を見つけることができた。その女性こそ美世で、気がつけば自分が幸せにしてやりたいと、時折り友人がいないときにする寂しそうな表情を見てより感じた。

きっと美世はそんな自分の表情に気づいてはいない。

『結婚してください』

あの日唐突に言って結婚できたのは美世だからこそ。僕はあの日以上に浮かれた日はないだろう。初めて一緒に寝た日は興奮よりも、知らぬ間の寂しい思いすらさせない、幸せにするという決意の思いでいっぱいで、起きた時に間近で見る彼女の寝顔に興奮してしまった。

僕は誰よりも彼女、美世を、愛している。きっと身体を繋げてしまえば、美世が僕以外の男に目移りしただけでも、嫉妬の渦に巻き込まれるほど深い愛になりそうなくらいに。

それほどに愛しているから画面越しでしか君の裸は見られない。着替えひとつでも直接見れば暴いてしまいそうなのだから。

もし君が、僕に愛を向けるようになり、それを理解した上で覚悟ができたなら、その時僕は愛してやまない君の身体を蹂躙し、これ以上にないくらい愛に溺れることだろう。

可能性があると知った今、攻め時を間違えるわけにはいかない。君の心を僕は誰よりも欲しているのだから。

「し、ぐれ?」

「ベットで寝ないと風邪を引くよ?お風呂は明日にしよう。今日はもう眠いなら寝よう」

「え、あ・・・」

美世を抱いてベットまで連れていけば、ほんのり赤く染まる美世の頬。彼女の友人が言っていた恋に落ちる日は近いことだろう。

お湯はり完了のメロディが鳴るのを聞いて、名残惜しくも給湯栓を閉めに行く僕は、やはりにやけが抑えられなかった。
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