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1章ー幼少期ー

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エリーナと二度目の再会でもやっぱりエリーナは泣いていて声をかければより涙が増した気がしておろおろしてしまう。

「う……っうう……っ」

「あ、あの、お、おはなとね、のみものをもってきましたよ!それときょうは僕のせんせいが………………せんせい?」

さっきまで背後にいたはずの先生がいなくなっていた。急に現れる先生なら急にいなくなることもできるだろう。先生のことだから僕の護衛は見えないところでしてくれているんじゃないかな。

「ひく……っ」

「えっとせんせいもきてたんですが、せんせいはひとみしりでしょうかいできないみたいです」

僕以外とは父上もあまり姿を見ることがないというから先生の人見知りは年季が入っている。僕が子供だからかなと思っていたけどエリーナとも顔を合わせないとなるとそうではないみたいだ。先生の基準は難しい。

「……っ」

「あ、はい、これですね」

泣きながらエリーナが紙とペンに視線を向けたのを見て、僕と会話しようとしてくれているのを悟る。慌てて花と持ってきた飲み物を紙とペンを置いていた場所に置かせてもらい、代わりに手に取った紙とペンをエリーナに渡す。

「う……っ」

【きょうはやくそくをまもれずもうしわけありません】

一瞬何のことかと思うもののすぐはっとする。僕が別れる前に言ったまた明日会おうねという言葉をエリーナは気にしていたのだろう。浮かれに浮かれてエリーナの体調に気がつけずに言った言葉に申し訳なくなる。エリーナは何も悪くないのに謝らせてしまったことに。

「ちがうよ。やくそくは僕がしたんだから、僕があいにいかなきゃいけなかったんだよ?きょうあえたからやくそくまもれたね!」

少し強引だっただろうか?でも僕は城で会うとは一言も言ってなかったはずだから約束を守ったことにはなるはずだ。そんな僕の言葉に潤んだ目を見開くエリーナ。そんな驚くようなことを僕は言っただろうか?

「ひく……っ」

【おこらないのですか?】

これには僕が驚いた。僕はそんなにすぐ怒るような人に思われていたのだろうか?少しショックである。

「おこらないですよ?僕、エリーナのへんじもきかずにでていきましたし、むしろ僕がおこられるほうじゃないです、か………?」

よくよく考えれば僕が勝手なことを言って勝手な約束をしたのだから僕こそが怒られるべきではないかと今更ながらに気がついた。もしかして、エリーナは遠回しに僕に怒ってると言いたかったのだろうか?

「ん……っ!」

【おこるなんてそんなことは。わたし、こわいゆめみてねむれなかったけど、キリアスさまがきてくれてうれしかったんです】

「僕が来て……?」

そう書かれた紙を見て僕の心がぽかぽかと温まる。だってエリーナが僕が来て嬉しいって!嬉しいって言ってくれたんですよ?浮かれてまた失態を繰り返しちゃだめだとわかりながらも、僕はエリーナのその一言で気分があがるのがわかる。

うう……僕はなんて単純なんだ!

「ひっひっひっ男は恋をすれば単純になるものですひひっ」

ふと先生の言葉が聞こえた気がして僕は口に出していたのかと後ろを振り向くがやっぱり先生はいない。浮かれすぎて幻聴でも聞こえたのだろうか?

そんな急に挙動不審になった僕を見てエリーナが首を傾げる様子に、僕はなんでもないと笑みを見せて落ち着けと自分の心に言い聞かせたのだった。
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