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一人目が済んでから遅めの昼食の時間。私は母に訪ねた。

「お母様、リュウガさんが来たのはお母様が何かしたのですか?」

「ええ、借金を持つ平民の家に貴族が訪れたという話をリュウガさんの近くで一般人を装って使用人にさせてたの。それでもしかしてと思いこちらに来たときのために考えていたシナリオが先程の。もしも来なかった場合はこれからは貴族に関わるようなことはしないよう注意とお金に釣られるようなことはしないよう説教をして慰謝料請求、後は同じように親元を引き離して孤児院にでも預けるつもりだったわ。どちらにしろあの子の親に問題がありすぎたから」

「互いに納得できる制裁……ということですね」

「まあ、ろくでなしステイの罪は増えたわけだから、そこに罪の追加をロック家には伝えとくわ」

「そうですね」

そこに慈悲をあげる必要はないとしか言えないので私も同意する。

「おお、まだ食事は済んでいなかったか」

「お疲れ様。うまくいった?」

そんな話をしているところに来たのは父と兄。二人は、一人目は母と私だけで十分だからと二人目に備えて何やら準備をしてくれていたらしい。

二人目は特殊らしく、言っても信じられないようだから間近で知る方がよいとのこと。二人目については少し身長の高い美少女という報告は以前受けて知っている。

男遊びに慣れている様子だが、彼女と別れた後はどの令息も絶対に彼女と関わろうとしない……とは聞いていた。でもその理由は誰も話さない。浮気がバレて気まずいとはまた別の何かなのは青ざめる姿で丸わかりであるとは聞いていたけど。何より、揃いも揃って浮気がばれて気まずいというには浮気を気にしない令息も中にはいて、おかしい点は多い。

でもステイにそんな様子は見られなかった。だから頭の中がぐちゃぐちゃなこともあり、それ以上調べはしなかったのだ。

恐らく特殊なのはその辺りが関係してるとは思うのだけど………。

「概ね考えていた通りよ。それより次はサポートもだけど、しっかり私たちを守って頂戴ね。一応だけど」

「それなりに鍛えてはいるから私たちだけでも問題はないだろう」

「護衛も近くに待機させますしね」

護衛……?相手は女性ひとりであるはずなのに、何やら物騒である。実は怪力……とか?さすがにそれはないかな……?

「裏の顔があるとか……?」

「ある意味間違いではないわね」

「実際確認しにいっても………信じられなかった……。あれは、すごい」

母が苦笑、兄が真面目な顔でそう言うものだから余計に気になる。二人目の浮気相手は一体どんな人なの……?

そんな疑問を抱えたまま、食事を済まし、二人目のメイリーンという女性の家に行けば、身長の高い綺麗な女性が訪ねた扉から顔を出す。一目見ただけでもどこか色気もあり、見るからに男慣れしている感じがわかる。

「あら……どちら様でしょう?」

貴族相手に堂々とした様子で尋ねられた。本当に心当たりがないのだろう。寧ろ心当たりがありすぎてわからないのかもしれない。

「レブラント侯爵のものだ。君にステイのことで話があってね」

父が前に出て自己紹介と要件を話す。すると、メイリーンという女性はステイという名前に反応した。

「ステイ……?ああ、あの子……なるほど……ステイ様の婚約者さんのご一家なのですね?」

「ええ、ただ婚約者ではなく元婚約者だが。思い出せていただけたようで何より」

「それは失礼いたしましたわ。何しろ平民ですから、貴族の話が回ってくるのが遅くて。……それと本来なら過去の男は忘れるようにしてますの。だけどステイ様は少し後悔したこともありまして頭の片隅に残していましたわ。それで思い出せたのですが……まあ、こんなところで何ですから、家に招待いたしますわ。どうぞ」

少し気になる言葉を含みながらも、そう言ってあっさり中に入れてくれるメイリーンさん。男慣れどころか貴族慣れすらしているように思う。元婚約者からの報復と考えたりしないのだろうか?それとも舐められている?

それにステイへの後悔もなんとなく気になる。男慣れしているような人が何故ステイに後悔するようなことがあったのか。

どちらにしても今のところ母たちが言うメイリーンさんの特殊な部分は見られない。まあ、今会ったばかりだし、すぐわかるようなら誰も彼女に近づかなかったかもしれないし、当然か。

それに貴族の令息に手を出しながら危機感をここまで感じさせないのは、ある意味平民の間では特殊に思えるかもしれない。

まだまだ疑問はなくならないまま案内された部屋の椅子に座り、ようやく本題へと入る。

「察しているかはわからないけれど、レブラント家はロック家との婚約を破棄したわ。その原因とされるステイの浮気相手にも責任を負ってもらうためにここまで来たの」

「そう……まあ、今までがうまく行き過ぎたようですわ。婚約者に手を出した責任はとりましょう」

反省は見られないものの、あっさりと母の言うことに承諾したことを不思議に思う。なんとなく、最初から答えを決めていた………そんな風に思えた。

「随分聞き分けがいいのだな」

私と同じようにあっさりしすぎた反省の色も見せないその言葉を、父も感じたのか、さすがに怪しんだようだ。

「もう十分復讐できましたもの」

「復讐?」

そんな父の言葉に返された返事に、思わず聞き返してしまったのは私。これには父たちも調べがついてなかったのか復讐と聞いて少し驚いた様子だ。

そんな次の瞬間だった。

「ああ、俺なりの復讐だよ。お嬢様」

彼女から野太い声が響き渡ったのは。まるで男のような声……けれど、目の前には背の高い美少女。頭が非常に混乱した。

「え、男……?でも………」

「あ?お嬢様は知らなかったのか?逆にあんたたちは知っていたようだな」

目の前の野太い声をする美少女は私が動揺する姿に、私がその正体を知らなかったことを察したらしい。ああいった言い方をすると言うことはやっぱり彼女……いや、彼メイリーンは………男、なの?

特殊な浮気相手ってそういう……こと?す、ステイは……知ってたのかしら?その辺りが物凄く気になるのだけど……。
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