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キ、キスしたかったわけじゃないから!
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「この妖精が理由……私があんたにファーストキスをあげた理由」
そう言って、微笑みながら俺の方を見てきて。
「……全然話が飲みこめんのやけど。どういう事?」
アリアはこの妖精のためにキスしたってこと?
てことはつまり、それはえっと……どういうことだ?
「ああ、そやな、これだけではわからんよね……でも、これが理由やし、でもえっと……」
困惑する俺と同じように事情を知っているはずのアリアもかなり困惑した様にうろうろ頭を悩ませていて……取りあえず複雑な事情があることだけは分かった。
「せやな、えっと……あ、そや! これだー姉が関わっとる! だー姉の仕業……こういうたら何となくわかってくれんかな?」
「あー、だー姉か、だー姉……何となく察したかも」
う~ん、と悩んでいたアリアは、急に思いついたようにポンと手を打ち、だー姉の名前を口にする……その名前を聞くと、何となく「あー」となってしまうのがだー姉の凄いところだ。
だー姉―新藤ダリア。今は結婚して名字が変わって……ちょっと忘れたけど、新藤ではなくなってるのは確かな、ダリアの11個上の昔よく遊んでもらったお姉ちゃん。
今はどっかの高校で保健室の先生として働いているという話を聞いたことがある。
そんな人の名前を聞いてなぜ納得するかというと……だー姉は幽霊が見えるからだ。
幽霊が見える―そんな話を聞いても嘘っぱちと思う人がほとんどだろう。
でも、小さい頃からずっとだー姉と接してきた俺にはわかる。
あの人の力は本物だ。
俺たちには見えないものが見えていて、それと話したり、悪い幽霊なら倒したり……そうやって小さい俺たちを守ってくれた姿を何度も見てきた……ちょっとイタズラが過ぎることもあったけど。
とにもかくにも、だー姉が幽霊的な何かが見えていたのは確実で、その人の仕業なら、まあ、何となくこの妖精についても理解できた……本当に何となくだし、未だに唇に残るキスの理由とかは全然わかんないんだけど。
「へ、変な言い方せんといてや、それも今から言うから……昨日な、だー姉に言われてん。その、宏一とのスパ……」
「ん? スパイ? 俺が? 何の?」
「違うわ、間違えたんや、何でもないわ! その……だー姉に頼まれたんや! この町の平和を守ってくれって。なんか悪霊が結構おるみたいで……それやから、その悪霊の退治を頼まれたんや、幽霊見えるようにしてもらって! 今日もずっと幽霊見えてて!」
少し顔を赤くしながら、ブンブンと腕を振って必死にそう説明するアリア。
こういう感じのアリア久しぶりに見たからちょっと面白い。
「ちょ、何笑っとんの!」
「あ、ごめんごめん……まあ、何となく話は見えてきたけど。だー姉のせいならそうかな、って……でもアリアが俺に、その……キス、した謎はまだわからんのやけど」
「あ、それは、えっと……その……こ、これもだー姉に頼まれたんや!」
「頼まれた? どういう事?」
キスを頼むって……何々唾液サンプルでも集めてるの、保健の先生そんなことするの?
「そうや、頼まれた、頼まれた……私一人やったら悪霊退治不安やから、あんたと協力しろ、って。あんた素質あるみたいやから」
「素質? 俺に?」
「らしいで、よくわからんけど……それで幽霊を見るのを共有するのは、その、キスが一番て言われて……やからあんたとキスしたかったとか、あんたの事が好きやとかそう言うんやないからな! 私は仕方なく、だー姉の指示で仕方なくあんたとキスしただけやから! ……やけど、勘違いは、ちょっとは……」
「わかっとる、わかっとる。勘違いなんかせんよ、そんな事」
赤い顔でまくし立てるように言うアリアに、手をひらひら振って答える。
アリアが俺の事好きじゃないくらいわかっとるし。
アリアも俺とキスなんて嫌やろうし、だー姉の指示で仕方なくやっただけ……だー姉に怒りとか微妙に別の感情とか色々湧いてきたな、ぶつけるところないけど。
「……ちょっとくらいは……ねえ、あんたは私とキスしたこと嫌だった?」
少し不満気にほっぺを膨らませたアリアが、うつむき気味にそう聞いてくる。
嫌か……別にそんなあれは。
「別に嫌じゃなかったけど。他の人ならあれやけど、なんかアリアやと、しょうがないというか、なんか……よくわからんけど、別に嫌じゃなかった。小さい頃からずっと一緒やからか知らんけど、嫌じゃなかった、全然」
「……なんやそれ、あほちゃう」
「ごめん。でもファーストキスがアリアなんは、何か予想通りって言うか、そんな感じもするし……ごめん、気持ち悪かった、忘れてください……」
なんか勢い余ってめっちゃ気持ち悪いこと言った気がする。
その、アリアさん、マジで忘れてください……
「……もう、ほんまあほやわ、宏一は……私も別に……その、えっと……私も宏一と、その……!」
もじもじもごもごと、何かを言いたそうに口を揺らすアリア。
もう、無理せんでいいんだよ、アリア。
「ハハハ、無理しなくて大丈夫や。無理やりやらされたんやろ、アリアも……初めてのキスは好きな人が良かったやろ、ごめんね僕が初めてで」
「……あほ! ほんまあほやわ、あんたは! あほあほあほぉ!!!」
「……なんでそんなに罵倒する?」
「あほやからや、あんたが! ほんまに……あほぉ!!! くそぼけやわ、あんたは、ほんまに! あほぉ! それより早く悪霊倒すで、誰かが被害にあったら大変やから!!! はよやるで、あほ!!!」
「……そんなに怒らんでよ、ついてくけど」
ぷりぷりと怒りながら、どこかに向かうアリアの後ろをついていく。
……あ、そうだ。
「アリア、今日何かに怯えているように見えたけど幽霊がずっと見えとったんやね。そらこんなんが急に見えたら怖いよな」
「……何それ。あんた私の事そんなに見とったん?」
「うん、幼馴染やしそのくらいは。アリアの事は大体見ればわかるよ」
「……あほ! ほんまにあほちゃう、あんたは! ……ほんまにあほやわ、あほ! あほあほあほぉ! あほぉ!!! ……あほぉ!!!」
「……なんで?」
そう言って、微笑みながら俺の方を見てきて。
「……全然話が飲みこめんのやけど。どういう事?」
アリアはこの妖精のためにキスしたってこと?
てことはつまり、それはえっと……どういうことだ?
「ああ、そやな、これだけではわからんよね……でも、これが理由やし、でもえっと……」
困惑する俺と同じように事情を知っているはずのアリアもかなり困惑した様にうろうろ頭を悩ませていて……取りあえず複雑な事情があることだけは分かった。
「せやな、えっと……あ、そや! これだー姉が関わっとる! だー姉の仕業……こういうたら何となくわかってくれんかな?」
「あー、だー姉か、だー姉……何となく察したかも」
う~ん、と悩んでいたアリアは、急に思いついたようにポンと手を打ち、だー姉の名前を口にする……その名前を聞くと、何となく「あー」となってしまうのがだー姉の凄いところだ。
だー姉―新藤ダリア。今は結婚して名字が変わって……ちょっと忘れたけど、新藤ではなくなってるのは確かな、ダリアの11個上の昔よく遊んでもらったお姉ちゃん。
今はどっかの高校で保健室の先生として働いているという話を聞いたことがある。
そんな人の名前を聞いてなぜ納得するかというと……だー姉は幽霊が見えるからだ。
幽霊が見える―そんな話を聞いても嘘っぱちと思う人がほとんどだろう。
でも、小さい頃からずっとだー姉と接してきた俺にはわかる。
あの人の力は本物だ。
俺たちには見えないものが見えていて、それと話したり、悪い幽霊なら倒したり……そうやって小さい俺たちを守ってくれた姿を何度も見てきた……ちょっとイタズラが過ぎることもあったけど。
とにもかくにも、だー姉が幽霊的な何かが見えていたのは確実で、その人の仕業なら、まあ、何となくこの妖精についても理解できた……本当に何となくだし、未だに唇に残るキスの理由とかは全然わかんないんだけど。
「へ、変な言い方せんといてや、それも今から言うから……昨日な、だー姉に言われてん。その、宏一とのスパ……」
「ん? スパイ? 俺が? 何の?」
「違うわ、間違えたんや、何でもないわ! その……だー姉に頼まれたんや! この町の平和を守ってくれって。なんか悪霊が結構おるみたいで……それやから、その悪霊の退治を頼まれたんや、幽霊見えるようにしてもらって! 今日もずっと幽霊見えてて!」
少し顔を赤くしながら、ブンブンと腕を振って必死にそう説明するアリア。
こういう感じのアリア久しぶりに見たからちょっと面白い。
「ちょ、何笑っとんの!」
「あ、ごめんごめん……まあ、何となく話は見えてきたけど。だー姉のせいならそうかな、って……でもアリアが俺に、その……キス、した謎はまだわからんのやけど」
「あ、それは、えっと……その……こ、これもだー姉に頼まれたんや!」
「頼まれた? どういう事?」
キスを頼むって……何々唾液サンプルでも集めてるの、保健の先生そんなことするの?
「そうや、頼まれた、頼まれた……私一人やったら悪霊退治不安やから、あんたと協力しろ、って。あんた素質あるみたいやから」
「素質? 俺に?」
「らしいで、よくわからんけど……それで幽霊を見るのを共有するのは、その、キスが一番て言われて……やからあんたとキスしたかったとか、あんたの事が好きやとかそう言うんやないからな! 私は仕方なく、だー姉の指示で仕方なくあんたとキスしただけやから! ……やけど、勘違いは、ちょっとは……」
「わかっとる、わかっとる。勘違いなんかせんよ、そんな事」
赤い顔でまくし立てるように言うアリアに、手をひらひら振って答える。
アリアが俺の事好きじゃないくらいわかっとるし。
アリアも俺とキスなんて嫌やろうし、だー姉の指示で仕方なくやっただけ……だー姉に怒りとか微妙に別の感情とか色々湧いてきたな、ぶつけるところないけど。
「……ちょっとくらいは……ねえ、あんたは私とキスしたこと嫌だった?」
少し不満気にほっぺを膨らませたアリアが、うつむき気味にそう聞いてくる。
嫌か……別にそんなあれは。
「別に嫌じゃなかったけど。他の人ならあれやけど、なんかアリアやと、しょうがないというか、なんか……よくわからんけど、別に嫌じゃなかった。小さい頃からずっと一緒やからか知らんけど、嫌じゃなかった、全然」
「……なんやそれ、あほちゃう」
「ごめん。でもファーストキスがアリアなんは、何か予想通りって言うか、そんな感じもするし……ごめん、気持ち悪かった、忘れてください……」
なんか勢い余ってめっちゃ気持ち悪いこと言った気がする。
その、アリアさん、マジで忘れてください……
「……もう、ほんまあほやわ、宏一は……私も別に……その、えっと……私も宏一と、その……!」
もじもじもごもごと、何かを言いたそうに口を揺らすアリア。
もう、無理せんでいいんだよ、アリア。
「ハハハ、無理しなくて大丈夫や。無理やりやらされたんやろ、アリアも……初めてのキスは好きな人が良かったやろ、ごめんね僕が初めてで」
「……あほ! ほんまあほやわ、あんたは! あほあほあほぉ!!!」
「……なんでそんなに罵倒する?」
「あほやからや、あんたが! ほんまに……あほぉ!!! くそぼけやわ、あんたは、ほんまに! あほぉ! それより早く悪霊倒すで、誰かが被害にあったら大変やから!!! はよやるで、あほ!!!」
「……そんなに怒らんでよ、ついてくけど」
ぷりぷりと怒りながら、どこかに向かうアリアの後ろをついていく。
……あ、そうだ。
「アリア、今日何かに怯えているように見えたけど幽霊がずっと見えとったんやね。そらこんなんが急に見えたら怖いよな」
「……何それ。あんた私の事そんなに見とったん?」
「うん、幼馴染やしそのくらいは。アリアの事は大体見ればわかるよ」
「……あほ! ほんまにあほちゃう、あんたは! ……ほんまにあほやわ、あほ! あほあほあほぉ! あほぉ!!! ……あほぉ!!!」
「……なんで?」
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