断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

古堂 素央

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第五章 天は我に味方せり

容疑者ヒロイン

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 しばらくはふて寝して過ごして。
 で、ダラダラするのも飽きてきちゃってさ。そろそろ学園に行こうかどうしようかって迷ってるところ。

 さすがの山田も今回は見舞いの花とか贈ってこない。謝罪の手紙は届いたけど、返事する気にもなれなくて。

 くそぅ、山田のヤツ。思い出しただけでも腹が立つ。
 公開キスだとかほんとふざけんなって感じ。
 前世と言い、今と言い、どうしてわたしにつきまとってくるんだ。

 そもそも日本で階段から転げ落ちたのも、山田に告白されたのが発端ほったんなんだよね。
 あのときも大勢の前で愛を叫ばれて。告白っていうより、そんなモンすっ飛ばしてもはやプロポーズって感じでさ。
 キスされなかった分だけ、今よりもまだマシな状況だったかもだけど。

 それはさておき。今日未希が来てくれるから、また三人で作戦会議しようってことになってる。
 今後のことは、状況見て冷静に判断しないとね。

「ハナコ様、お加減はいかがですか? こちら手土産ですわ。お口に合えばよろしいのですが」
「あら、ありがとう。わたくしの調子はまずまずよ」

 あ、いちご大福。それにみたらし団子も!
 さすが未希。気を利かせてわたしの好物選んできてくれたんだな。健太は甘いもの苦手だから、みたらし団子だけ取っといてあげようっと。

 メイドに緑茶を所望して、いつも通り人払いを済ませた。
 ってなわけで、令嬢モードは解除ってことで。

「華子、あんたほんとノーダメージって感じね?」
「わたしだってはじめは落ち込んだんだよ? でも今はむしろ腹が立ってしょうがないって感じ」
「そ。ま、あんたらしいわ。で、これからどうすんの?」
「もうめんどいからこのまま退学しちゃおうかな……」
「でも王子に恥をかかせたまんまだと、モッリ公爵家の立場が悪くなるんじゃない?」

 ああ、そうか。ケンタの将来もかかってるなら、もう少し大人の対応しないとなんないのか。
 それ考えると、ギロチンエンドなんてさらにマズいんじゃ。ゲームの世界って言っても、わたしが死んで終わりって訳にはいかないだろうし。

「俺のことなんていいからさ。今は華子姉ちゃんのことだけ考えよう?」
「健太……」

 ってか、いきなり部屋に転移してこないでっ。
 ここ姉ちゃんのプライベートゾーンだかんねっ。

「ねぇ健太。山田っていまどうしてるの?」
「見た目は淡々と過ごしてる。けど、相当落ち込んでるっぽい」

 ふん、自業自得だし。同情なんてしてやらないんだから。
 でもヨボじいの言ってた通り、今回の件でわたしに非はなさそうでよかった。これで断罪されたらたまったもんじゃないしね。

「それにしても、なんで山田のイベントに限ってゲームの強制力が働かないんだろう?」
「今回もちゃんと働いてたと思うよ?」
「だったらどうして山田はわたしのところに……」

 健太の言うことが本当だったら、劇の中で山田はユイナにキスしてたろうし。それに今ごろふたりはキャッキャウフフな関係になってたはずだよね。
 でもそういやあのときの山田、何かにあらがってる感じに見えたっけ。

「俺もユイナとのイベント、何回か経験してるから分かるんだけどさ。あの強制力からはどうあっても抜け出せない。なのにシュン王子はそれを振り切ったんだ」

 ほう。それはなかなかの精神力。
 王子の身分も伊達だてじゃないって感じ?

「その顔……姉ちゃん、この意味まったく分かってないだろ?」
「意味って何よ?」
「シュン王子はそれだけ姉ちゃんが好きってことだよ!」

 え、なんで健太が怒ってんの?
 やけに熱くなっちゃって、いつもの健太らしくないっていうか。

「そ、そんなこと言われたって。だってハナコの中の人、もう華子わたしなんだよ?」

 悪いけど、山田が好きになったハナコはもうココにはいないんだ。

「それでもだよ。だって姉ちゃん、この世界で過ごしてきた記憶もちゃんと残ってるんだろ?」
「そりゃ残ってるけどさ」
「だったら姉ちゃんは令嬢ハナコでもあるってことじゃんかっ」
「だからってわたしにキスしていいって話じゃないし。それとこれとはまったく別でしょ!?」
「ハイハイ、ストップ! 健太もそこでエキサイトしない!」

 未希が間に入ってくれて、健太ってば我に返ったみたい。バツが悪そうに目を逸らされた。

 どうして健太が山田の肩を持つのか分かんないんだけど。わたしもちょっと大人げなかったかな。
 山田が原因で姉弟喧嘩するのも馬鹿らしいしね。
 ここは何事もなかったていで話を進めようっと。

「そう言えば、あのあと劇って大丈夫だった? ユイナのヤツ、山田にコケにされて大暴れとかしたんじゃない?」
「それは大丈夫。観客は戸惑ってたけどさ」
「え、ユイナ、あんだけのコトされてリアクションなしだったの?」

 なんか意外。いつも自分中心じゃないと気が済まないって感じなのに。

「あのときユイナは睡眠魔法で熟睡してたから」
「は? 熟睡?」
「うん。ユイナがさ、迫真の演技したいからって言って。キスの演技と同時に、王子が魔法を解いてユイナを覚ます手はずだったんだ」

 で、起きたらすべて終わってて、その上とんでもない騒動になっていたと。

「なんていうか、今回ばかりはユイナに同情しちゃうかも……」
「華子、あんた相当お人好しね」
「だって元凶はぜんぶ山田じゃん。山田がゲーム通りに行動してくれれば、わたしだっていらない苦労しないで済んだのに」
「そりゃまぁ、その方がこっちも対策立てやすいしね」
「でしょう?」

 まったく、ギロチン回避が最優先のはずなのに。ユイナの陰謀と山田の奇行、どこから手をつければいいのか分かんないんですけど。

「はぁ……学園に行くにしても、ユイナにまた理不尽に絡まれそう」
「そういえば最近、まったくユイナ見かけないんだけど。健太は何か知ってる?」
「それがさ、ユイナのヤツ……」

 ん? 健太、なに暗い顔して唇噛んでんの?
 未希も不思議そうにしてるし。

「何よ? もったいぶってないで早く言いなさい」
「うん、未希姉ぇ。華子姉ちゃんもさ。これオフレコだから心して聞いて」

 心してって、そんな大げさな。
 ってか、オフレコってどういうこと?

「実はユイナ、いま国に拘束されて取り調べ受けてる」
「と、取り調べっ!?」
「しぃっ! 姉ちゃん声大きいって」
「だってユイナ、ヒロインだよ? それがなんでそんなことに……」

 しかも国に拘束って。相当な扱いじゃん。

「どうやらユイナは前々から国にマークされてたらしいんだ」
「マーク? 一体なんの容疑で?」
「国家転覆てんぷくってヤツ?」
「は……? 国家転覆?」

 ちょっと意味が分からないんですけど。
 さすがの未希もぽかんとしてる。

「健太、それって何かの間違いじゃないの?」
「そうね。王子を誘惑したとかならまだしも、あのユイナがそんな高尚なこと企てるとは思えないわね」
「それなんだよ」
「それ?」

 ってどれ?

「シュン王子もユイナへの強制力に戸惑ってたんだと思う。で、どうやらその力を『ユイナが魅了の魔法を使ってるんじゃないか』って捉えたらしくって……」
「魅了の魔法……って国で禁止されてるのよね?」
「うん、禁忌の秘術って言われてる。昔、その力使って国王をたぶらかした女がいてさ。税金使いたい放題にして一度国が傾きかけたって話」
「だからユイナも掴まって取り調べ受けてるってわけか」
「俺もゲームの話とかするわけいかないしさ。ユイナの容疑を晴らそうにもできなくて……」

 そんなことしたら、ケンタまで共謀犯扱いされちゃいそう。

「ゲーム設定ではそんな力、ヒロインにはなかったよね?」
「多分」
「だったらうちらが動かなくっても、そのうち無罪放免になるんじゃない? でもよかったわね、華子」
「よかったって何が?」
「さすがにそんな容疑がかかるようなヒロインをさ、王子の嫁には迎えられないでしょう?」

 へ? ってことは?

「そっか、姉ちゃんのギロチンエンドの可能性はもうないってことか!」
「そゆこと」

 まじでか。この顔、胴体から離れずに済むんだ!

「え、でも待って。それじゃあ、山田とユイナをくっつけられないってこと……?」
「あんたの首が飛ぶよりましじゃないの」

 そ、それはそうなんだけど。

「姉ちゃん、どうしてそんなにシュン王子のこと毛嫌いするかなぁ」
「だって大衆の面前でいきなりキスしてくるようなオトコなのよ? 瓶底眼鏡だし、目つきは極道だし」

 いくら王子でも無理に決まってるじゃんか。
 ってか、なんで健太ってばいつまでたっても山田推し!?

「それにわたしは好みのイケメン見つけて、これからの人生謳歌おうかするんだからっ」

 前世で叶えられなかった夢、絶対この手に掴むのよ!
 それだけは何があっても譲れない。でないと生まれ変わった意味ないし。

「あー、だったらこれからは王子回避対策だけ頑張れば?」
「え、なんか未希、投げやりになってない?」
「だってあんたの命の心配なくなったし。もう協力しなくたって大丈夫でしょ?」
「だね。あとは姉ちゃんとシュン王子の問題ってことで」
「そ、そんな、健太までっ」

 ギロチン回避と引き換えに、協力者を失っちゃうなんて……!

 もういいわよ!
 ここからは山田とサシで勝負してやるっ。
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