断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

古堂 素央

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第五章 天は我に味方せり

変わった風向き

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 いつまでも登校拒否ってるわけにもいかなくて。
 あの件はもう気にしていないし、だからこれ以上わたしにかかわらないで。
 そんな感じのことを上品な表現でしたためて、とりあえず山田に返事の手紙を送っておいた。

 その上で、今日から学園に登校再開。
 馬車降りたところで健太とは別れて、教室には行かずにそのまま保健室に向かった。

 あの日のお礼も兼ねて、手土産に日持ちする羊羹とカステラ持ってきたんだ。
 未希に頼んでとっておきのを作ってもらったから、ヨボじいによろこんでもらえるといいんだけど。

「先生、いらっしゃいますか?」
「おお、これはいつぞやのお嬢さん。また怪我でもなさいましたかな?」
「いえ、今日は先日のお礼に参りましたの」
「はて? なんのお礼でしたかのぅ?」
「そんな、おとぼけにならなくっても。かばっていただけたこと、わたくし心より感謝してましてよ?」

 気を使わせないよう覚えてないフリしてるのかな。
 王子にたてつくだなんて、雇われ保健医じゃ勇気もいったろうに。

「こちら、お好きかと思って」
「おお、これはプティ家の和菓子ですな。しかしなぜわしの好物をご存じで……?」

 ん? まさか本気で忘れてる?
 ってか、ヨボじい、ちょっとボケ入ってるんだったっけ!

「おほほ、とにかく喜んでいただけてよかったですわ」

 ま、いっか。山田も反省してるみたいだし、ヨボじいが責められることもなさそうだしね。
 とは言え、覚えてなくても受けた恩義はきちんと返さなくっちゃ。

「あの日はありがとうございました。わたくし、本当に助かりましたわ」

 もう一度ヨボじいにお礼を言ってから保健室をあとにした。

「ハナコ嬢!」
「ごきげんよう、ダンジュウロウ様。何かご用でも?」

 来るなり攻略対象と鉢合わせなんて、ほんと勘弁してって感じ。
 ユイナはまだ捕まってるらしいから、もうどうでもいいんだけど。

「いや、今日からハナコ嬢が学園に来るとケンタから聞いて……」

 なんだ、山田の差し金か。
 GPS付きの学年リボンはヨボじいに預けっぱなしだし。
 これはわたしがずっと来るの見張ってたんだな。ダンジュウロウも王子のおもり、たいへんだ。

「それでご用件は何かしら?」
「あ、いや、その、つまり……ハナコ嬢は大丈夫かと思ってだな」

 大丈夫だから登校してるんだけど? 
 見て分からないんか、って感じの雰囲気をかもし出したら。
 ダンジュウロウ、なんか困った顔してる。

 ちょっと意地悪しすぎたかな。立場上、仕方なく山田のおつかいしてるだけで、そもそもダンジュウロウは何も悪くないんだよね。

「あの日……」
「え……?」
「君は泣いていただろう? それがどうしても気になって」

 かっと頬に熱が集まった。
 山田とのキスシーン、みんなにばっちり見られちゃってるんだった。
 ああ、もうっ、あんま考えないようにしてたのにっ。

「そのことは二度と口にしないでくださる? わたくしもう忘れてしまいたいの」
「……そうか、不躾ぶしつけなことを聞いてすまなかった」

 これ、そのままそっくり山田に報告されるのかな。
 手紙でも伝えてあるから別にいいけど。
 損な役回りさせてすまんな、ダンンジュウロウ君。

「ハナコ嬢……!」
「きゃっ」

 な、なにっ、いきなり人の腕引っ張って。

「王子が来る」
「え?」
「会いたくないんだろう?」

 わたしを隠すようにして、ダンジュウロウは一歩前に出た。
 その背中越しに、廊下を歩く山田が見えて。
 はっとした山田はわたしに気づいたんだと思う。でも目が合う前に、思わず顔をそむけてしまった。
 ダンジュウロウをたてにしてても、山田の視線が刺すように痛くって。

「行こう、ハナコ嬢」

 手を引かれ、山田から離れていく。
 その間もずっと強い視線を感じたけど。
 結局、山田が追いかけてくることはなかった。

 ダンジュウロウと別れて、久々の教室に向かう。早く未希と合流したい。
 って思った矢先、前方からマサトが来てるし。

 わたしを見つけると、ぱっと明るい顔になってマサトは駆け寄ってきた。
 なんかブンブンとしっぽ振ってるマボロシが見えるんですけど。マサトってば、どこまで行ってもワンコキャラだな。

「よっ、ハナコ、久しぶり! 元気にしてたか?」
「おかげさまでね」
「そっか、それはよかった!」

 嫌味で返したんだけど、これはまったく通じてないな。
 でものんきそうなマサトの顔見てたら、なんだか気が抜けちゃった。やっぱ久々の学園で緊張してたのかも。

 ずっと山田に会ったらどうしようとか考えてた。
 でもさっきの山田の様子だと、わたしにちょっかい出すのは諦めたみたいだから。
 よし、これで安心して学園ライフが送れるんだ。

 どこまでも追ってくる山田の視線に、なんだか未練を感じたけど。このままフェードアウトすることを祈るしかないよね。

「はいこれ。ハナコに渡しとく」

 差し出されたのは一枚の細長い紙。
 短冊たんざくみたいだけど、何か魔法陣が描かれている。

「なんなのこれは?」
「俺の召喚札。シュン王子に何かされて困ったらさ、いつでもこれ使ってくれよな。呼んでくれればすぐ駆けつけるから」
「は……? なんでマサトがそんなこと」
「いいから、いいから」

 無理やりに手に握らされる。
 いや、待って。だからなんでこんなもの。

「じゃ、そういうことで!」

 って、どういうことよっ。
 止めるヒマもなく、マサトはこっちに手を振りながら走り去ってしまった。

「ふうん? 相変わらずフラグ立てまくってのね」
「好きでそうしてるわけじゃないんだってばっ」

 放課後、未希にそんなことがあったって話したんだけど。

「ま、王子が寄って来なくなった分、随分と風向き変わったんじゃない?」
「うん、このまま何事もなく卒業できるといいんだけど」
「その調子その調子。最後までどうにか乗り切って」

 一応は聞いてくれてるけど、前みたいに真剣に作戦会議する気はないみたい。
 うう、相変わらずティッシュよりも薄っぺらい友情だよっ。
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