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第一章
魔勇者の素質
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「こ…これは……!」
その映像を見たゴードンが驚愕の声をあげた。ヌコが持っていた紫水晶の目玉。それは映像を記録する道具であった。目玉から発せられた光は魔王の間の壁に記録された映像を映した。その映像にはルロウの森にて冒険者一行と交戦する魔勇者が映っていた。
「…まさか、これほどまでのものとはな…」
表情を変えることなく静かに言葉を発する魔王であったが、その声色には動揺のニュアンスが含まれていた。初陣であるはずの魔勇者がなんのためらいもなく同じ人間を次々と殺していたのだ。冒険者達からあふれ出す返り血が魔勇者の衣服を赤く染めていく。初めて振るうはずの武器をいとも簡単に使いこなし、急所を的確に捉えている。初めて戦場に出た時の自分とは比べ物にならない。魔王はそう戦慄した。
「これはやはり魔王様の『力』の影響なのでしょうか?」
「それもあるだろう…だが、これを見ろ」
魔王は映像を巻き戻し、ある場面で映像を止めた。魔勇者がスキンヘッドの弓使いの首と両腕を跳ね飛ばすシーンだ。二人はその時の魔勇者の表情に注目した。
「…笑っている…?」
彼女の笑みはいくつもの修羅場を超えてきたと自負する二人がこれまでに見たこともないほどにぞっとするものであった。
「…これは彼女が元々抱いていたものであろう…」
人間、いや、心ある生物は誰しも大なり小なり闇の感情を秘めている。『魔法』をはじめとするこの世界の力はそういった感情によってその効果を増幅させることができる。特に『魔王の力』は闇の感情と相性が良く、より強い狂気や憎悪を持つ者ほどより強い効果を発揮する。つまり、この映像は彼女の中のドス黒い感情が『魔王の力』と適合したことを証明している。
さらに驚いたのは魔勇者が敵の命を喰らった映像だ。魔王自身も敵の生命力を吸収する魔法を得意としているが、このような形で魔勇者が使うことができるようになるとは思わなかった。もしかしたら、彼女がこのまま成長すればこの事象のように魔王が持つ他の能力を何かしらの形で使うことができるようになるかもしれない。魔王はそんな予感を抱いた。
「この映像は厳重に管理せよ…」
「ははっ」
魔王から目玉を受け取ったゴードンは一礼し、静かに隠し扉から退室した。
「…これは面白いことになりそうだ」
あの少女が魔勇者として魔王に選ばれたのは事実上偶然であった。しかし、ここまで『魔王の力』と適合し、秘められた才能を発揮するとは誰が想像したであろうか。彼女は自分の想像を超える何かになる。それを見届けるためならばこの命を懸ける価値がある。魔王はそう予感し、不思議な高揚感を覚えた。
「…次回も良い肉をくれてやらんといかんな、これは…」
魔王は楽しそうにそう呟いた。
その映像を見たゴードンが驚愕の声をあげた。ヌコが持っていた紫水晶の目玉。それは映像を記録する道具であった。目玉から発せられた光は魔王の間の壁に記録された映像を映した。その映像にはルロウの森にて冒険者一行と交戦する魔勇者が映っていた。
「…まさか、これほどまでのものとはな…」
表情を変えることなく静かに言葉を発する魔王であったが、その声色には動揺のニュアンスが含まれていた。初陣であるはずの魔勇者がなんのためらいもなく同じ人間を次々と殺していたのだ。冒険者達からあふれ出す返り血が魔勇者の衣服を赤く染めていく。初めて振るうはずの武器をいとも簡単に使いこなし、急所を的確に捉えている。初めて戦場に出た時の自分とは比べ物にならない。魔王はそう戦慄した。
「これはやはり魔王様の『力』の影響なのでしょうか?」
「それもあるだろう…だが、これを見ろ」
魔王は映像を巻き戻し、ある場面で映像を止めた。魔勇者がスキンヘッドの弓使いの首と両腕を跳ね飛ばすシーンだ。二人はその時の魔勇者の表情に注目した。
「…笑っている…?」
彼女の笑みはいくつもの修羅場を超えてきたと自負する二人がこれまでに見たこともないほどにぞっとするものであった。
「…これは彼女が元々抱いていたものであろう…」
人間、いや、心ある生物は誰しも大なり小なり闇の感情を秘めている。『魔法』をはじめとするこの世界の力はそういった感情によってその効果を増幅させることができる。特に『魔王の力』は闇の感情と相性が良く、より強い狂気や憎悪を持つ者ほどより強い効果を発揮する。つまり、この映像は彼女の中のドス黒い感情が『魔王の力』と適合したことを証明している。
さらに驚いたのは魔勇者が敵の命を喰らった映像だ。魔王自身も敵の生命力を吸収する魔法を得意としているが、このような形で魔勇者が使うことができるようになるとは思わなかった。もしかしたら、彼女がこのまま成長すればこの事象のように魔王が持つ他の能力を何かしらの形で使うことができるようになるかもしれない。魔王はそんな予感を抱いた。
「この映像は厳重に管理せよ…」
「ははっ」
魔王から目玉を受け取ったゴードンは一礼し、静かに隠し扉から退室した。
「…これは面白いことになりそうだ」
あの少女が魔勇者として魔王に選ばれたのは事実上偶然であった。しかし、ここまで『魔王の力』と適合し、秘められた才能を発揮するとは誰が想像したであろうか。彼女は自分の想像を超える何かになる。それを見届けるためならばこの命を懸ける価値がある。魔王はそう予感し、不思議な高揚感を覚えた。
「…次回も良い肉をくれてやらんといかんな、これは…」
魔王は楽しそうにそう呟いた。
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