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第六章
叫ぶ少女
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空が西から赤く染まる夕暮れ時。木々が生い茂る森の中。そんな時間まで私は今日も元気に冒険者を狩りまくっていた。今日の装備は大剣。その刃は夕日よりも赤く染まっている。
冒険者達の間でも私の悪名は本格的に広まってきたらしく、私を見つけるなり突撃してくる者が増えてきた。おそらく賞金か何かでもかけられているのだろう。もっとも、その実力はお察しのものだが。
「…ふう、こんなものかしら」
ここはクラウディ大陸北部に位置するアカフク地方。先日、その西部に拠点を構え、アカフク支部長を務める魔族がある冒険者に討ち取られたという情報が入った。魔王はその地域を一時的に放棄することを決定。残存勢力の撤退の殿のために私が呼ばれたというわけだ。
周囲から敵の気配が途絶えたことを確認した私は大剣を地面に突き刺し、一息ついた。
「…今のところ大丈夫みたいね…」
私は自分の手のひらを見つめた。ゾート王国以来の大規模な戦闘となったわけだが、どうにか力は制御できているようだ。吸収しすぎた生命力は魔王が管理しているらしいが、いまだにどういう仕組みかいまいち理解できない。
以前は生命力を一気に吸収した影響で私は『魔人』とやらに変貌したらしい。影でウーナが撮影していたらしい映像をあの後見せられたが、なかなか禍々しい姿であった。その時の記憶はあいまいだが感覚は身体に残っている。
全身が燃え上がるように熱くなり、全て壊せと叫ぶかのように胸の内が騒ぐ。そんな感覚であった。それらに身を委ねていれば近くにいたメイリスさえ手にかけていたかもしれない。そう考えるとゾッとする。
しかし、漫画やラノベを読んだことがある身として考えると、再びあの姿にならなくてはならない展開になりそうな気がする。もしそうなった時、私はその力を制御できるだろうか。最近ズワースから受けた修行はそれを見越してのものかもしれない。あの竜のことだ。そのくらい考えていそうだ。
「…まぁ、考えても仕方ないか…」
そろそろメイリス達と合流しなければ。彼女達は遠くで残った魔族達の撤退の援護を終えた頃だろう。
「……そぅ…」
ん?誰かの声がした。ほどなくして何かが木を叩く音が聞こえた。どこから?
「…くそぅ…」
女の声だ。そしてまた木を叩く音が聞こえた。かなり強い力で叩いているようだ。私は引っこ抜いた大剣を構えて周囲を警戒した。
「くそう!くそう!」
うお!急に声が大きくなった。近いぞ!また木を叩いている。
「くそうくそうくそうくそう!」
そう何度も言いながら声の主は木を何度も叩いている。私は近くの木に身を隠しながら辺りを窺った。木の陰からちらっと顔を出すと、声の主らしき人物の姿が見えた。
「くそおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
目に映ったのはすごい表情で叫びながら自分が持つ杖を木に向かって叩きまくる女の魔法使いだった。見たところ、緑の髪のポニーテールが目立つ私と同じくらいの年齢の少女だ。ずいぶんと鬼気迫る様子であり、正直近づきたくない。何があった?乱暴に使われた杖は大きな音をたててとうとうへし折れた。
「はぁ…はぁ…」
叩き疲れたのか、折れた杖を地面に落とし、少女は膝に手をついて息を切らせていた。
「どうして…どうして…」
呟きながら少女は顔を上げた。その目には涙が浮かんでいた。
「ちょ…ちょっとどうしたの?」
思わず私は彼女に近づき、声をかけていた。気にする必要などないはずなのに、ほとんど条件反射で動いていた。
「ふやっ?」
さすがに驚いたようだ。
「ああ、ごめんごめん。近くを通りかかったらすごい声したもんでさ」
苦笑しながら私は通りすがりを装った。ちょっと苦しいかな?
「あ…う…ぅ…」
「ん?」
少女はさらに目をうるませていた。
「うえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「おわ!」
急に抱きつかれた。よほど辛い事情があったのか少女は私の胸にうずくまり、ただひたすらに泣きじゃくる。
「な…何があったの?」
冒険者達の間でも私の悪名は本格的に広まってきたらしく、私を見つけるなり突撃してくる者が増えてきた。おそらく賞金か何かでもかけられているのだろう。もっとも、その実力はお察しのものだが。
「…ふう、こんなものかしら」
ここはクラウディ大陸北部に位置するアカフク地方。先日、その西部に拠点を構え、アカフク支部長を務める魔族がある冒険者に討ち取られたという情報が入った。魔王はその地域を一時的に放棄することを決定。残存勢力の撤退の殿のために私が呼ばれたというわけだ。
周囲から敵の気配が途絶えたことを確認した私は大剣を地面に突き刺し、一息ついた。
「…今のところ大丈夫みたいね…」
私は自分の手のひらを見つめた。ゾート王国以来の大規模な戦闘となったわけだが、どうにか力は制御できているようだ。吸収しすぎた生命力は魔王が管理しているらしいが、いまだにどういう仕組みかいまいち理解できない。
以前は生命力を一気に吸収した影響で私は『魔人』とやらに変貌したらしい。影でウーナが撮影していたらしい映像をあの後見せられたが、なかなか禍々しい姿であった。その時の記憶はあいまいだが感覚は身体に残っている。
全身が燃え上がるように熱くなり、全て壊せと叫ぶかのように胸の内が騒ぐ。そんな感覚であった。それらに身を委ねていれば近くにいたメイリスさえ手にかけていたかもしれない。そう考えるとゾッとする。
しかし、漫画やラノベを読んだことがある身として考えると、再びあの姿にならなくてはならない展開になりそうな気がする。もしそうなった時、私はその力を制御できるだろうか。最近ズワースから受けた修行はそれを見越してのものかもしれない。あの竜のことだ。そのくらい考えていそうだ。
「…まぁ、考えても仕方ないか…」
そろそろメイリス達と合流しなければ。彼女達は遠くで残った魔族達の撤退の援護を終えた頃だろう。
「……そぅ…」
ん?誰かの声がした。ほどなくして何かが木を叩く音が聞こえた。どこから?
「…くそぅ…」
女の声だ。そしてまた木を叩く音が聞こえた。かなり強い力で叩いているようだ。私は引っこ抜いた大剣を構えて周囲を警戒した。
「くそう!くそう!」
うお!急に声が大きくなった。近いぞ!また木を叩いている。
「くそうくそうくそうくそう!」
そう何度も言いながら声の主は木を何度も叩いている。私は近くの木に身を隠しながら辺りを窺った。木の陰からちらっと顔を出すと、声の主らしき人物の姿が見えた。
「くそおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
目に映ったのはすごい表情で叫びながら自分が持つ杖を木に向かって叩きまくる女の魔法使いだった。見たところ、緑の髪のポニーテールが目立つ私と同じくらいの年齢の少女だ。ずいぶんと鬼気迫る様子であり、正直近づきたくない。何があった?乱暴に使われた杖は大きな音をたててとうとうへし折れた。
「はぁ…はぁ…」
叩き疲れたのか、折れた杖を地面に落とし、少女は膝に手をついて息を切らせていた。
「どうして…どうして…」
呟きながら少女は顔を上げた。その目には涙が浮かんでいた。
「ちょ…ちょっとどうしたの?」
思わず私は彼女に近づき、声をかけていた。気にする必要などないはずなのに、ほとんど条件反射で動いていた。
「ふやっ?」
さすがに驚いたようだ。
「ああ、ごめんごめん。近くを通りかかったらすごい声したもんでさ」
苦笑しながら私は通りすがりを装った。ちょっと苦しいかな?
「あ…う…ぅ…」
「ん?」
少女はさらに目をうるませていた。
「うえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「おわ!」
急に抱きつかれた。よほど辛い事情があったのか少女は私の胸にうずくまり、ただひたすらに泣きじゃくる。
「な…何があったの?」
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