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第八章
二手に分かれる
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そんなこんなで四人と一体はゴロンダ遺跡に侵入した。遺跡の内部の構造はペスタ地方にあったタタリア遺跡と少し似ていたが、罠の気配はなく、先に侵入した山賊達が荒らしていった痕跡があちこちに見られた。
静葉達は周囲を警戒しながら細長い通路をまっすぐ歩いていた。
「…今更気が付いたんだけど、今度のそれってちょっとでかいのね」
静葉は目の前に浮かぶフロートアイマーク3RXに声をかけた。以前、タタリア遺跡で同行したマーク2カスタムは野球ボールほどの大きさであったが、このマーク3RXはドッジボールほどの大きさであった。
『ああこれ?今回のマーク3RXは色んな新機能を追加したものでね。その影響で以前のタイプより大型化しちゃったのさ。この辺は今後の課題だね』
タヌキ風の尻尾をピコピコと振りながらフロートアイが声を発した。
「新機能?」
『そう!例えば今、このフロートアイを中心とした広範囲内に妨害魔法を発動させているんだ。これによって外側からは中のみんなの魔力を探知することができない。つまり、目視以外で僕達を発見することができないのさ』
「妨害魔法…いわゆるジャミングってヤツね」
『さらに、この妨害魔法は強めの魔力をも隠すことができるくらい強力でね。理論上は魔王様が本気で暴れても気づかれないはずさ。フフン』
フロートアイの向こう側で操縦しているコノハが鼻を鳴らした。
『他にも――おや?』
話の途中で静葉達は足を止めた。正面に目を向けると、通路がT字路になっており、左右に道が分かれていた。
「これは…どっちに進めばいいのかしら?」
静葉は首を傾げた。
『うーん。どちらからも魔力の反応は複数あるみたいだね』
「どっちにも敵はいるってことね」
「それじゃ、二手に分かれない?」
すかさずメイリスが提案した。
『お、いいね。その方が効率良く探索できそうだ』
「でもはぐれたらどうするの?意外と複雑よこの遺跡」
『ふふふ。心配はご無用さ』
静葉の懸念に対し、不敵に笑いながらコノハはフロートアイを操作し、尻尾の先端から一本の楔形の石を床に打ち込んだ。
「それは何?」
『特殊な魔力信号を発する目印さ。迷ったらこれをたどるようにしてね』
「ビーコンってヤツね。それじゃ、私とメイリスは左に行くからあなた達は右をお願いね」
静葉はエイルとマイカに指示を出した。
「わかったわ。じゃあ、何かあったらここで落ち合うとしましょう」
マイカは快く承諾した。一方でエイルはどこか不服そうな表情をしていた。
「ほら、行くわよ」
「あ、は…はい…」
戸惑うエイルの腕を強引に引っ張り、マイカは右の通路へ進んだ。
「…であんたはどっちにつくの?」
『そりゃあ魔勇者様の方に決まってるでしょ。そっちの方がおもしろ…コホン。良いデータが採れそうだからね』
「オイ。本音が一瞬漏れてるわよ」
『イヤだなぁ。どっちも本音だよ』
「余計タチ悪いわ」
静葉は苦い顔でツッコミを入れた。
「まぁいいじゃない。私達もデートとしゃれこみましょ」
メイリスは静葉の左腕に抱き着き、自分の胸に押し付けた。
「ちょ…当たってるわよ」
「うふふ。当ててんのよ」
メイリスはわざとらしい笑みを浮かべた。
「もう…ラノベの主人公じゃないんだし、そんなんいらないわよ」
静葉は困惑しながら振りほどこうとしたが、見た目以上の力によってがっちりと押さえられていた。
「だいたい、あなたの身体冷たいのよ。触れてるだけでヒヤッとすんのよ」
「ごめんなさいね。冷え性なものでね」
「嘘つけアンデッド!」
『あははは。デートの様子はバッチリ撮ってあげるからねー』
「やめんかデバガメ!」
周囲を飛び回るフロートアイを振り払うかのように静葉は赤いマフラーをブンブンと振り回した。
静葉達は周囲を警戒しながら細長い通路をまっすぐ歩いていた。
「…今更気が付いたんだけど、今度のそれってちょっとでかいのね」
静葉は目の前に浮かぶフロートアイマーク3RXに声をかけた。以前、タタリア遺跡で同行したマーク2カスタムは野球ボールほどの大きさであったが、このマーク3RXはドッジボールほどの大きさであった。
『ああこれ?今回のマーク3RXは色んな新機能を追加したものでね。その影響で以前のタイプより大型化しちゃったのさ。この辺は今後の課題だね』
タヌキ風の尻尾をピコピコと振りながらフロートアイが声を発した。
「新機能?」
『そう!例えば今、このフロートアイを中心とした広範囲内に妨害魔法を発動させているんだ。これによって外側からは中のみんなの魔力を探知することができない。つまり、目視以外で僕達を発見することができないのさ』
「妨害魔法…いわゆるジャミングってヤツね」
『さらに、この妨害魔法は強めの魔力をも隠すことができるくらい強力でね。理論上は魔王様が本気で暴れても気づかれないはずさ。フフン』
フロートアイの向こう側で操縦しているコノハが鼻を鳴らした。
『他にも――おや?』
話の途中で静葉達は足を止めた。正面に目を向けると、通路がT字路になっており、左右に道が分かれていた。
「これは…どっちに進めばいいのかしら?」
静葉は首を傾げた。
『うーん。どちらからも魔力の反応は複数あるみたいだね』
「どっちにも敵はいるってことね」
「それじゃ、二手に分かれない?」
すかさずメイリスが提案した。
『お、いいね。その方が効率良く探索できそうだ』
「でもはぐれたらどうするの?意外と複雑よこの遺跡」
『ふふふ。心配はご無用さ』
静葉の懸念に対し、不敵に笑いながらコノハはフロートアイを操作し、尻尾の先端から一本の楔形の石を床に打ち込んだ。
「それは何?」
『特殊な魔力信号を発する目印さ。迷ったらこれをたどるようにしてね』
「ビーコンってヤツね。それじゃ、私とメイリスは左に行くからあなた達は右をお願いね」
静葉はエイルとマイカに指示を出した。
「わかったわ。じゃあ、何かあったらここで落ち合うとしましょう」
マイカは快く承諾した。一方でエイルはどこか不服そうな表情をしていた。
「ほら、行くわよ」
「あ、は…はい…」
戸惑うエイルの腕を強引に引っ張り、マイカは右の通路へ進んだ。
「…であんたはどっちにつくの?」
『そりゃあ魔勇者様の方に決まってるでしょ。そっちの方がおもしろ…コホン。良いデータが採れそうだからね』
「オイ。本音が一瞬漏れてるわよ」
『イヤだなぁ。どっちも本音だよ』
「余計タチ悪いわ」
静葉は苦い顔でツッコミを入れた。
「まぁいいじゃない。私達もデートとしゃれこみましょ」
メイリスは静葉の左腕に抱き着き、自分の胸に押し付けた。
「ちょ…当たってるわよ」
「うふふ。当ててんのよ」
メイリスはわざとらしい笑みを浮かべた。
「もう…ラノベの主人公じゃないんだし、そんなんいらないわよ」
静葉は困惑しながら振りほどこうとしたが、見た目以上の力によってがっちりと押さえられていた。
「だいたい、あなたの身体冷たいのよ。触れてるだけでヒヤッとすんのよ」
「ごめんなさいね。冷え性なものでね」
「嘘つけアンデッド!」
『あははは。デートの様子はバッチリ撮ってあげるからねー』
「やめんかデバガメ!」
周囲を飛び回るフロートアイを振り払うかのように静葉は赤いマフラーをブンブンと振り回した。
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