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第273話 帰路3
しおりを挟む果物を食べ終わると、俺達は竜車に乗り、また山道を進んでいく。
景色は綺麗だ。ゆっくりと流れる時間に、ここ数日のドタバタ加減を忘れ、リラックスができた。
うとうとして来ると、隣のフォルタニアが、優しく「少し竜車を止めて休みますか?」と言いながら起こしてくれた。
俺は「すまん、大丈夫だ」と、意識を覚醒させ、フォルタニアに言葉短く告げる。
「この先に町がありますが、あまり治安がよくないので少し離れた山の中で、今夜は休みましょう」
「治安がよくないか。まあ、荷台で寝れるし、最低限の雨風は防げる設計だ。異論はねぇよ」
すっかり辺りが暗くなってきた頃、フォルタニアの言葉通り、山道の端に竜車を止め、休む事にする。
「一応、張っとくか」
俺は結界魔法を展開する。竜車を円状に包み込む結界だ。夜なので、それなりに強めの結界だ。
まあ、魔物は勿論、ウルスラの軽い突進ぐらいなら防げるレベルの物を張った。
「流石です、これなら安全ですね」
フォルタニアからもお墨付きを貰えた。
その後、よそよそと御者席から、後ろの荷台へと移ると〝アイテムストレージ〟から〝光の結晶〟を取り出し、明かりを点ける。
シャワーの代わりに〝浄化の結晶〟で全身を服ごと洗浄し、本日3度目となる食事の準備をする。
一応、これで1日3食を食べたことになる。そこだけ見ると、健康にもよさそうだ。
アリスとの買い出しで、日用品は一通り買っておいてある。次いで俺は──鍋、様々な結晶、皿、スプーン、野菜や肉や魚に牛乳や調味料、色んな物を取り敢えず取り出した。
「食事は何か適当に作るとして、さて何を作るか」
「ユキマサ様は料理もできるのですか?」
「できるって程でも無いが、元いた世界の孤児院だと食事当番とかがあったからな? 最低限、普通の人ぐらいには作れると思うぞ──それにスキルに〝料理師〟ってのもあるしな?」
「〝料理師〟? 料理スキルですか、珍しいですね」
「何でも、俺の作った料理は食べると、怪我の回復と魔力の回復があるらしいぜ?」
「そんな効果が? ユキマサ様はとことん規格外ですね。戦闘能力、治癒能力に+そんなサポート能力まで持ち合わせているとは──」
「まあ、治癒能力に関しては自分には使えないんだけどな? これは最近知った。というか、こないだの魔王戦争の魔王戦で初めて知った」
「不思議な制限の治癒魔法ですね。聞いたことがありません。病気が治せるというのも驚きましたが」
うーん、と可愛らしくフォルタニアが首を捻る。
「さて、じゃあ、今日は俺が何か作るか──フォルタニア、何が食べたい? 材料は一通りあるから何でも作れるぞ──?」
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