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第323話 エメラルドの約束22
しおりを挟むクレープを食べ終え、竜車に戻るとリーダーさん達が皆戻ってきていた。
遅くなって怒られるかと思ったが、全くそんなことは無かった。
その後、皆で街を見た。
リーダーさん達は買い出しもしていた。
物珍しそうにする私に、リーダーさんやシュナさんが優しく街の説明をしてくれた。
夕刻、竜車に戻ると。夕食の準備だ。
1日3食と言うのは私には考えられない厚待遇だ。
街で食材を買って、皆が作った料理はどれもとても美味しかった。調子に乗った私はおかわりもした。
──翌日。
早朝から出発だ。朝食はおにぎり。
食べてばっかだ。1日3食は本当に贅沢だと思う。
道中・荷台の中でのこと。
「エメレアちゃん、具合はどう?」
キサラギさんが私に聞いてくる。
「はい、今は落ち着いています」
「よかった。何かあったらすぐ言ってね?」
トントンと、自身の隣を叩き「おいで」と、キサラギさんが私を呼ぶ。
私が隣に行くと「ホントかわいー♪」と頭を撫でられた。流石に照れる。お世辞でも嬉しい。
「キサラギさんは冒険者は長いんですか?」
「私? 5年ぐらいかな? ちなみに今は16歳よ」
「明るくていい冒険者パーティーですね」
「あはは、ありがとう」
あっけらかんに、でも上品に笑うキサラギさん。
「トアのお陰かな。最初はトア1人から始めた冒険者パーティーだったんだよ。私もトアに拾ってもらった口だしね。他に女の子もいるから居心地もいいし」
「いい人たちですよね。シュナさんには本当にお世話になって、レベッカさんにも飴とか貰いました」
「あー、レベッカは飴だけか。まあ名目上はシュナがエメレアちゃんのお世話係りってことになってるから、あんまり近づけないのかな?」
と、その時だ──
「──敵襲!! 戦闘準備だ!」
リーダーさんの焦ったような声が響く。
「エメレアちゃん、私でも誰でもいいから、絶対に離れないで。1人になっちゃダメよ」
荷台から顔を出すと、10名ぐらいの武装した柄の悪い男たちに竜車は囲まれていた。
「盗賊……」
キサラギさんが呟く。
「へぇ、女もいるじゃねぇか、ラッキー、ラッキー」
「頭、あの幼女は俺にくれよ!」
「物好きな奴だな。好きにしろ、俺は隣の巨乳だな」
私とキサラギさんを見て笑い声をあげる男たち。
「このっ、下衆め……!」
睨むキサラギさん。
いつの間にか両手には魔力銃が握られている。
すると、リーダーさんが私とキサラギさんを庇うように腕を横に伸ばし──
「先に言っておきますが、荷物も仲間もあなた方には一切お渡しいたしません。お引き取りください」
と、淡々と言う。
「なんだと、てめぇ! 状況理解してんのか?」
「それはこっちの台詞だ!」
エルセムが槍で男を攻撃する。
転んだ男に合わせてレイトが爆発魔法を使う。
「これで1人減ったね、下がるなら今だよ?」
冷たい声でトアが言う。
「ふざけるなぁ!」
盗賊の頭がリーダーさんに向かう。危ない!
リーダーさんはその場から動かず腰の剣を抜く。盗賊の頭がリーダーさんの心臓めがけて剣を刺す──
その瞬間リーダーさんが最低限の動作で剣を弾く。
驚く、盗賊の頭の首筋に剣を当てる。
「盗賊の討伐には褒賞金がもらえるんだったね」
「ま、まってくれ、悪かった。帰る、帰るから!」
「家の仲間を下衆な目で見ていて、そんな甘い考えが通用すると思うか? お前はここで終わりだ」
トアは悩んだ。首を切ってしまうのは簡単だ。
だが、トラウマを持つエメレアがいる場所で斬首は躊躇った。
結果、剣の柄の部分で頭を強く叩き、気絶させ、縄で縛った。
他の連中もエルバを始め、ライグラファ達に縛り上げられている。
全員を気絶させ縛り上げた所で、一番足の速いエルバが1人〝ルベンダの街〟に憲兵を呼びに行った。
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