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第348話 夜営2
しおりを挟む──深夜。何回か魔物が出た。
まあ俺は〝魔力銃〟の練習になるから、いいんだけど。ちびちびと〝ドロップアイテム〟も貯まるしな。
「……ん、ユキマサ君、そろそろ見張り交代するよ」
「別に俺は大丈夫だぞ」
「ダメだよ。睡眠は取らないと」
「じゃあ、少し変わって貰うかな」
「うん、お休みなさい」
*
「ユキマサ君、朝だよー」
「……ん、え、朝?」
ヤベッ、寝過ごした。
「悪い、寝入っちまった。魔物は?」
「全然、不思議なぐらい出なかったよ」
バリバリ日が出てるな。
クレハに悪いことをした。
──その後、パンとベーコンで朝食を取り、今日も旅を進めて歩いて行く。
「アーメジスト山脈って言ったか? ここを抜けると何処に出るんだ?」
「うん、方角次第で色々と行けるけど。このまま行くと恐らくは〝フェフジンテの街〟に出ると思うよ」
「今日は宿に泊まりたい物だな」
贅沢か? まあ、最悪、周りに結界張って寝るか。
──ちょっと急ぎ目で進むこと昼過ぎ。
「お、開けてきたな。こりゃ牧場だな」
広がる牧草、田舎染みた道に出る。
「というか、凄い移動だったね。普通の道じゃなかったよ。こんな早く〝アーメジスト山脈〟を抜けるとは、3日はかかると思ってた」
ヘトっとするクレハ。
「クレハの瞬間移動のお陰もあるだろ?」
「うーん、それだけじゃ無かったと思うけど」
それから歩くこと30分──
「あ、街の入り口だね。私、先に入ってちょっと様子見てくるね。ユキマサ君の噂、どうなってるか」
「悪いな、頼めるか?」
「うん、任せて!」
と、言うことで街の外でしばし待つ。
うーん、辺り一面緑だな。
街との境界線がハッキリしてるが。
街を囲う柵(ルスサルペのより立派)を境目に、こっちは草、向こうは地面でクッキリと別れている。
にしても、牧草が綺麗だな。
草食ってるあの牛が縞牛か?
見たまんま、シマウマみたいに縞模様だし。
牛は基本的に南北を向く傾向があるらしいが、この世界の牛も南と北を向いてるのかね?
と、その時だ。
空から僧服の大男が目の前に降ってきたのは。
「──成敗」
衝撃波。寸での所で避けるが、威力は強い。
「何だ!?」
スキンヘッドに細い目、片目には深い傷跡が残っている。全体的にゴツいが坊さんかコイツ!?
錫杖と数珠持ってるし、何なんだよ。昼下がりに!
「拙者はヒルグラム・パンサー。六魔導士の〝仙極〟と言った方が分かりやすいか──〝国狩り〟の少年よ、大人しく投降したまえ」
「断ったらどうする?」
「ならば仕方ない。力ずくでも」
速いッ! 後ろか!
「喝!」
ドンッと、俺は衝撃波を食らう。
圧縮された攻撃の範囲は狭いが威力は強い。
吹き飛ばされた先は牧場とは反対の森。
ガササササっと、木々を薙ぎ倒し俺は止まる。
「イテテ……あれが噂の〝仙極〟か」
直ぐ様、追撃が来る。
「頑丈なことだ」
バンッと、手を合わせると、そこから広範囲の衝撃波が波紋のように広がる。俺は上に飛び、攻撃の範囲外に移動しようとするが──
(──!? 人、マズい、直撃するぞ!?)
藁で作られたザルを持ち、辺りの植物を採取していた様子の少女は仙極の放った衝撃波が木々を薙ぎ倒し迫り来るサマを、口を開け非現実的に唖然として見ている。
(間に合うか、いや間に合わせろッ!)
急ぎ少女の前に移動した俺は〝アイテムストレージ〟から取り出した、魔力を纏った月夜を地面に突き刺し、衝撃波に衝撃波を当て、攻撃を相殺する。
攻撃で生まれた疾風で俺のフード付きマントのフードが取れる。
「ったく、一般人巻き込んでんじゃねぇよ」
クソ、戦わなきゃダメか。
六魔導士とガチバトルは初だな。
「おい、あんた、逃げな。ここは危な──」
「──こっちです。早く!」
俺の手を引っ張る少女が、素人丸出しの野球投げで、えいっと投げたのは煙幕!?
あっと言う間に辺りを煙が覆っていく。
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