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僕は傷つかないから
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僕の好きな人は近所に住む10歳上のお兄ちゃん。お兄ちゃんはコンビニでバイトをしていて、お菓子をよく買う僕に時々感想を聞いてきた。
ご飯も食べろとかまた一人なのとか心配してくれて、じゃあお兄ちゃんが作ってって言ったら迷ったけど来てくれた。
「お父さんとお母さんは?」
「先月から帰って来ない日の方が多い。『もう10歳になったんだから大丈夫でしょ』って」
お兄ちゃんは驚いた顔をして、それから優しい顔になって無言で僕の頭に手を置いた。
お兄ちゃんは料理が上手。勉強が苦手。すぐムキになるけどすぐ謝る。なんだかかわいいなって思い始めた頃、お兄ちゃんが友達から「コウちゃん」と呼ばれていることを知った。納得したようなモヤッとしたような落ち着かない気持ちになった。
僕も「コウちゃん」って呼んだら「お兄ちゃんって呼びなさいガキんちょが」って言われてしまった。
「中学生になったよ。もうコウちゃんって呼んでもいい?」
「俺より小さいくせに何言ってんだ」
そんなに変わらないじゃないか。しかも僕はこれから成長期。きっとすぐに抜かせる。
そしてやっぱり二学期最初の身体測定で追い越した。
「見て!今日の身体測定!身長抜かしたらコウちゃんって呼んでいいんだよね?」
「5ミリじゃないか。俺だってまだ伸びてるし」
残念ながらコウちゃんはそれ以上あまり伸びなかった。僕は雨後の筍というよりは少しずつ順調に伸びていった。「また伸びた?」って複雑な表情で言うから僕も背のことを言いにくくなった。
今度はハーフの顔を活かして挑戦だ。
「高校生になったよ。お祝いしてくれる?」
壁ドン追加。
「いいよ。何が欲しい?」
まだ声変わりが始まったばかりだけど精一杯低めに、かつ甘えるように。
「コウちゃんって呼ばせて」
「……分かったよ」
それからコウちゃんとは家にいるより出かけることの方が多くなった。感想を聞きたいってスイーツを食べに連れていってくれる。
製菓会社に勤めてるからだよね?家にいたら僕に押し倒されるかもって怯えてるんじゃないよね?
セクシーを封印して一年。コウちゃんは今まで通り。
ガラス越しに食品サンプルを見るコウちゃん。甘い物ばっかり食べてるのに細い体。27歳とは思えない子供みたいな肌。
頬を見ていたら視線を感じたのか、ガラス越しに目が合った。
「決まった?」
わざと子供っぽく振舞って熱い視線をごまかす。
「これとこれで迷ってる。ねえコウちゃん、二つ頼んで半分こしよ?」
コウちゃんが優しく笑う。
「二つ入るだろ?遠慮すんなよ」
その日のことをコウちゃんの会社の人が見ていて、来年のイメージキャラクターにスカウトされた。モデルには興味ないけど引き受ければコウちゃんと一緒にいられる。
「撮影の時、コウちゃんもいてくれる?」
「いいよ。さすがにモデルとなったら玄樹でも緊張するんだな」
即答してくれたことも、普段は緊張しないと知っていてくれたことも嬉しい。
親への説明は広報課の主任さんとコウちゃんでしてくれることになった。モデルはあなたでいいんじゃない?ってくらいの顔とスタイルの主任さんが、横柄な父親にも女王様みたいな母親にも丁寧に対応してくれる。
契約書にサインしてコウちゃんと主任さんが帰って、仮面夫婦は仮面を外してそれぞれの家に帰った。
僕とコウちゃんのはそのままに、他の人のコーヒーカップを片付ける。コウちゃんが帰ってきて手土産のお菓子を食べ始めた。片付け終えた僕も隣に座って食べ始める。
「相変わらずか」
「気にしないで。僕は大丈夫だから」
何回も繰り返したこの会話。いつまでコウちゃんは繰り返してくれるかな。
彼女ができたらどうなるんだろう?それっぽい人がいたことは何回かあるけど毎回長くは続かなかったし、本人は違うって言ってた。
違うのなら分かっても参考にならないけど、彼女たちに共通点はあまりなかった。コウちゃんのタイプが分からない。「昔はとっかえひっかえだったくせに」って言ってる人もいたけど本当かな。振り向いてもらえなくての暴言だと信じたい。
ご飯も食べろとかまた一人なのとか心配してくれて、じゃあお兄ちゃんが作ってって言ったら迷ったけど来てくれた。
「お父さんとお母さんは?」
「先月から帰って来ない日の方が多い。『もう10歳になったんだから大丈夫でしょ』って」
お兄ちゃんは驚いた顔をして、それから優しい顔になって無言で僕の頭に手を置いた。
お兄ちゃんは料理が上手。勉強が苦手。すぐムキになるけどすぐ謝る。なんだかかわいいなって思い始めた頃、お兄ちゃんが友達から「コウちゃん」と呼ばれていることを知った。納得したようなモヤッとしたような落ち着かない気持ちになった。
僕も「コウちゃん」って呼んだら「お兄ちゃんって呼びなさいガキんちょが」って言われてしまった。
「中学生になったよ。もうコウちゃんって呼んでもいい?」
「俺より小さいくせに何言ってんだ」
そんなに変わらないじゃないか。しかも僕はこれから成長期。きっとすぐに抜かせる。
そしてやっぱり二学期最初の身体測定で追い越した。
「見て!今日の身体測定!身長抜かしたらコウちゃんって呼んでいいんだよね?」
「5ミリじゃないか。俺だってまだ伸びてるし」
残念ながらコウちゃんはそれ以上あまり伸びなかった。僕は雨後の筍というよりは少しずつ順調に伸びていった。「また伸びた?」って複雑な表情で言うから僕も背のことを言いにくくなった。
今度はハーフの顔を活かして挑戦だ。
「高校生になったよ。お祝いしてくれる?」
壁ドン追加。
「いいよ。何が欲しい?」
まだ声変わりが始まったばかりだけど精一杯低めに、かつ甘えるように。
「コウちゃんって呼ばせて」
「……分かったよ」
それからコウちゃんとは家にいるより出かけることの方が多くなった。感想を聞きたいってスイーツを食べに連れていってくれる。
製菓会社に勤めてるからだよね?家にいたら僕に押し倒されるかもって怯えてるんじゃないよね?
セクシーを封印して一年。コウちゃんは今まで通り。
ガラス越しに食品サンプルを見るコウちゃん。甘い物ばっかり食べてるのに細い体。27歳とは思えない子供みたいな肌。
頬を見ていたら視線を感じたのか、ガラス越しに目が合った。
「決まった?」
わざと子供っぽく振舞って熱い視線をごまかす。
「これとこれで迷ってる。ねえコウちゃん、二つ頼んで半分こしよ?」
コウちゃんが優しく笑う。
「二つ入るだろ?遠慮すんなよ」
その日のことをコウちゃんの会社の人が見ていて、来年のイメージキャラクターにスカウトされた。モデルには興味ないけど引き受ければコウちゃんと一緒にいられる。
「撮影の時、コウちゃんもいてくれる?」
「いいよ。さすがにモデルとなったら玄樹でも緊張するんだな」
即答してくれたことも、普段は緊張しないと知っていてくれたことも嬉しい。
親への説明は広報課の主任さんとコウちゃんでしてくれることになった。モデルはあなたでいいんじゃない?ってくらいの顔とスタイルの主任さんが、横柄な父親にも女王様みたいな母親にも丁寧に対応してくれる。
契約書にサインしてコウちゃんと主任さんが帰って、仮面夫婦は仮面を外してそれぞれの家に帰った。
僕とコウちゃんのはそのままに、他の人のコーヒーカップを片付ける。コウちゃんが帰ってきて手土産のお菓子を食べ始めた。片付け終えた僕も隣に座って食べ始める。
「相変わらずか」
「気にしないで。僕は大丈夫だから」
何回も繰り返したこの会話。いつまでコウちゃんは繰り返してくれるかな。
彼女ができたらどうなるんだろう?それっぽい人がいたことは何回かあるけど毎回長くは続かなかったし、本人は違うって言ってた。
違うのなら分かっても参考にならないけど、彼女たちに共通点はあまりなかった。コウちゃんのタイプが分からない。「昔はとっかえひっかえだったくせに」って言ってる人もいたけど本当かな。振り向いてもらえなくての暴言だと信じたい。
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