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僕は傷つかないから
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「僕が無理に頼んだんだよ。それでも僕の家、ポラロイド、服は脱がないって条件をヨコさんから付けてくれたんだよ。ヨコさんは良い人だよ!
それに!」
子供扱いされたことはショックだけど、子供じゃないもんとは言えなかった。根拠がない。
「それに?」
言えない。カニちゃんに振られて弱ってる今、色っぽくしたらその気になってくれるかもと思ったなんて。写真じゃなく生の僕がこんな格好してても保護者の態度。終わった。
「晃輝さんを誘惑したかったそうですよ。
カニちゃんに振られた今なら自分を見てくれるかもって」
「ヨコさん!」
ヨコさんは自分の荷物をまとめ始める。
「よく話し合って下さい。せっかく話せる距離にいるんだから」
バッグを肩に掛けて霧吹きを手に持って、ヨコさんは部屋を出かけて振り返る。
「戸締りして下さいね」
僕を待たずに部屋を出て、ドアの音が聞こえた。きっと二人にならないようにしてくれたんだ。
鍵を掛けて戻ってくると、コウちゃんはソファに座って下を向き、祈るように組んだ両手を額に当てている。その横にはさっきまでしっかり締められていたネクタイが無造作に置かれている。
「俺がカニちゃんに振られたって思ったのはなんで?」
なんでバレたのってこと?違うのにってこと?
「先週の撮影の時、微妙な空気だったでしょ?
告白して『友達だよ』って振られたあとみたいだなって」
コウちゃんは顔を上げない。
「喧嘩して仲直りしただけだよ」
ヨコさん凄い。
「喧嘩したの?コウちゃんとカニちゃんが?なんで?」
コウちゃんはため息をついて息を吸って一瞬止まってから話し始める。
「喧嘩じゃないな。
カニちゃんはさ、俺より後から入って来たのに俺より先に主任になったんだよ。今までそれをどうこう思ったことは無かった。
でも俺も主任になれるかもってなって忙しい時に『玄樹のために頑張ってるのに玄樹に寂しい思いをさせたら意味がない』っていう意味のことを優しく言われて……八つ当たりしたんだ」
そこまで言って体はそのままに少し顔を上げた。
主任になるのが僕のためなの?って訊きたかったのにコウちゃんの方が早かった。
「っていうか、そもそもなんで俺がカニちゃんを好きって前提なんだよ」
「最初の撮影の時に『チューして』ってやったカニちゃんを凄い目で見てたから」
コウちゃんはまた顔を隠してしまった。
「あれは怒ってたんだよ。『俺の玄樹に何やらすんだ』って。
とりあえず服ちゃんと着て、髪も拭けよ」
『俺の玄樹』!いつもこういう時は『うちの子』って言ってたのに!
正面に膝をついて、祈っているようなコウちゃんの両手首を掴んでほどく。それでもコウちゃんは顔の位置を変えない。
「いいから服着ろって」
顔を覗き込もうとして目がいったのは顔よりも。
「コウちゃん、反応してくれたんだ」
「……ごめん」
「なんで?嬉しい。こうなってもらいたくて頑張ったんだもん」
僕に掴まれているままの両手で僕の肩を押す。
撮影のために動かしてなかったらローテーブルにぶつかってたけど、そこに無いから押したんだろう。尻もちをついて離れた手で、コウちゃんはまた顔を隠してしまった。
「なってるよ!ずっと前から!一生懸命我慢してるのになんで邪魔するんだよ!」
なってたの?全然気づかなかった。っていうかなんで。
「なんで我慢してたの?」
「お前未成年だろ!10歳上の俺がそういうことしたら犯罪なんだよ!」
我慢してた理由ってそれだけ?
「法律が禁じてるのは『未成熟に乗じた不当な手段により行う性行為又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為』だよ」
コウちゃんがさっきより顔を上げる。
「…………どういうこと?」
「警視庁のホームページで調べたんだ。『真摯な交際関係にある場合は除かれます』って書いてあった。
コウちゃん、僕としたくなったのって遊び?」
「そんなわけないだろ!」
食い気味に即答してくれて口元がほころぶ。
コウちゃんの膝に手を置いて顔を見つめる。
「根本的な権利として性的自己決定権っていうのがあるんだって。処罰されるのは青少年が苦痛を感じるような、育成を阻害するものだけ」
コウちゃんの膝を少し開いて近づく。
「ここで拒まれた方が僕はショックだよ。
コウちゃんとなら僕は傷つかないから」
コウちゃんの肘より少し上を引き寄せるように掴む。
「このまま押し倒して」
それに!」
子供扱いされたことはショックだけど、子供じゃないもんとは言えなかった。根拠がない。
「それに?」
言えない。カニちゃんに振られて弱ってる今、色っぽくしたらその気になってくれるかもと思ったなんて。写真じゃなく生の僕がこんな格好してても保護者の態度。終わった。
「晃輝さんを誘惑したかったそうですよ。
カニちゃんに振られた今なら自分を見てくれるかもって」
「ヨコさん!」
ヨコさんは自分の荷物をまとめ始める。
「よく話し合って下さい。せっかく話せる距離にいるんだから」
バッグを肩に掛けて霧吹きを手に持って、ヨコさんは部屋を出かけて振り返る。
「戸締りして下さいね」
僕を待たずに部屋を出て、ドアの音が聞こえた。きっと二人にならないようにしてくれたんだ。
鍵を掛けて戻ってくると、コウちゃんはソファに座って下を向き、祈るように組んだ両手を額に当てている。その横にはさっきまでしっかり締められていたネクタイが無造作に置かれている。
「俺がカニちゃんに振られたって思ったのはなんで?」
なんでバレたのってこと?違うのにってこと?
「先週の撮影の時、微妙な空気だったでしょ?
告白して『友達だよ』って振られたあとみたいだなって」
コウちゃんは顔を上げない。
「喧嘩して仲直りしただけだよ」
ヨコさん凄い。
「喧嘩したの?コウちゃんとカニちゃんが?なんで?」
コウちゃんはため息をついて息を吸って一瞬止まってから話し始める。
「喧嘩じゃないな。
カニちゃんはさ、俺より後から入って来たのに俺より先に主任になったんだよ。今までそれをどうこう思ったことは無かった。
でも俺も主任になれるかもってなって忙しい時に『玄樹のために頑張ってるのに玄樹に寂しい思いをさせたら意味がない』っていう意味のことを優しく言われて……八つ当たりしたんだ」
そこまで言って体はそのままに少し顔を上げた。
主任になるのが僕のためなの?って訊きたかったのにコウちゃんの方が早かった。
「っていうか、そもそもなんで俺がカニちゃんを好きって前提なんだよ」
「最初の撮影の時に『チューして』ってやったカニちゃんを凄い目で見てたから」
コウちゃんはまた顔を隠してしまった。
「あれは怒ってたんだよ。『俺の玄樹に何やらすんだ』って。
とりあえず服ちゃんと着て、髪も拭けよ」
『俺の玄樹』!いつもこういう時は『うちの子』って言ってたのに!
正面に膝をついて、祈っているようなコウちゃんの両手首を掴んでほどく。それでもコウちゃんは顔の位置を変えない。
「いいから服着ろって」
顔を覗き込もうとして目がいったのは顔よりも。
「コウちゃん、反応してくれたんだ」
「……ごめん」
「なんで?嬉しい。こうなってもらいたくて頑張ったんだもん」
僕に掴まれているままの両手で僕の肩を押す。
撮影のために動かしてなかったらローテーブルにぶつかってたけど、そこに無いから押したんだろう。尻もちをついて離れた手で、コウちゃんはまた顔を隠してしまった。
「なってるよ!ずっと前から!一生懸命我慢してるのになんで邪魔するんだよ!」
なってたの?全然気づかなかった。っていうかなんで。
「なんで我慢してたの?」
「お前未成年だろ!10歳上の俺がそういうことしたら犯罪なんだよ!」
我慢してた理由ってそれだけ?
「法律が禁じてるのは『未成熟に乗じた不当な手段により行う性行為又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為』だよ」
コウちゃんがさっきより顔を上げる。
「…………どういうこと?」
「警視庁のホームページで調べたんだ。『真摯な交際関係にある場合は除かれます』って書いてあった。
コウちゃん、僕としたくなったのって遊び?」
「そんなわけないだろ!」
食い気味に即答してくれて口元がほころぶ。
コウちゃんの膝に手を置いて顔を見つめる。
「根本的な権利として性的自己決定権っていうのがあるんだって。処罰されるのは青少年が苦痛を感じるような、育成を阻害するものだけ」
コウちゃんの膝を少し開いて近づく。
「ここで拒まれた方が僕はショックだよ。
コウちゃんとなら僕は傷つかないから」
コウちゃんの肘より少し上を引き寄せるように掴む。
「このまま押し倒して」
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