僕は傷つかないから

ritkun

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うちの子が知らないこと

2(R18)

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 今までは玄樹げんきの両親の寝室でしていた。二人はどうしても必要な時しか来ないし、来ても泊まらずにそれぞれの恋人との家に帰る。
 それでも家を建てた時は仲が良かったようで、寝室は防音をしっかりさせていた。

 俺のアパートにも玄樹げんきが引っ越した社宅にもそんな設備は無いし壁も薄い。引っ越してからは声を我慢させていたし動きも抑えていた。
 持田さんのマンションならそんな必要は無いんだろうな。

 玄樹げんきは今日が終業式だった。世間もクリスマスで金曜日。団地一棟借り上げて社宅にしたばかりで、住んでいるのは玄樹げんきと広報の横松だけ。横松は泊まりで出掛けると言っていた。それにご近所さんもお互い様だろううから今日は我慢しなくてもいいと言ったら、玄樹げんきは思わせぶりに首を振った。

「勝負しようよ。声を出さなかったら僕の勝ち、出させたらコウちゃんの勝ち」
 こんな、ベッドに組み敷かれてるのに余裕の空気で、ねだるような弄ぶような目で見上げられておかしくならない奴いる?

 小悪魔みたいでも俺にとっては大切でかわいい子。勝負と言われてもちゃんとほぐす。その方が後々よくなるだろうし。

 持田さんならもっと手際よくいかせるだろうか。田町ならもっと尽くして蕩けさせるだろうか。

 不安と勝手な嫉妬と、丁寧にほぐした分こらえきれなくなった体で攻めるだけ攻めてしまう。
 後で自己嫌悪に陥るだろうと分かっているのに止まれない。

 俺に身を委ねきっていた空気が玄樹げんきから消えていく。
 驚いて慌てて、どうしたらいいのか分からずに耐えている玄樹げんきの手を枕から離して俺の首に回す。
 俺に傷を付けたくないし、モデルの玄樹げんきも自分の腕を傷つけることはできない。だからこうすると玄樹げんきは爪を立てられない。

 耐える力を込める場所を失くして汗と呼吸が増える玄樹げんき
 俺はお前が思ってるより狡いんだよ。しかも今の追い詰められた表情にゾクリと興奮してしまって、そんな自分を少し嗤ってしまった。

 俺の息が耳に掛かったからだろうか。玄樹げんきの体に震えが広がる。
「んん、ふあっ、ああっ」
 たぶん無意識に足を俺の背中に巻き付けて、密着した状態で痙攣するから俺もいってしまった。それを受けて玄樹げんきから息つく暇もなく声が漏れ続ける。
「あああっ、ぁあ、はあ、んんっ……っ」

 好きな子がこんなに苦しそうなのを見て喜ぶ、独占欲が満たされる。そんな自分への嫌悪感と背徳感で興奮が止まらない。

 もしも玄樹げんきが持田さんを選んだら、こういう玄樹げんきを俺は一人で思い出すんだろうか、これが最後になるかもしれないんだろか。

 本日二回目のゴムを外して口できれいにする玄樹げんき。いつもしていることだからこそ、いつもと違う動きと力でどれだけ疲れているのか分かる。

 日付が変わったから玄樹げんきの頭を撫でながら口を離して俺を見るように促した。
「日付が変わったよ」
 蕩けている目と緩んだ口に少し安堵の色が出る。その頬を両手で包んだ。
「だから終わろうって言うと思ったか?
 メリークリスマスって言いたかっただけだよ」

 玄樹げんきが「メリークリスマス」と返してくれるか分からなかったから、動きかけた口を口で塞いだ。
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