22 / 41
うちの子が知らないこと
1
しおりを挟む
俺の恋人は10こ年下の17歳。両親から育児放棄されて三階建ての家に一人で暮らしていた。
両親が正式に離婚することになって、家を処分するから母親の家に引っ越すようにと言われて嫌がる玄樹を救ったのは、俺ではなく副社長だった。
実際に動いたのは秘書の持田さん。自由に動いているように見える副社長の真意を汲み取り完璧にサポートする。
フットワークの軽さだけじゃない。玄樹と同じくらいの身長で玄樹よりも一回りがっしりした体。
俺は玄樹よりも10センチ程低くて、体力はあるけど見た目は弱そう。
持田さんみたいだったら、甘えん坊な玄樹をもっと甘やかしてあげられたのに。
それか広報にいる同級生の可児くらい頭が良かったら、頭の良い玄樹に勉強を教えてあげられたのに。
せめて可児が教育係をした田町のような見た目だったら、玄樹の横に堂々と並べたのに。
田町は玄樹や持田さんよりも背が高いのに爽やかな顔。可児が世界の中心だと分かりやす過ぎる言動を除けばメチャクチャもてただろう。
そんな田町から恐れていたことを教えられた。
玄樹が社宅で暮らすための手続きが落ち着いた翌週、電車通勤の田町が駐車場で俺を待っていた。
「バタバタしてたんで言うタイミングが無かったんですけど、持田さんに気を付けてあげて下さいね」
「どういう意味だよ?」
急に副社長秘書の名前を出されて理解できないでいると、俺の耳にタマが口を近づけた。
「普段あの副社長の世話をしているからか、頭が良くて真面目で大人しくて、それでもやっぱりちょっと手の掛かる人が好きです。
カニちゃんも狙われてました。奥手だからその隙に俺が行かせてもらいましたけど」
言われてみれば可児が入ってきた時から持田さんは可児を気に掛けていた。
院卒なせいで年下の先輩がいたりするのを心配しているのかとも思ったけど、田町と二人の世界になっている可児への視線をしっかりと思い出してみる。
玄樹にも時々そんな視線を向けていた。
どうしよう。もしも持田さんに想われていると知ったら玄樹はどうするんだろう。
可児は受け身な性格だから内気な持田さんとは進展しない。あれでいて意外と田町をちゃんと好きだし。
でも玄樹は?
甘えん坊な玄樹がグイグイ行ったら持田さんはいくらでも受け止めるだろう。
経済的にも精神的にも俺よりうまく支えられるだろう。
育児放棄されていた時に気に掛けたから雛鳥のように俺に懐いてるだけで、本当は持田さんみたいな人の方がいいんじゃないか?
知られたくない。
持田さんの気持ちも、俺がこんな風に思ってることも。
両親が正式に離婚することになって、家を処分するから母親の家に引っ越すようにと言われて嫌がる玄樹を救ったのは、俺ではなく副社長だった。
実際に動いたのは秘書の持田さん。自由に動いているように見える副社長の真意を汲み取り完璧にサポートする。
フットワークの軽さだけじゃない。玄樹と同じくらいの身長で玄樹よりも一回りがっしりした体。
俺は玄樹よりも10センチ程低くて、体力はあるけど見た目は弱そう。
持田さんみたいだったら、甘えん坊な玄樹をもっと甘やかしてあげられたのに。
それか広報にいる同級生の可児くらい頭が良かったら、頭の良い玄樹に勉強を教えてあげられたのに。
せめて可児が教育係をした田町のような見た目だったら、玄樹の横に堂々と並べたのに。
田町は玄樹や持田さんよりも背が高いのに爽やかな顔。可児が世界の中心だと分かりやす過ぎる言動を除けばメチャクチャもてただろう。
そんな田町から恐れていたことを教えられた。
玄樹が社宅で暮らすための手続きが落ち着いた翌週、電車通勤の田町が駐車場で俺を待っていた。
「バタバタしてたんで言うタイミングが無かったんですけど、持田さんに気を付けてあげて下さいね」
「どういう意味だよ?」
急に副社長秘書の名前を出されて理解できないでいると、俺の耳にタマが口を近づけた。
「普段あの副社長の世話をしているからか、頭が良くて真面目で大人しくて、それでもやっぱりちょっと手の掛かる人が好きです。
カニちゃんも狙われてました。奥手だからその隙に俺が行かせてもらいましたけど」
言われてみれば可児が入ってきた時から持田さんは可児を気に掛けていた。
院卒なせいで年下の先輩がいたりするのを心配しているのかとも思ったけど、田町と二人の世界になっている可児への視線をしっかりと思い出してみる。
玄樹にも時々そんな視線を向けていた。
どうしよう。もしも持田さんに想われていると知ったら玄樹はどうするんだろう。
可児は受け身な性格だから内気な持田さんとは進展しない。あれでいて意外と田町をちゃんと好きだし。
でも玄樹は?
甘えん坊な玄樹がグイグイ行ったら持田さんはいくらでも受け止めるだろう。
経済的にも精神的にも俺よりうまく支えられるだろう。
育児放棄されていた時に気に掛けたから雛鳥のように俺に懐いてるだけで、本当は持田さんみたいな人の方がいいんじゃないか?
知られたくない。
持田さんの気持ちも、俺がこんな風に思ってることも。
0
あなたにおすすめの小説
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる