僕は傷つかないから

ritkun

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僕は知らないことばかり

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『明日、実際にやってみてもいいか?』
『しっかり休んでからじゃないとできないやり方だから』

 隣で寝てるコウちゃんを見て、昨日の言葉と優しくて熱を抑えてる目を思い出す。体の中にあの感覚が蘇る。

 寝起きなのもあって熱い。抱きついたら起きちゃうかな?抱きついたせいだからみたいに当てたらバレるかな?ちょっとだけコウちゃんで擦っちゃダメかな?

 仰向けで寝てるコウちゃんの腕に手だけ抱きついて体を近づける。単純に感触でいえばそんなに変わらなくても、当たってるのがコウちゃんの脚だと思うと自分の手や布団と比べ物にならない。

「思ってたより元気だな」
 体全体でビクッとなった僕をコウちゃんがフッと笑う。引いたり怒ったりしてないのなら調子に乗ってみようかな。

「だってもう明日になったよ?」
 コウちゃんは僕が抱きついている腕は振り払わずに、反対の手でそっと僕を仰向けにする。
「でもまだだ」
 僕の手からもそっと腕を抜いてベッドから降りてしまった。

 勝手に耳の中で再生されるコウちゃんの声。
『しっかり休んでからじゃないとできないやり方だから』

 普段も割とハードな方だと思う。それでも休んどけってどんなやり方なのかな?体位?道具?

 それとも単純に僕の体力の問題かな?
 鍛えても体力も筋肉もつかないんだよね。僕がダウンしても続けたのは一昨日だけで、いつもは僕の体力に合わせてくれる。

 多分コウちゃんは彼女がいた累計時間も長いし頻繁にしてたっぽいから性欲は強い方だと思う。それなのに僕の体力が尽きると優しく寝る支度をしてくれる。

 焦らすとか弄ぶつもりは全然ないんだけど、そういう時ってもの凄く愛を感じて好きだった。もちろん今も好き。
 だけど今は一昨日のコウちゃんが頭の中で再生されてる。

 僕の腕を首へと巻き付けるように促すコウちゃんに素直にしがみついて気付いた。コウちゃんに爪痕なんて付けたくないし、僕の腕も撮影があるから傷を付けられない。これじゃあ耐える力の拠り所が無い。
 困りながら必死に耐える僕を見てから抱きしめてフッっと笑った息が耳に掛かる。

 見下ろしていた時のゾクリとする微笑み、優しいハグ、少し面白がってるよねっていう息。
 優しさじゃない。僕が耐えにくいようにわざと首に抱きつかせたんだって分かって、怒るとか拗ねるとかじゃなく長い波が押し寄せて広がった。

 コウちゃんのゴムを外して舐めとる時、いつものコウちゃんは何もしないか僕の頭以外にしか触らない。いつでも僕が口から出せるようにするためで、そもそもしなくていいって言う。

 一昨日は僕の髪をかるく梳かすようにして顔を上げさせられたから驚いた。体力の限界だったから歯が当たるかもって怖がらせちゃったかな?
『日付が変わったよ』
 やる時は24時、やらない時は22時に寝なさいって言われる。嫌だったわけじゃないことにホッとした。

『だから終わろうって言うと思ったか?
 メリークリスマスって言いたかっただけだよ』
 体勢、手つき、視線、言葉。あの瞬間を思い出すだけでいけそう。

玄樹げんき?起きれる?」
 突然の声に驚いていけなかった。
「う、うん」
「おいで」
 扉の所で僕を見て待ってるし、僕の体も落ち着いてしまったからベッドから降りる。

 トイレに向かう僕の背中にコウちゃんが声を掛ける。
「抜くなよ」
 驚いて振り返る。普段はそういうこと話題にしないのに。

 コウちゃんは普通に続ける。
「カラになってから続けるのは大変だろ?
 ちゃんと溜めとかないと後でしんどいぞ」

 更にトイレと洗面から戻るとアーモンドミルクで作ったココアが用意されていた。どっちも性欲を高める効果があるって普通にお茶してる空気で説明するコウちゃん。

 いつもは僕から誘うか自然とそういう空気になるかだから、コウちゃんがこんなにやりたそうにするのが嬉しい。
 こんなに準備にこだわるのってどんなやり方なんだろうって期待と不安が同じくらい。
 いつ始めるのか教えてくれないのに「抜くな」って監視されてて別のこと考えて気を紛らわせることができない。もう始まってるみたいにドキドキする。

 まだしないって言うのに頭を撫でてきたり、動揺する僕をかわいいってハッキリ言ったり、やりたい気持ちを隠し切れない僕を受け止めるみたいに優しく見つめ返してくれるのに片手で軽く肩を抱き寄せるだけだったり。

 知恵熱出そうな僕を見兼ねてお昼にやっと始めてくれた。
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