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僕は大人になったから
3(R18)
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結局駅や空港での見送りじゃなくて二人の家に行くことにした。土曜日にこっちを出て空港に前泊すると言ってたから、金曜日に持田さんと二人で行って晃ちゃんに作ってもらったスフラッポレを渡して帰ってきた。
何も思い出が無いわけじゃないってことが、いつか僕にとっても彼女にとっても支えになる時が来るかもしれないから。っていうか今もう既になってるんだと思う。そうじゃなかったらもっと荒んでただろうから、頭で憶えてなくてもきっと今の僕を作ってる。
それで僕の気は済んだんだけど、カニちゃんが今週の仕事を在宅にしてくれた。空港に見送りに行きたくなったら行けるようにって。
今週の仕事は会社のSNSの下書きとカニちゃんがピックアップしたリプライや記事に目を通しておくだけ。
行くつもりは無い。
気分屋な彼女の怒鳴り声や歌声が聞こえると近所の人は言っていたのに、僕には無言で最後に一言「Addio」と呟いただけだった。いくつかある別れの挨拶から、もう会わないだろうって相手に使う言葉を選んだ彼女。もう僕たちの関係は終わったんだ。
それを聞いた晃ちゃんはベッドの中で何もしてこない。僕が落ち込んでるって思ってるのかな。そういう時は休みの前日でも僕から近づけば腕枕だけしてくれて、右手で触るのは肩だけで背中には触らない。パジャマの下を履いてない時は準備できてるって合図なのに。ちなみに晃ちゃんは基本ちゃんとパジャマを着る。
仰向けのまま腕枕をしている晃ちゃんを見上げる。
「晃ちゃん、2連休だよ?」
寝返りを打って僕の肩を手でそっと包む。
「こういう時はぐっすり眠った方がいい」
「こういう時って?
二人のおかげですごく落ち着いた気分だよ。誕生日で成人っていうよりずっと大人になった気がする」
晃ちゃんから不思議そうな空気が伝わってくる。
「二人のおかげで?」
「あの人が言ったんだ。
『彼女は女王様の仮面をかぶったお嬢様。俺は生涯彼女をそうであり続けられるように守ると誓ったんだ』って。
そういう形もありなんだろうけど、僕は反面教師だと思った。
ねえ晃ちゃん、僕が『それはダメだろう』ってことをしたら教えてね。僕にも時々は甘えてね」
左足を晃ちゃんの足の間にゆっくりと差し込む。
「きっとそうしてくれるって思える晃ちゃんとこうしていられるって幸せをかみしめてるところだよ」
これが僕の一番の大人になったなってところ。晃ちゃんは手や口よりも足の動きに敏感で、「したい」って直接言われるよりもこれくらいの方がそそられるって気付いたんだ。
……ほらね。
「大人になるのがちょっと怖かった。『もう一人でも大丈夫だね』って晃ちゃんに言われたらどうしようって。でも今は早く大人になって、大人にするみたいにしてほしいよ」
あ、結局してって言っちゃった。
スイッチが入った後で良かった。晃ちゃんが腕枕を抜いて僕を仰向けにしながら覆い被さる。ヘッドボートをがさごそしてから僕の手を握‥‥‥らない?
まあゴムを持って手を繋ぐはずないし、そもそもゴムを取る音じゃなかったんだよね。顔だけ横に向けて手を見たら、肘を曲げて横に広げていた僕の手を晃ちゃんが広げて薬指だけを少し上げた。
「俺も本当は不安だったよ。大人になった玄樹に『もう大丈夫。今までありがとう』って言われたらどうしようって」
「……え?」
1ミリも予想していなかった発想と薬指に嵌められた指輪に言葉を失う。
晃ちゃんは穏やかなまま。
「嵌めてくれる?」
もう一度ヘッドボードに手を伸ばした晃ちゃんから指輪が渡される。
晃ちゃんが膝を立てて右手をついて、僕たちの顔の間に大きく広げた左手を出した。親指と人差し指で持った指輪を震える手で嵌めた瞬間に、僕の手は優しく包まれてベッドに押さえ付けられた。鼻が触れる直前までまっすぐ近づいてきてから晃ちゃんが少し首を傾けて、僕はそのままで少し唇を開く。
唇を離さないまま僕が二人の履き口を手で下ろせる所まで下ろしたら、あとはお互いの足で少しずつ脱いでいく。その動きで体の触れ合う部分や体重の掛かり方、唇の硬さが変わって興奮する。
下を完全に脱いだらそれぞれ自分でボタンを外して、あとは晃ちゃんが脱がせてくれる。パジャマと掛け布団をベッドの下に落としたら、晃ちゃんが少しだけ獲物を見る目になった。僕の大好きな目。
その熱とは裏腹に降参とか誓いの向きで僕の胸にぴったりとくっつけた左手がまっすぐゆっくり下がっていく。指輪が僕の硬くなってる所を狙ったように轢いていった。
やり返すと見抜かれてて、ピクンっとなった隙にもう左手首を掴まれてベッドに押し付けられてた。
「ずるいっ」
晃ちゃんは何も言わずに僕の左足に跨るように移動して、左手の人差し指を僕の中に入れるとすぐに僕の左手を自由にしてくれた。
「いいよ。どうしたい?」
晃ちゃんの胸に手を当てる。さっきの晃ちゃんと全く同じなんだからどうするか分かってるはずなのに止められない。そのまま指輪の通り道を意識しながら胸を撫でたら晃ちゃんがピクっと跳ねた。中の指も小さく曲がって僕も跳ねさせられる。
「……ずるい‥‥‥」
「なんで?
気持ち良いよ。玄樹は違うの?」
確かに視線も声も熱いまま。じゃあ続けてみよう。
今度は下から上へと指輪で弾いたり、晃ちゃんが跨いでる右足を動かしてみたり。動かし方は硬くなってる所を狙うんじゃなくただモゾモゾと。それでも充分、むしろいつもより感じてるんだって中の指がピクピクと教えてくれる。
指が抜かれてちゃんと繋がったら晃ちゃんの胸にそっと左手を当てた。僕はそこから動かさない。突いてくる晃ちゃんの動きで勝手に指輪が刺激するだけ。次第に晃ちゃんが当たり方を調節するように上体を動かし始めた。
手の届く距離なのに切なそうな表情がすごく遠く感じて、晃ちゃんの背中で足首を組んで引き寄せる。
「僕より30センチ以上遠い所でそんな顔しないで」
言い終わった瞬間にゼロ距離になって唇を啄まれる。首に腕が回されていつもの体勢になったらやっと今日最初の舌の感触。熱い視線で激しく突いてくるのに舌だけは優しくて、ギャップとじわわじわと浸食される感じで脳が痺れて蕩ける。
掴まっていられなくなって元の体勢に戻ったら、肩から二の腕を通ってずり落ちていた僕の手を恋人繋ぎにされた。それから僕の膝の上で重ねて、お互いに右手の薬指で相手の指輪を撫でる。数秒したら晃ちゃんが手をほどいて僕の手首をベッドの膝辺りに押し付けて、肘の上辺りを掴み直した。
晃ちゃんの顔が10センチまで近づく。
「俺だってくっついていたいけど……いや、くっついていたいからだな。ちょっとゴメン。声出さないように気を付けて」
優しい言葉なのに何かヤバいことしようとしてるよね。あと両手塞がれてるのに声出すなってどうやって防げばいいの。こうやって追い詰めるのも作戦?
ベッドに押さえ付けられたままの腕をゆっくり強く足側へと引きずられて体がエビ反りになっていく。初めての体勢に意識が行きかけた瞬間。
「~~~~っっ!!!」
前立腺が撫で上げられたんだって頭の片隅で一瞬だけ考えられた。
目を開けるとさっきの言葉通りくっついていた。体が拭かれていてベッドの上には大判のバスタオル、横向きの僕を晃ちゃんが後ろから包んでる。掛け布団は僕の肩までで、二人ともパジャマは着てないから晃ちゃんの枕にしてない方の腕を胸に抱きしめると程よく気持ち良い。。
「起きたか。喉乾いてないか?」
乾いてるけどそれより正面からくっつきたくて寝返りを打って、晃ちゃんの首に目が釘付けになる。
「え⁉ なんで!?」
そこには指輪が二つ通ったペンダント。
慌てて自分の指と晃ちゃんの指を確かめる僕に余裕で手を動かされるまま答える。
「学校や仕事に嵌めていきかねないからな、基本俺が預かっとく」
「そんなことしないから!」
僕が手を伸ばすよりも先に指輪を握りしめた。
「でも持って行こうくらいは思ってただろ?」
「……それは……」
俯いた頭がそっと撫でられて顔を上げると優しい表情。
「そう思ってくれて嬉しいよ。信用してないわけじゃないんだ。手元にあるのに我慢するよりこの方が落ち着くと思って」
僕は大人になったのに、とっくに大人な晃ちゃんには敵わないんだ。
何も思い出が無いわけじゃないってことが、いつか僕にとっても彼女にとっても支えになる時が来るかもしれないから。っていうか今もう既になってるんだと思う。そうじゃなかったらもっと荒んでただろうから、頭で憶えてなくてもきっと今の僕を作ってる。
それで僕の気は済んだんだけど、カニちゃんが今週の仕事を在宅にしてくれた。空港に見送りに行きたくなったら行けるようにって。
今週の仕事は会社のSNSの下書きとカニちゃんがピックアップしたリプライや記事に目を通しておくだけ。
行くつもりは無い。
気分屋な彼女の怒鳴り声や歌声が聞こえると近所の人は言っていたのに、僕には無言で最後に一言「Addio」と呟いただけだった。いくつかある別れの挨拶から、もう会わないだろうって相手に使う言葉を選んだ彼女。もう僕たちの関係は終わったんだ。
それを聞いた晃ちゃんはベッドの中で何もしてこない。僕が落ち込んでるって思ってるのかな。そういう時は休みの前日でも僕から近づけば腕枕だけしてくれて、右手で触るのは肩だけで背中には触らない。パジャマの下を履いてない時は準備できてるって合図なのに。ちなみに晃ちゃんは基本ちゃんとパジャマを着る。
仰向けのまま腕枕をしている晃ちゃんを見上げる。
「晃ちゃん、2連休だよ?」
寝返りを打って僕の肩を手でそっと包む。
「こういう時はぐっすり眠った方がいい」
「こういう時って?
二人のおかげですごく落ち着いた気分だよ。誕生日で成人っていうよりずっと大人になった気がする」
晃ちゃんから不思議そうな空気が伝わってくる。
「二人のおかげで?」
「あの人が言ったんだ。
『彼女は女王様の仮面をかぶったお嬢様。俺は生涯彼女をそうであり続けられるように守ると誓ったんだ』って。
そういう形もありなんだろうけど、僕は反面教師だと思った。
ねえ晃ちゃん、僕が『それはダメだろう』ってことをしたら教えてね。僕にも時々は甘えてね」
左足を晃ちゃんの足の間にゆっくりと差し込む。
「きっとそうしてくれるって思える晃ちゃんとこうしていられるって幸せをかみしめてるところだよ」
これが僕の一番の大人になったなってところ。晃ちゃんは手や口よりも足の動きに敏感で、「したい」って直接言われるよりもこれくらいの方がそそられるって気付いたんだ。
……ほらね。
「大人になるのがちょっと怖かった。『もう一人でも大丈夫だね』って晃ちゃんに言われたらどうしようって。でも今は早く大人になって、大人にするみたいにしてほしいよ」
あ、結局してって言っちゃった。
スイッチが入った後で良かった。晃ちゃんが腕枕を抜いて僕を仰向けにしながら覆い被さる。ヘッドボートをがさごそしてから僕の手を握‥‥‥らない?
まあゴムを持って手を繋ぐはずないし、そもそもゴムを取る音じゃなかったんだよね。顔だけ横に向けて手を見たら、肘を曲げて横に広げていた僕の手を晃ちゃんが広げて薬指だけを少し上げた。
「俺も本当は不安だったよ。大人になった玄樹に『もう大丈夫。今までありがとう』って言われたらどうしようって」
「……え?」
1ミリも予想していなかった発想と薬指に嵌められた指輪に言葉を失う。
晃ちゃんは穏やかなまま。
「嵌めてくれる?」
もう一度ヘッドボードに手を伸ばした晃ちゃんから指輪が渡される。
晃ちゃんが膝を立てて右手をついて、僕たちの顔の間に大きく広げた左手を出した。親指と人差し指で持った指輪を震える手で嵌めた瞬間に、僕の手は優しく包まれてベッドに押さえ付けられた。鼻が触れる直前までまっすぐ近づいてきてから晃ちゃんが少し首を傾けて、僕はそのままで少し唇を開く。
唇を離さないまま僕が二人の履き口を手で下ろせる所まで下ろしたら、あとはお互いの足で少しずつ脱いでいく。その動きで体の触れ合う部分や体重の掛かり方、唇の硬さが変わって興奮する。
下を完全に脱いだらそれぞれ自分でボタンを外して、あとは晃ちゃんが脱がせてくれる。パジャマと掛け布団をベッドの下に落としたら、晃ちゃんが少しだけ獲物を見る目になった。僕の大好きな目。
その熱とは裏腹に降参とか誓いの向きで僕の胸にぴったりとくっつけた左手がまっすぐゆっくり下がっていく。指輪が僕の硬くなってる所を狙ったように轢いていった。
やり返すと見抜かれてて、ピクンっとなった隙にもう左手首を掴まれてベッドに押し付けられてた。
「ずるいっ」
晃ちゃんは何も言わずに僕の左足に跨るように移動して、左手の人差し指を僕の中に入れるとすぐに僕の左手を自由にしてくれた。
「いいよ。どうしたい?」
晃ちゃんの胸に手を当てる。さっきの晃ちゃんと全く同じなんだからどうするか分かってるはずなのに止められない。そのまま指輪の通り道を意識しながら胸を撫でたら晃ちゃんがピクっと跳ねた。中の指も小さく曲がって僕も跳ねさせられる。
「……ずるい‥‥‥」
「なんで?
気持ち良いよ。玄樹は違うの?」
確かに視線も声も熱いまま。じゃあ続けてみよう。
今度は下から上へと指輪で弾いたり、晃ちゃんが跨いでる右足を動かしてみたり。動かし方は硬くなってる所を狙うんじゃなくただモゾモゾと。それでも充分、むしろいつもより感じてるんだって中の指がピクピクと教えてくれる。
指が抜かれてちゃんと繋がったら晃ちゃんの胸にそっと左手を当てた。僕はそこから動かさない。突いてくる晃ちゃんの動きで勝手に指輪が刺激するだけ。次第に晃ちゃんが当たり方を調節するように上体を動かし始めた。
手の届く距離なのに切なそうな表情がすごく遠く感じて、晃ちゃんの背中で足首を組んで引き寄せる。
「僕より30センチ以上遠い所でそんな顔しないで」
言い終わった瞬間にゼロ距離になって唇を啄まれる。首に腕が回されていつもの体勢になったらやっと今日最初の舌の感触。熱い視線で激しく突いてくるのに舌だけは優しくて、ギャップとじわわじわと浸食される感じで脳が痺れて蕩ける。
掴まっていられなくなって元の体勢に戻ったら、肩から二の腕を通ってずり落ちていた僕の手を恋人繋ぎにされた。それから僕の膝の上で重ねて、お互いに右手の薬指で相手の指輪を撫でる。数秒したら晃ちゃんが手をほどいて僕の手首をベッドの膝辺りに押し付けて、肘の上辺りを掴み直した。
晃ちゃんの顔が10センチまで近づく。
「俺だってくっついていたいけど……いや、くっついていたいからだな。ちょっとゴメン。声出さないように気を付けて」
優しい言葉なのに何かヤバいことしようとしてるよね。あと両手塞がれてるのに声出すなってどうやって防げばいいの。こうやって追い詰めるのも作戦?
ベッドに押さえ付けられたままの腕をゆっくり強く足側へと引きずられて体がエビ反りになっていく。初めての体勢に意識が行きかけた瞬間。
「~~~~っっ!!!」
前立腺が撫で上げられたんだって頭の片隅で一瞬だけ考えられた。
目を開けるとさっきの言葉通りくっついていた。体が拭かれていてベッドの上には大判のバスタオル、横向きの僕を晃ちゃんが後ろから包んでる。掛け布団は僕の肩までで、二人ともパジャマは着てないから晃ちゃんの枕にしてない方の腕を胸に抱きしめると程よく気持ち良い。。
「起きたか。喉乾いてないか?」
乾いてるけどそれより正面からくっつきたくて寝返りを打って、晃ちゃんの首に目が釘付けになる。
「え⁉ なんで!?」
そこには指輪が二つ通ったペンダント。
慌てて自分の指と晃ちゃんの指を確かめる僕に余裕で手を動かされるまま答える。
「学校や仕事に嵌めていきかねないからな、基本俺が預かっとく」
「そんなことしないから!」
僕が手を伸ばすよりも先に指輪を握りしめた。
「でも持って行こうくらいは思ってただろ?」
「……それは……」
俯いた頭がそっと撫でられて顔を上げると優しい表情。
「そう思ってくれて嬉しいよ。信用してないわけじゃないんだ。手元にあるのに我慢するよりこの方が落ち着くと思って」
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