落ちこぼれ魔術師は幼馴染の冷徹宰相と偽装結婚させられる

八朔バニラ

文字の大きさ
7 / 22

お見合い

「クレール様はご自分の将来について何かお考えがあるのでしょうか?」

 ジミーはクレールに真剣な目で尋ねてきた。

「いや……あまり考えてない」

 クレールは自分の人生についてあまり深く考えてこなかった。考えてもなるようにしかならないと思っているからだ。

「考えていないなら、ルシアン様との結婚の可能性を考えてみてはいかがでしょう? ルシアン様は一応イケメンですし、一応この国の宰相ですし、一応お金持ちですよ。性格はかなり難アリですが……あと、魔力も持たないですが……あと、家庭的では全くありません……あと……」

 ジミーがルシアン様の悪口をボロクソに言い始めた。止まる気配がない。

「ジミー、もしかしてルシアン様のこと苦手だったりする?」

「正直長年仕えていて、欠点の方が多いような方ですね……」

「もしかして私をルシアン様のお世話係にしようとしている?」

「滅相もございません!」

 ジミーは否定したが、目が泳いでいる。確実にクレールをルシアン様のお世話係にしようとしている目だ。

「クレール様なら安心ですし……」

「ルシアン様のお相手なら、私じゃなくても他にいくらでもいるじゃない! お見合い相手の王女様とか」

「私もそう思っていたのですが……」

「何かあったの?」

「実は……ルシアン様の毒…親御様はルシアン様が成人になられた途端、お見合い写真を大量に送りつけてきたんです」

「ほう……」

 ルシアン様の実家、デコス家はルシアン様のことに全く関心がなかったはずなのに、どういうことなのだろうか。

「宰相になる前のルシアン様は顔だけは良かったので、御高齢のお金持ちの女性や身分の高い女性ばかりがお相手でした」

「それって……」

「ルシアン様がデコス家にとって役立たずだから、御高齢の結婚相手のペットにでもする予定だったのでしょう」

「ジミー、その言い方……」

 ルシアン様に特別な感情はないが、少し同情してしまう。宰相にならなければ、悲しい一生を送らなければならなかったかもしれない。

「まあ……ルシアン様のあのヤバい性格では従順なペットは務まらないかもしれませんね……正直、私が手塩にかけてお育てしたルシアン様がペットになるのもあまり気が進みませんし……」

「私も幼馴染として複雑だわ……」

 自分の幼馴染が誰かのペットになるのはさすがにちょっと嫌である。
 ……鎖につながれているクレールが言えることではないが。

「ルシアン様はお見合いを断り続けました。しかし、予期せぬ事態が起こったのです」

「予期せぬ事態?」

「デコス家からお見合い相手が何人も送られてくるようになったのです。いわゆる押しかけ女房ですね」

「マジか……」

「あの時ばかりはルシアン様も泣いていましたね」

「それでどうしたの?」

「ルシアン様が泣きながら追い返していました」

「ですよね……」

「ですから、ルシアン様にはクレール様しかいないのです」

「今の話でその結論にはならないでしょう」

「クレール様、幼い頃にルシアン様と約束をしましたよね? ルシアン様はずっと待っているんですよ。そろそろ責任をとってくださいませ」

「ルシアン様も言っていたけど、約束ってなんのこと?」

「私には分かりませんが、ルシアン様が『クレールと約束したんだ』って昔から口癖のように言っていました」

 約束って一体何なんだろう?本当にルシアン様と約束などしたのだろうか。

「クレール様、責任をとってくださいませ。ルシアン様が結婚出来ないのはクレール様の約束のせいですよ」

「その約束が全く思い出せないのよ」

「思い出さなくても良いので、ルシアン様と結婚してください」

「ジミー、ルシアン様の性格のヤバさを知っていて、よくオススメが出来るわね……」

「ルシアン様は時々優しいですよ……多分」

「ルシアン様は昔はもっと素直で優しかったよね」

「そうですね」

「どうしてあんな性格になってしまったんでしょう」

「すみません、私が至らぬばかりに」

「ジミーのせいじゃないわよ」

 クレールとジミーはふたりでため息をついた。

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

政略妻は氷雪の騎士団長の愛に気づかない

宮永レン
恋愛
これって白い結婚ですよね――? 政略結婚で結ばれたリリィと王国最強の騎士団長アシュレイ。 完璧だけど寡黙でそっけない態度の夫との生活に、リリィは愛情とは無縁だと思っていた。 そんなある日、「雪花祭」を見に行こうとアシュレイに誘われて……? ※他サイトにも掲載しております。

上手に騙してくださらなかった伯爵様へ

しきど
恋愛
 アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。  文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。  彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。  貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。  メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした

こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】 伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。 しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。 そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。 運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた―― けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった―― ※「小説家になろう」にも投稿しています。

仮面王の花嫁

松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。 しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。