料理がしたいので、騎士団の任命を受けます!

ハルノ

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「そうだわ、せっかくだからシズクに良い本を貸してあげましょうか」

 クッキーの焼き上がりを待つ間、何か話をするのかと思っていた。
 ハナコさんは自室の本棚から、数冊の本を持ってきた。皮の表紙で、重みのある本を三冊持っていた。

「今、貴族の女性の間で流行している恋愛小説なんですって」
「恋愛小説……?」
「そうなの。私も最近知ったばかりで、読んでいる途中なのよ。せっかくだから一緒に読んでみない?」

 ハナコさんは二冊目に入っているそうで、私に一巻を貸してくれた。
 主人公の女性は、同い年の幼馴染の男性がいる。小さい頃から一緒に遊んだり、気を許す仲だった。いつか彼と結婚するのだろうと、思っていた。
 十六歳になる年、彼女は幼馴染と共に貴族の学校へと入学した。幼馴染は騎士になるために、主人公は裁縫や教養を主に学んでいた。それぞれ、互いとは違う友達もできたが、心が通じていたのは昔と変わることはなかった。
 しかし女性の父は、政略結婚のために別の貴族の息子との婚約をするよう命じた。
 父が主催するパーティで発表された、相手とは――。

「……続きが読みたいです」

 一気に読んだ私は、本を閉じてハナコさんを見た。
 ハナコさんは、ニコッと笑い、二巻を差し出した。

「ところで、クッキーが焼きあがったようですよ」
「わっ、すみません。すっかり忘れていました」
「大丈夫です、私もですから」

 クッキーは無事に焼けていて、甘い香りが漂っている。
 クマのクッキーもドライフルーツを抱きしめている。

「ちょうどよく冷めているようです。味見をしてみますか?」
「ええ、もちろん」

 ハナコさんがにっこり笑う。私も同じだ。
 お皿に数枚取り出して、その間にハナコさんはお茶の用意をさせた。使用人が数名、部屋に入ってきて、テーブルにお茶を用意する。
 ハナコさんは本を棚に戻して、椅子に座った。
 私も続いて座る。

「良い匂いね」
「はい。よくできたと思います」

 お茶を淹れてもらうと、使用人のみなさんは部屋を出て行った。

「さて、食べましょうか」

 ハナコさんが言い、クマのクッキーをひとつつまんだ。
 私も続くように、クッキーを持つ。
 サクッとした食感のあと、生地がほろりと崩れていく。私にはちょうど良い食感だ。

「おいしいわね、ふふっ」

 ハナコさんも笑みがこぼれている。

「本当に。オーブンが想像以上に優秀だと思います。これだったら、ケーキや他の焼き菓子も挑戦したくなります」
「そうね!私ももっと何か作ってみたいわ」
「でしたら、また考えてみましょうか」
「ぜひ!」

 それからクッキーを食べて、お茶を飲んで、ふーっと一息ついた。
 ハナコさんはそわそわとした様子で、ああ、と私も感づいた。

「……あの、良かったら本の話をしませんか?」
「わ、私もその話をしたかったの。ねえ、どうだった?」
「すっごく読みやすくて、次にどうなるか気になります」
「でしょう?私も二巻をすぐに読み終わったの。じゃあ続き、読んでみる?」

 今度は私がいう番だった。

「ぜひ!」
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