3 / 11
3
しおりを挟む
兄とユーティリスが親しいのを好ましく思わない人たちがいるらしい、とは知っていた。
アンジェリーナの家は領地経営こそそこそこ上手くいっていたが、他に商売をしているわけでも投資に成功している訳でもない。爵位だって子爵だし、家の歴史だって古い訳でもない。政治的に発言力がある訳でもない。言い換えれば、薬にも毒にもならない家だから、祖父も父も誰かに嫌われることもなく、目立たぬように平穏に社交界で生きてきた。
だが兄は学舎肌の変わり者で、社交界でも偏屈な人物だと遠巻きにされることが多かった。それでもこれまでは現実的に困ったこともなかったし、両親もアンジェリーナもそれまで通りひっそりと静かに生活していた。
流れが変わったのは3年前、アンジェリーナが17歳になって社交界にデビューした直後だ。
気象が例年とは違うと分析した兄が寒波による作物の冷害を予測して議会に進言、それが現実になったからだった。いや、その後に経済損失を計算してそれを国王陛下の前で報告した後だったか。それまで目立った功績を上げたこともない、年も若い人間が急に登用されたことで大いなやっかみを生んだ。
例えば父が議会の重鎮だったら、もしくは経済的にとても裕福なら違ったかもしれない。いやせめてもう少し両親が社交的であれば違ったのか。
ーーー勿論、兄の性格と言動が一番大きな理由だとは思うが。
年上であれ権力者であれ、間違ったことには「違っている」と大きな声で言い、穏やかな物言いが壊滅的に出来ない。協調性に難があり、他人と親しい関係を作ることに重要性を持たない。
言っていることが正しくともそれではなかなか理解してもらえないのではないかと妹ながらに心配していたが、アンジェリーナとて人付き合いが上手いタイプではない。気難しい兄をフォロー出来ないことを悩んでいた。
それが1年ほど前から急にユーティリスが友人として兄を訪ねてくるようになった。
激論を戦わせた結果仲良くなったのだと、珍しく楽しそうに語る兄を見て嬉しくなったのを良く覚えている。変わり者の兄と友人になってくれたユーティリスにもとても感謝した。
ただ、話はそれだけでは終わらなかった。兄自身が嫌いなのか兄がどんどん陛下に登用されるのが面白くないのか、アンジェリーナが夜会で嫌みを言われることが増えたのだ。
大まかに分けてそれらの嫌みは2種類あるのだが、男性からは兄に対する悪口、女性からはアンジェリーナ自身の悪口を言われていて、それがまたアンジェリーナ自身の自己肯定感を低くし、自信をなくす理由となった。
アンジェリーナの家は領地経営こそそこそこ上手くいっていたが、他に商売をしているわけでも投資に成功している訳でもない。爵位だって子爵だし、家の歴史だって古い訳でもない。政治的に発言力がある訳でもない。言い換えれば、薬にも毒にもならない家だから、祖父も父も誰かに嫌われることもなく、目立たぬように平穏に社交界で生きてきた。
だが兄は学舎肌の変わり者で、社交界でも偏屈な人物だと遠巻きにされることが多かった。それでもこれまでは現実的に困ったこともなかったし、両親もアンジェリーナもそれまで通りひっそりと静かに生活していた。
流れが変わったのは3年前、アンジェリーナが17歳になって社交界にデビューした直後だ。
気象が例年とは違うと分析した兄が寒波による作物の冷害を予測して議会に進言、それが現実になったからだった。いや、その後に経済損失を計算してそれを国王陛下の前で報告した後だったか。それまで目立った功績を上げたこともない、年も若い人間が急に登用されたことで大いなやっかみを生んだ。
例えば父が議会の重鎮だったら、もしくは経済的にとても裕福なら違ったかもしれない。いやせめてもう少し両親が社交的であれば違ったのか。
ーーー勿論、兄の性格と言動が一番大きな理由だとは思うが。
年上であれ権力者であれ、間違ったことには「違っている」と大きな声で言い、穏やかな物言いが壊滅的に出来ない。協調性に難があり、他人と親しい関係を作ることに重要性を持たない。
言っていることが正しくともそれではなかなか理解してもらえないのではないかと妹ながらに心配していたが、アンジェリーナとて人付き合いが上手いタイプではない。気難しい兄をフォロー出来ないことを悩んでいた。
それが1年ほど前から急にユーティリスが友人として兄を訪ねてくるようになった。
激論を戦わせた結果仲良くなったのだと、珍しく楽しそうに語る兄を見て嬉しくなったのを良く覚えている。変わり者の兄と友人になってくれたユーティリスにもとても感謝した。
ただ、話はそれだけでは終わらなかった。兄自身が嫌いなのか兄がどんどん陛下に登用されるのが面白くないのか、アンジェリーナが夜会で嫌みを言われることが増えたのだ。
大まかに分けてそれらの嫌みは2種類あるのだが、男性からは兄に対する悪口、女性からはアンジェリーナ自身の悪口を言われていて、それがまたアンジェリーナ自身の自己肯定感を低くし、自信をなくす理由となった。
120
あなたにおすすめの小説
下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~
星森
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。
王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。
そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。
これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。
⚠️本作はAIとの共同製作です。
ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。
十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。
er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——
竜帝と番ではない妃
ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。
別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。
そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・
ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!
【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました!
※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)
狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。
突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。
だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。
そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。
共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?
自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました
有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。
魔力が弱い私には、価値がないという現実。
泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。
そこで目覚めた彼は、私を見て言った。
「やっと見つけた。私の番よ」
彼の前でだけ、私の魔力は輝く。
奪われた尊厳、歪められた運命。
すべてを取り戻した先にあるのは……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる