生徒会書記長さん

梅鉢

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第一章

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体育祭当日、見事な秋晴れ。
「日ごろの行いがいいせいだ」と背伸びをしながら言う南に全員が呆れたように小さく息を吐いた。

この日の俺たちは“なんでも屋”なため、全員が本部席に待機している。基本、競技には出る。しかしそれ以外は警備をしている風紀に呼ばれれば行くし、準備をしている陣営が足りなければ実行委員のところに行く。会長の松浦と副会長の南の二人以外はとにかく呼ばれたら行かなければならない。

去年は揉め事が結構あった。勝負事に殺気だった奴等がゴロゴロいたせいだ。
前書記長についていっただけで俺が何かを解決などしてはいないが、あちこち走り回った気がする。

生徒達は炎天下の中グラウンド周辺にある桜の木の下に椅子を置き、木陰で涼みながら参加している。俺たちはスポットクーラー数台と扇風機を置き、テント内が涼しくなるようにしていた。
だからテント下でのんびりとお茶を飲みながらだらだらしている俺は、必要以上に問題を起こさないでくれと懇願するばかりだ。
そもそもこんな暑い日に競技にだって出たくないのに、警備や準備なんてしたくない。こんなことを思うのは贅沢で、役員の風上にも置けないかもしれないが本音だった。

基本は各クラス対抗戦で、1クラスが1つのチームである。しかし学年対抗の団体戦もある。その場合の点数は勝った学年の全クラスが同じ点数をもらえる仕組みで、団体戦だからかなりの高得点をもらえた。
だからいつも団体戦は血の気の多いものが集まり、そして問題が起こっていた。
こんな男ばかりの閉鎖空間でエネルギーを発散する場なんてないに等しい。南みたいな特殊な人間は常に発散できているが、全うな奴らはこんなときにしか発散できない。
いつの時代も問題視されていたようだが、生徒達からは絶大な人気を誇っていた。

俺は徒競走とリレーのみと、走るだけのシンプルなものにしか出ない。団体戦なんて恐ろしいものには絶対に出ないと決めている。周りも「佐野は出るな」と薦めてはこなかったからラッキーだった。

この団体戦は物取り合戦で、2学年対抗で行って各学年が総当りする。向かいあうように1列に並び、その真ん中にタイヤ30個を1列に置いてそのタイヤを自分の陣地に多く持って帰った方が勝ちの単純なものであった。

この団体戦が始まるとケガ人が続出する。両手でタイヤを掴むから、大抵は蹴りを食らわせて相手の手を離させるといったものが多い。だから一番立場が弱い1年にケガ人が一番多く、2年が二番目に多い。3年はほとんど無傷だった。
たちの悪いものだとスパイクなどを用意していたから流血も避けられないでいた。
競技の間の怒号もこの競技の醍醐味かもしれない。

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