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第五章
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4限目の授業も終わり、渡部と食堂に向かう。
廊下を歩く生徒はまばらだし、食堂へ入ってからも空席が目立つ。
3学期の始業式後から3年生の姿がほとんど見えなくなったのだ。
ほとんどが部屋で受験勉強に勤しんでいることだろう。3年生は授業らしい授業もほとんどない上に授業は受験勉強にあてるため自習ばかりだ。それなら部屋で勉強、という生徒が多いのも分かる。
肉増し増しカツカレーを頼んでぐるりと辺りを見回す。
まただ。
いや、なんで辺りを見回すんだ、俺は。
余計なものを見つけてしまってすぐに手に持っていたスマホへと視線を戻す。今まで食堂で吉岡の姿を見たことがなかったのにココ最近になって何故か食堂で飯を食う吉岡を見かける。夜は週の半分は俺と時間がかぶるからほとんど来ているのかもしれない。
「おいおい、目の前ででけーため息つくなや。俺もげっそりするわ」
「あ、悪い。無意識だわ」
眉間に皺の寄った渡部に鋭く睨まれる。
吉岡は俺に構ってこないし、生徒会室でも本当に必要最低限しか話しかけてこないし、今まで俺に聞いていた雑用のことだって北村に聞く始末だ。つまり避けられているってことだ。なんて極端なヤツなんだとちょっと腹がたったがあんなことを行った手前俺は静観するしかない。
それなのにこうやって俺の視界に入るような場所にいるし、嫌でも考えてしまう。
しかも、あの茶髪の野郎と常に一緒で。
はぁー。
「おい」
「すまん」
今のは意識あったわ。今度は呆れ顔の渡部に適当に謝る。
メシが運ばれてくる間暇なのでぼーっと渡部の面でも眺めていようと思ったら、その渡部が何かを見つけたのか「おー?」と声を出した。
「白崎と吉岡は仲がいいのかー。この間も一緒にいるの見かけたんだよなー」
「へー」
「あ、白崎ってバスケ部の1年な」
「へー」
あれだろ。茶色い髪の男だろ。白崎という名前なのか。興味もないけど聞いてしまったら忘れられそうになくて困る。あいつも俺のもやもやの原因の1人であるのだから。
「白崎は身長足りないけど攻撃力あるんだよな、外からガンガン点取ってくるし。その代わりなのかディフェンスはザルだけど」
いつもだったら「ふーん」で流せる会話も今は違う。話題があいつだから。
「バスケ部の1年なんてよくわかんねーしどうでもいいかな」とこれ以上話をして欲しくなくて素っ気無い口調で返す。
そのとき丁度頼んでいたメシが運ばれてきて会話は中止となった。目の前にあるものに集中してしまえばさっきのどうでもいい会話など記憶にも残らないはずだからこれ以上話をすることもない。
特にカレーのような匂いのきついやつはそれだけで意識をごっそりと持っていかれ、食欲をそそられる。
はずなのに。
「はあー……」
「……おい。これからイタダキマスなんですけど」
「すまーん」
「ため息ばっかりついてっと癖になるぞ」
「それは……困るなー」
なぜかため息は出てきてしまった。
カツカレーに罪はないのでおいしく食させてもらおう。
廊下を歩く生徒はまばらだし、食堂へ入ってからも空席が目立つ。
3学期の始業式後から3年生の姿がほとんど見えなくなったのだ。
ほとんどが部屋で受験勉強に勤しんでいることだろう。3年生は授業らしい授業もほとんどない上に授業は受験勉強にあてるため自習ばかりだ。それなら部屋で勉強、という生徒が多いのも分かる。
肉増し増しカツカレーを頼んでぐるりと辺りを見回す。
まただ。
いや、なんで辺りを見回すんだ、俺は。
余計なものを見つけてしまってすぐに手に持っていたスマホへと視線を戻す。今まで食堂で吉岡の姿を見たことがなかったのにココ最近になって何故か食堂で飯を食う吉岡を見かける。夜は週の半分は俺と時間がかぶるからほとんど来ているのかもしれない。
「おいおい、目の前ででけーため息つくなや。俺もげっそりするわ」
「あ、悪い。無意識だわ」
眉間に皺の寄った渡部に鋭く睨まれる。
吉岡は俺に構ってこないし、生徒会室でも本当に必要最低限しか話しかけてこないし、今まで俺に聞いていた雑用のことだって北村に聞く始末だ。つまり避けられているってことだ。なんて極端なヤツなんだとちょっと腹がたったがあんなことを行った手前俺は静観するしかない。
それなのにこうやって俺の視界に入るような場所にいるし、嫌でも考えてしまう。
しかも、あの茶髪の野郎と常に一緒で。
はぁー。
「おい」
「すまん」
今のは意識あったわ。今度は呆れ顔の渡部に適当に謝る。
メシが運ばれてくる間暇なのでぼーっと渡部の面でも眺めていようと思ったら、その渡部が何かを見つけたのか「おー?」と声を出した。
「白崎と吉岡は仲がいいのかー。この間も一緒にいるの見かけたんだよなー」
「へー」
「あ、白崎ってバスケ部の1年な」
「へー」
あれだろ。茶色い髪の男だろ。白崎という名前なのか。興味もないけど聞いてしまったら忘れられそうになくて困る。あいつも俺のもやもやの原因の1人であるのだから。
「白崎は身長足りないけど攻撃力あるんだよな、外からガンガン点取ってくるし。その代わりなのかディフェンスはザルだけど」
いつもだったら「ふーん」で流せる会話も今は違う。話題があいつだから。
「バスケ部の1年なんてよくわかんねーしどうでもいいかな」とこれ以上話をして欲しくなくて素っ気無い口調で返す。
そのとき丁度頼んでいたメシが運ばれてきて会話は中止となった。目の前にあるものに集中してしまえばさっきのどうでもいい会話など記憶にも残らないはずだからこれ以上話をすることもない。
特にカレーのような匂いのきついやつはそれだけで意識をごっそりと持っていかれ、食欲をそそられる。
はずなのに。
「はあー……」
「……おい。これからイタダキマスなんですけど」
「すまーん」
「ため息ばっかりついてっと癖になるぞ」
「それは……困るなー」
なぜかため息は出てきてしまった。
カツカレーに罪はないのでおいしく食させてもらおう。
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