Blissful Kiss

雪原歌乃

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Chapter.2 もっと知りたい

Act.1-01

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 その日の授業が終わり、私は七緒に誘われて駅ビル内のコーヒーショップへ行った。現在時刻十七時。今日は十九時からバイトが入っているから、移動時間も含めて一時間以上の猶予はある。
 コーヒーショップに入ってから、私はカフェラテを、七緒はアイスコーヒーをそれぞれオーダーした。
 それにしても、今日は零度に限りなく近い真冬日だというのにどうしてアイスコーヒーにしたのか。席を取ってからそれを七緒に突っ込むと、「この中は暑いじゃない」とあっさり返された。
「私はむしろ、暑い中で熱いものにするのが理解出来ないけど。まあ、人それぞれだけど」
 七緒の言わんとしていることは分かるようで分からない。でも、確かに人それぞれだから、そこをあえて突っ込むのも間違っていた。ここは私が反省するべきかもしれない。
「佳奈子は今日デート?」
 私から話題を変えた。
 七緒はストローでコーヒーを何口か吸い、「そうそう」と続ける。
「この間の合コンで意気投合した男子がいてね、早速メアド交換してたみたい。上手くいってくれればいいけど、佳奈子も気まぐれだからねえ……」
「うん」
 私も佳奈子の性格を分かっているから、大きく頷く。
 あの合コンから一週間が経過している。私にとっては史上最悪な合コンで――合コン自体が好きじゃないけれど――、洗い浚い忘れてしまいたい過去だ。
 その中で、佳奈子は出逢いを見つけた。一番乗り気だったし、結果としては良かったかもしれない。
 一方で、七緒は七緒でひとりの男子から言い寄られたらしいけれど、七緒も私ほどではないにしろ、積極的に出逢いを求めているわけではなかったから適当にあしらって終わりにしたようだ。
 そして合コンの翌日、佳奈子に例の男子のことを訊かれた。もちろん、しつこかったから蹴りを一発お見舞いしてやったことを報告。
 進展はなかったのか、とも散々訊かれたけれど、進展どころか、高遠さんに最終的に追い払ってもらったのだから何も起こるはずがない。
 佳奈子は幻滅していた。でも、七緒はある程度の予想はしていたようで、まあいいんじゃない、というあっさりとした反応だった。
 ただ、高遠さんのことだけは話していない。高遠さんとはあの夜、一緒にお茶しただけで何もしていない。しかも、好きだよ、とは言われたけれど、その後の進展も特にない。
 高遠さんからの連絡もない。忙しいのか、それとも私に気を遣ってくれているのか。
「合コンはこりごり?」
 不意に訊かれ、私はカップに口を付けたままの状態で七緒を凝視する。
「ああごめん。いきなりビックリするよね?」
 引かれたと思われたのか、七緒は微苦笑を浮かべながら小さく肩を竦めた。
「私もさ、絢の気持ちは分からなくはないのよ。彼氏とかってめんどくさいし。でも、せっかく好意を寄せられても壁を作ってしまったらもったいないよな、って。確かに、誰にでも調子のいい女の方がよっぽど気分悪いけど」
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